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私、異世界の王女でした  作者: 猫熊かおり
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第八話 アニメを具現化

「えぇ!?これが!?でもこれ、ただのおもちゃですよ??」

 ひっくり返したり、開いてみたりと確認してみるけど、何も変わったところがない。それなのに、これがきっかけって…。

「何かこれを使って魔力を使うようなことをしませんでしたか?」

 魔力を使うようなことって言われても……。

 ん?…え、いや…まさか…それって…?

「それって…、…呪文…唱えてみたり…とか?」

 まさかと思いながらも、恐る恐る聞いてみる。

「おお、そうです。呪文を唱えられたんですね!」

「いや、呪文っていうか…」

 えー、あれがきっかけとか。そんなぁ…。

「さくらの世界に魔術は無かったのではないのか?」

 口ごもるさくらに、セリムが聞いてくる。

「いや、あの、アニメの変身シーンを真似して…」

「アニメって?変身するということは、高名な魔術師の名前かしら?」

「母上、父上も仰ったように、さくらの世界に魔術はないので、魔術師ではないと思いますよ」

「あぁ、そうね。さくら、アニメってなあに?」

 ジュリアスが首を傾げている。

 そうか、この世界にアニメって無いんだ。なんて説明したものか…。

「動く絵の物語…というか、アニメーション…うーん、なんて言ったらいいんだろう」

「動く絵…人形劇みたいなやつか?」

 腕組したがら考えていたレイキャルドが聞いてくる。

「うーん、人形劇??いや、そんな手動じゃなくて、例えばこう、手を開くという動作をアニメにするには、ちょっとずつ開いた状態の手の絵を何枚も何枚も描いて、それを重ねてパラパラパラとめくると動いて見えるじゃないですか。そんな感じで何百枚と描いた絵が動いて物語が進むんです」

 ここにはパラパラ漫画とかも無さそうだしなぁ。これで通じるかなぁ?

「あら、分厚い大辞典みたいなものなのねぇ。持ち運ぶの大変そうだわ」

 あ、うん。通じてないな。

「あー、いや、機械で一枚一枚取り込んで、映像…」

「機械?機械って魔器とか魔具とかと同じようなものかしら?」

 魔器?魔具?いや、こっちは魔器とか魔具とかの方がわかんないんですけど…。

 うーっ!わかんなくなってきたー! 

 うーん、うーんと頭を悩ませる私に、カイルが提案してきた。

「さくら様、このままでは話が進みませんので、私がアニメを具現化し皆様にお見せしましょう」

 ん?具現化?? 

 キョトンとカイルを見つめると、カイルはにっこりと微笑んで説明してくれた。

「魔術です。私は人が頭に描いた光景などを、映像として具現化することが出来ます」

「え?!そんなことできるんですか?」

「はい。さくら様、アニメを頭に思い浮かべていただけますか。出来れば具体的に」

「はぁ…。思い浮かべればいいんですね」

 よくわからないけど、ここは言われた通りしてみよう。

「失礼します」

 私が思い浮かべようとすると、額に大きな手があてられる。

 わわわわーっ!触るなら触るって言ってぇっ。

 男の人に顔触られたのなんて、初めてなんだようっ!

 ううううっ。しゅ、集中できないっ!

 急に触れてきたカイルの手に、思いっきり動揺しながら、何とかにゃんスト戦士を脳内再生できた。

 フワン。

 目の前に大きな光の玉が現れる。具現化が始まったようだ。

 光の中に白いもやがかかった後、映像が流れ出した。


『キャー!!ポイ捨て魔人よーっ!』

 にゃー!にゃー!

『ぐわはははーっ。お前らに俺は止められないのだー!!!』

 どかどかどか。ポイッ。ポイッ。

『猫さんたちがっ!?みんな!変身よ!』

 パカッ。ピロピロピーン。ピロピロピーン。

『鏡よ鏡よ鏡さん!にゃんにゃんメイクアップ!」

 チャラチャラチャッチャチャララララーン。

『われら美幼女にゃんスト戦士!猫さんたちを困らせるなんて許せない!』


 目の前で流れる映像に、口が開いてしまう。

 これって、…むしろ私が思い描いているより、再現率が高いんじゃない??どういう仕組みなんだ…?

 驚いて私の思考が停止すると、映像も光の玉も消えた。

「まあっ!これがアニメ!とってもかわいいのね!こんなの初めてだわっ。本当に絵が動いていたわね!」

「これは、とても興味深い。さくら様、描かれていた街並みは日本のものなのでしょうか」

 宰相として、異世界の様子に興味がそそられたのか、サイラスが聞いてくる。

「あー…、はい。概ね…こんな感じです」

 魔術ってすごいな…。こんなのまで出来ちゃうなんて。空飛んだり、物を浮かしたり、そんなのを想像してたけど、魔術ってなんでもアリなの??

 しかも、騎士であるカイルにこんな凄術が使えるってことは、魔術師団長のダッツブルグだと不可能なんてないんじゃないか??

 呆然としていると、私の額に触れていたカイルの手が、私の頭を優しく撫でるように動いてから離れた。

 「っ!」

 ぎゃーっ!!!今、あたっ、あたま撫でたっ!!

 ドドドドドドドドッと心臓のリズムが速くなる。

 なーんーなーのーっ!?うーっ、うーっ、ちょっとちょっとちょっとーっ!!恥ずかしいよぅっ。顔が、顔が赤くなっちゃううぅぅっ。

 どんどん熱くなる頬を隠すようにうつむき加減になりながら、チラッとカイルを見る。

 カイルは相変わらず微笑んでこちらを見ている。

 …カイルさんってばタラシなの!?

 こっちは、膝枕されてたり、頭撫でられたり、それだけでも意識しちゃうのに!

 ましてやカイルさんは、色気すら感じちゃうくらいの素敵な大人の男の人で…。

 そんな彼にずっとにこにこ微笑んで優しくされちゃったら、女の子はみんな意識しちゃって当然でしょーっ!

 ううぅっと唸ってますます顔を下向けてしまう。

 私の知らない間に、頭上で、カイルVS王家男子の睨み合いが行われていたらしいが、顔を伏せたままの私は、そんなことに気付くはずもなかった。



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