92.プロローグ0
「お前が……最後の希望だ……必ず俺を……」
死にゆく男は最後の力で、希望を残した。
「どうして……どうして、私だけを残していくの……」
少女は、無くしたものを探し求めた。
「僕は、時を超える。そして、この力を未来へ」
青年は、力を繋ぐ事を決意した。
同じ道を歩いてきた三者は別々の道を行く。
死に行く男はたった一人の少女の為に。
少女は無くした二人と再会する為に。
青年は世界と親友、そして、己が罪を償う為に。
己の全てを捧げた。
三者の思いはすれ違い、交わる事のないまま幾千もの月日が流れた。
永久に思える程の月日。
満たされる事のない孤独感。
そして、己の決断への猜疑心。
彼らはずっと待っていた。
希望が目覚める日を。
その希望の光は儚く、とても小さい。だけど、何にでもなれる可能性を秘めた眩い光。
「ようやくか」
闇の中で男は、光に手を伸ばす。
「やっと会えた」
少女は、光を慈しみ愛した。
「…………」
青年は、一人闇の中で目を閉ざす。
一人は光に手を加え、一人は導き、一人は知りもしない。
三人の道が再び交わる時、光は闇へ落ち、絶望が舞い降りる。
それはもう変えられない未来。いや、変えてはならない未来。
それは彼らの思いが繋いだ未来なのだから。