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119.勇者が召喚されたらしいですよ?

 年を超え、そろそろ我々人間も冬眠に入ろうかと人が言い出す時期に、似つかわしくないホットなニュースが届けられた。

 それは今巷を賑わす一大ニュース……らしい。らしいと言うのも、ここは世界的に見れば辺境に当たるため、巷からは程遠いからだ。


「ゆうしゃしょうかん?」


 訝しげに、疑わしさ120パーセントで、胡散臭い男へと問い返した。


「どうやら帝国が勇者召喚とやらを行ったようだ」

「……まじかよ」


 まじで、召喚しちゃったのか? 勇者を? えぇっ⁉︎


 俺は冬に似つかわしくない汗がツーとこめかみから流れ落ちたのを感じた。


 最近、魔王に眼をつけられて、俺、この先こんな奴らとやり合うのかと何となく考えていたのだが……勇者呼んじゃったの?

 えっ? ってことは、俺助かった感じ? もう後は勝手にやって下さい的な?


「私には勇者召喚とやらの詳細がよく分からないが、どうやら主は知っているようだな」

「いや、推測でしかないけどな……えっ? まじで? まじで、やっちゃったの?」

「私も小耳に挟んだだけであるからな。興味があるならば、本気で調査をするが?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど……」


 俺は内心かなり取り乱していた。というのも、先日、ふと『勇者召喚とかされないかなぁ』と月にお願いしてしまったからだ。


 どうしよう……

 その勇者って鬼チート持ちなんだろうな……集団召喚パターンかな? それとも一人だけ?

 いや、どっちにしても魔王と戦う仲間が増えるのはいいんだけど……すごく胸が痛い。


 俺が真の主犯みたいじゃないか。


「話は変わるが、先日頼まれた件、一先ずアフロト大陸から島国に渡った事にして置いた」

「お、おう」


 俺は先日、セシルにある頼み事をしていた。それは、偽の情報を流して欲しいという事。

 何故そんな事をしたのかは言わずもがな、魔王対策だ。世界を股に掛ける探知能力でもない限りは、偽の情報を流しておけばどうにかなるのではないかと考えたのだ。


 しかし、勇者召喚されたのならいらなくね? とも思わなくもない。てか、思う。

 勇者が頑張る間の時間稼ぎとしてなら、有効かもしれないが、果たして意味はあるのかな?

 疑念は無くならない。


「それで、主は如何ようにするつもりだ?」

「そうだなぁ……取り敢えず子供達を家に返そうかと思ってる。それからは、どうするかはまだ決めてないな」


 ようやく揺れ揺れだった心も定まり、俺は子供達を送り届ける事を決めた。理由は罪滅ぼしという名の自己満足だ。

 取って付けたような理由だが、心が命ずるままにを信条に、理由を考えたらこうなった。


 これだと自分勝手に振る舞ってきた時と変わらないかもしれないが、心なくして俺は俺の道を進めはしない。だから、これはきっと悪い事ではない……と思うのだ。まだ少しだけ、自分が間違えないか怖いけどな。


 だけど、俺はやっと一歩進めた気がする。


 こうやって少しずつ前に進んでいけば、いずれシャルステナが待つ所へ辿り着けるだろうか?



 〜〜〜〜



 勇者召喚の話を聞いた日から、約1ヶ月の月日が流れた。その頃には、国はかなり安定してきて、人々が自由に働けるようになった。


 商業国クールキャス。

 それが新しいこの国の名前だ。身分差などない、新しい国の形をルクセリアは作り上げた。

 商業国の名の通り、この国は商売が基本。国そのものが商家だ。


 国の政治を行うのは国民の代表だが、それとは別に商業を行う部署を配置。それが国を盛り立て、国の財政を担う。

 つまりだ。国の方針がおかしいから、商品を買わない。その国民の意思だけで国が揺らぐ。


 実に不安定極まりない。だが、それは国民一人一人が国を担うのだという意識に繋がるのだとルクセリアは言っていた。

 恐らく、歯止めの意味もあるのだと俺は考えている。国の代表が悪政を強いないよう、その力を国民が担えるような形にしたのだと思う。

 それがルクセリアの言う国を担う意識に繋がるのだろう。


 だが、一つだけ大きな問題が残っている。


 それは、他国からの侵略だ。今のこの国は弱い。物凄く弱い。どれぐらい弱いかと言うと、例えば隣の国がジャ○アンだとすると、この国はの○太より弱い。天敵のネズミちゃんだ。


 何故そんなに弱っちいかと言うと、内乱が起きた後だという事と、前の政治が悪すぎたという事が挙げられる。

 ルクセリア曰く、この国の戦力はほぼ追放する他ないらしい。残るのは、無理矢理やらされていた平民兵と、こちらも一般人化が進んでいる盗賊達ぐらいのものだ。


 他の国がどれくらい戦力を揃えているか俺は知らないが、ルクセリア曰く、最低でもルクセリアの師クラスは数十人はいるものらしい。

 対して、今のこの国でそのレベルに達っしているのは、ルクセリア一人だけ。


 はっきり言っていつ侵略されてもおかしくない状況だ。まぁ、だからこその商業国という他にはないアイデアで攻めているのだろうが……

 ルクセリアの思惑では、商売が軌道に乗り、他国との取引を始めれば有用性を示す事ができ、そうそう侵略はされないと考えているらしい。


 俺としては逆に、奪っちゃえと思う気がしてならないが、複数の国と取引する事で歯止めになると思っているらしい。

 だがそれも時間の問題である事は、わかっているようで、ルクセリアは一つの決定を下した。


 それは、大国の傘下に加わる事。


 まだ何処の国の傘下に加わるかは決めていないらしいが、大国をバックに付けて守って貰おうという腹のようだ。

 だが、それは植民地化される事に他ならない。だから、慎重にどの国がいいか悩んでいた。


 そんな折、俺が子供達を送り届ける旨を告げると、ルクセリアは『それだ!』と叫びながら、何故か付いて来る事になった。

 彼曰く、実際に見に行くのが早いとの事。それが彼が同行する一番の理由だが、他にも二つ程理由がある。


 一つは奥さんの説得で、自らの死刑を踏み止まったルクセリアだが、罪を償うという気持ちは変わらないようで、子供達を送り届ける事で少しでも罪滅ぼしをしたいからだそうだ。

 俺と似たような理由だ。


 二つ目は、彼がこの国を去るつもりだからだ。自ら爵位持ちを追放した手前、自分と自身の家族だけはと特別扱いする事は出来ないと、自ら彼女達とこの国を去ることを決めていた。

 その前の最後の仕事だと、彼は笑って話していた。後悔や、憂はないらしい。むしろ、家族と過ごせる事が、今の彼にとっては何より喜ばしい事のようだ。


 そんな訳でかなり大所帯となったメンバーで、旅に出る事になった。とりわけ非戦闘員ばかりのパーティでの旅となったわけだが、安全と速度を考え、初っ端から船に乗る事にした。


 アフロト大陸の南から、ユーロリア大陸の南までおよそ2ヶ月。かなりの長旅だ。しかも、船に揺られるだけという、超暇旅だ。

 子供達はどこでも遊べるからいいだろうが、大人達はとても暇なのだ。


 取り分け暇そうなのは、セシルだ。流石の彼も船という孤島同然の場所では、お得意の情報収集も活発には出来ないらしく、毎日甲板で優雅に紅茶を啜っている。その顔には詰まらないと、書いてあった。だんだんと表情が薄くなっている気がしないでもない。

 こいつを見ていると思う。退屈は人を殺すのだと。


 一方、ルクセリアとその奥さんは子供達の世話をして、暇を紛らわせているようだった。その中にはもちろんルクセリアの子も混ざっている。


 ルクセリアの子は、ルアという名前で、ルクセリアから取って付けた名らしい。活発な女の子で、キースがよく泣かされている。若干偉そうなところが鼻に付くが、そこはルクセリアが特に気を払っているので、そのうち落ち着く事だろう。


 そういえば、自身の子が女の子である事を知った時の驚き様は凄かったな。目玉が飛び出るかと思うくらい、驚愕してたな。

 後継の心配は必要なかったのか、と酷く項垂れていたが、あれは何だったんだろうか?

 普通逆じゃないかと思うのだが、他の国の事はよくわからない。


 まぁ、それは置いといて。

 暇なのは俺も同じだ。だから、この船旅の間に、しばらくまともに出来ていなかった修行をしようかと考えた。だが、船の甲板でドンパチしようものなら、厳つめの船長さんに海に放り出され兼ねない。


 だから、補助系スキルを新たに習得しよう。そんな考えに至った。


 ちなみに今のステータスと、新しく覚えたスキルはこんな感じだ。


 名前:レイ

 種族:人間(青年)

 年齢:13歳

 レベル:99

 生命力:8600

 筋力:4426+200

 体力:4736+200

 敏捷:4639+400

 耐久:4263+190

 器用:2812+400

 知力:2456+50

 魔力:36231+1310


 希少スキル

「ポーカーフェイス」レベル1:表情を無表情に固定する。


 加護スキル

「妖精化」レベル1:妖精神の加護を高め、肉体へと還元する。気配感知に上方補正。


 これだけだ。スキルが全然増えていないのだ。だから、スキルを増やそうと思う。


 たとえば、泳ぎ系スキル。

 クラーケンとの戦いで海へと落下した時、結構動きにくかった。空中とも、地上とも違う。

 遊ぶだけならまだいいが、水中での戦闘を考えると泳ぎを鍛える必要があると考えた。


 他の候補としては、料理スキル。

 言わずもがな、旅の癒しとなるスキルだ。しかし、それだけとは限らない。芸術家スキルのように、それ以外にも有用な使い道があるかもしれない。


 どちらも船の上で出来そうだ。泳ぎスキルは船に置いて行かれないよう気を付けなければならないが……

 ここは、特に危険もない料理スキル習得を目標にしよう。厳つい船長に怒られそうだし……


 そんな訳で、料理スキル習得に向けて動き出した俺は、まず皮剥きから始める事にした。幸い果物を中心に剥ける食材は沢山ある。


 思い立ったが吉日。

 俺は早速普段は丸齧りにするそれを、クルクル回しながら剥き剥きし、果実だけとなった物を頬張った。


 今俺が食べたのは、この世界の果物の中で一番のお気に入り。ストロチーだ。

 その味を端的に言うなれば、イチゴ。ただし、皮は青いし、味は黄色い。リンゴ程の大きさで、形は楕円形。味はイチゴより甘めだが、シャキシャキ感が少しある。

 似てはいるが、完全に別種の果物だ。


 そんなストロチーを俺は好んで食べているのだが、剥いて食べてを繰り返していると、流石に飽きようと言うもの。

 気が付けば、剥き剥きしている俺の側には、大量のストロチーが積み重ねられていた。


「旦那、この大量のストロチーをどうするつもりだ?何かに使うのか?」


 訝しげに見詰めるルクセリアからの指摘に、俺はストロチーの皮を剥く手を一旦休め、首を振った。


「いや、特に用途はないな。取り敢えず皮を剥いてるだけだ」

「意味がわからないのだが……しかし、余り食物を無駄にするのは感心しないな」

「後で食べるから、ノープロブレム。代わりに全部食べてくれてもいいよ?」

「い、いや、遠慮しておこう」


 ルクセリアは若干引き攣った笑みで、山となったストロチーの残骸を見て、甘ったるそうな顔をして去っていった。

 甘い物が苦手なのかもしれない。それ以前にこの量が凶悪だったのかもしれない。


 ルクセリアとのそんな一コマがあった以外、特にこれといった事はなく、船は海を越えていく。その間来る日み来る日も皮剥きを続けた俺は、『皮剥キーナ』という謎の称号を手に入れた。


 ……この称号システム、誰が考えているのだろうか?



 〜〜〜〜



 3月の終わりに差し掛かる頃。

 気温が少し上昇し始め、少し陽気な春の潮風に靡かれて、船はユーロリア大陸沿岸へと差し掛かった。


「レイ兄来て!」

「はやくはやく!」


 グールの呼び声と、それを急かすソラの活発な声に連れられて甲板に出ると、水平線の向こうに薄っすらと大陸の影が見えた。


「やっと着いたか」


 ようやくこの暇旅からおさらばか。

 結局皮剥きしかしてなかったなぁ……


 そんな風に船旅の思い出にげんなりしていると、俺の目の前をヒラヒラとしたスカート通り過ぎた。


「ルア、あんまりはしゃぎ過ぎると、海に落ちるぞ」

「うるさい!私のやる事に平民が口出ししないで!」


 柵の上でケンケンパとはしゃぐルアに、軽く注意すると、ルアは不機嫌そうな顔をして宣った。

 このガギャァ!

 ほんと可愛くないガキだ。俺でももう少し可愛げがあったぞ。


「とうっ!」


 俺の忠告を聞かず、ルアは勢いよく柵の上で飛び上がった。そのまま柵の上に着地しようという腹だろう。

 しかし、ここは船の上。遮るものがない海原では強い風が吹き抜け、波に絶えず船は揺れ動いている。


「あっ……」


 そんな事もわからず飛び上がってしまうのは、子供だからだろうか。


「あっ、じゃねぇ!この馬鹿!」

「ば、馬鹿⁉︎ 私の事を馬鹿って言った!平民のくせに‼︎」


 咄嗟に伸ばした手を引っ込めたい衝動に襲われるも、子供の言うことだと、心の中で復唱しバシッとルアの手を掴む。


「ルア、言っとくけど、お前ももう平民だからな?」

「違うもん! 嘘つき! お爺様が、私は特別だって言ってたもん!」


 宙ぶらりん状態でも生意気な態度は変わらない。ルアの目に迷いはなく、本気でそう思っているようだ。

 お爺様か……

 そのお爺様とやらの教育がこの子の中には未だに残ってるんだな。

 そう思うと、居た堪れなくなった。


「特別な奴なんていない。そんな考え持ってたら、碌な奴にならないぞ」


 俺はぶら下がった状態のルアへそう口にして、自嘲するように、微かに笑い声を漏らした。

 どの口が言ってんだか……


 俺はルアから目を逸らし、ユーロリアの大地に目を向けた。


「さてさて、結局戻って来ちゃったな」


 前にあの大陸に渡った時は、シャルステナ達が一緒だった。

 子供らを助けたらどこへ行こうかね。目的がないと迷子になり兼ねないから、今の内から候補を幾つか考えておくか。


「ちょっとはマシになって帰ってこれたかね」


 水平線の彼方に、自身の成長を問い掛けた。

 ユーロリアでの過ちを思い返し、誰かにまた咎められたかったのかもしれない。

 しかし、雄大な大地は来る者を拒まず受け入れる。例え、そこで間違いを起こした者であろうと、大地にはそれを止める術はない。


 結局、俺を咎める声は何もなかった。

 それがほんの少し寂しかった。



 〜〜〜〜



 ユーロリア大陸。

 世界樹の根付く大地。そこを治める国は多数あれど、帝国という大国の支配を受ける土地。つまり、ここはもう既に帝国領土と言っていい。

 常時帝国兵がそれぞれの国を見張り、何かあれば本国へと伝える。例えば、誘拐された貴族の令嬢を発見したともあれば、本国から援軍が向けられるぐらいには情報網が張り巡らされている。


「セシル、情報漏れはなかったんじゃないのか?」

「ククッ、私も完璧というわけではないのだ。海の上では情報を操作するのも中々骨が折れるのでな」


 船を降りた俺たちを待っていたのは、手厚い帝国の歓迎だった。港を埋め尽くす程の帝国兵。大国の威信を誇示するように、一糸乱れぬ統率と個々からビリビリ伝わってくる圧力。

 その集団に囲まれた俺たちに、逃げ場はなかった。


「あなた! 船がッ……」

「船員が帝国と通じていたのであろうな」


 騎士に囲まれたとほぼ同時に陸を離れた船舶を見て取り乱したキャロットはルクセリアへと助けを求めるような顔を向ける。そんな視線を向けられたルクセリアの足には普段は生意気で偉そうなルアが、怯えた様子でギュッと抱き付いていた。

 そんな彼女達とは違い、冷静なルクセリアは静かに剣へと手を伸ばす。


「『蛇の毒』頭領ルクセリア並びに、冒険者ヒナタ。貴様ら2人には、ソラ様、ノルル様誘拐の疑いが掛けられている。大人しく投降する事を勧める」


 紫の長髪を海風になびかせる整然とした風貌の帝国兵士が、絢爛然とした鎧を輝かせながら降伏を要求してきた。


「投降も何も、俺たちはソラとノルルを親御さんのとこに送り届けようとしていただけなんだが?」

「ちょっと待てくれ、旦那。旦那の名前が違う気がするんだが?」

「今そこに食いつくか?」


 そこは今重要じゃないだろ。今まさに無実の冤罪吹っかけられそうなとこなんだぞ?


「よくものうのうとッ……そこの男が盗賊である事は既にわかっているのだ! 帝国貴族に手を出してタダで済むとは思わぬことだ!」


 怒気を吐き出して、荒々しく紫の髪の男は抜刀した。それにつられて次々に抜刀していく兵士達。

 それを見て、俺は手を剣の柄にかけて、聞いた。


「どうするよ、ルクセリア?」


 正直言うと、俺の頭には幾つかこの状況に対する打開策があった。しかし、どれも帝国と敵対し兼ねない愚策である。

 そんな風にこの場を切り抜けるいい手を思い付かなかった俺は、実力、頭脳共に認めるルクセリアの意見を求めた。


「どうするも何も、今は大人しく従う他なかろう」


 ルクセリアは柄から手を離し、棒立ちで抵抗の一切を取る気はないと言い切った。


「ってことは、またあの鎖に巻かれるわけか……」

「しばしの我慢だ。我々が抵抗してしまっては、キャロット達にも危険が及ぶ」

「まぁ、そうだな……」


 俺は煮え切らない返事を返した。

 捕まるのが自分だけであったのなら、俺も抵抗しようとは思わなかった。何も悪い事はしていないし、いざとなればツテもない事はない。

 だが、ルクセリアは元盗賊団頭領という世間体の悪い経歴の持ち主だ。無事で済む保証はない。それでも、彼が自分の家族を案じ、抵抗を諦めたのだから、俺も大人しく捕まる事にした。


 だが、何も手を打たないとは言ってない。やれる事は少しでもやってから捕まってやる。


「セシル、血契約を破棄する」

「何? ……ククッ、一体どういう事か聞いてもいいだろうか?」

「どうもこうも、俺とお前の血契約が邪魔なんだよ。後はわかるだろ?」

「主よ、それは信用と受け取っても?」

「構わないさ」


 俺はセシルに全てを託した。身動き取れない俺に代わって、最良の結果に導いてくれると信じ、また裏切る事はないと信用し、契約に従い血契約の紙を破り捨てた。


「ククッ、主からの任、しかと了承した。では、しばしの別れだ」


 セシルは破り捨てられた契約書に目を落とし、ニヤリと笑うと、極々自然に、そして、気付かれる事なく、気配を風景に同期させていった。


「さて、丁重に扱ってくれよ?」

「旦那、余り相手を煽るな」


 不遜に兵士へと歩み寄る俺に、ルクセリアは軽く呆れながら、注意してきた。俺はそれでも態度は改めず、ズカズカと兵士へと近づくとスッと両手を差し出した。


「ほら、捕まえろよ。どうせ何も悪い事はしてないんだ。後で慰謝料たんまり貰うからな?」


 そうして、心配そうに見つめるキャロット達の前で、俺とルクセリアに魔力封じの手枷がはめられたーー


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