第四話 人違い?
開かれた扉の外には数人の男たちがいた。何故だか全員変わった服を着ている。
固まったままの私に、真ん中の一番キラキラした衣装を着た男性が駆け寄ってくる。
「リディッ!!」
ガバリと音をたてる勢いで抱きつかれた。ぎゅうっと強く抱き締められて身動きが取れない。
「きゃあっ、何、何なんですか?!」
動けないなりにもジタバタしていると、他にも数人部屋に入ってきた。
「へ、陛下!落ち着いてください!」
「こ、これ陛下、姫様が苦しがっておられるっ。離しておやりなされっ」
ぐぐぐぐっとうめき声を上げていると、やっと抱き締められていた腕が緩んだ。
男性の胸に手をついて腕を突っ張ってみる。少しだけ距離が離れて周りが見えた。
目の前の私を抱きしめる男性は、彫りの深い整った顔立ちをしていた。どこをどう見ても日本人には見えない。
くすんだ金色の髪に灰色の瞳。年齢は40代ってところだろうか。とてもダンディなおじ様だ。父親よりも背が高いから、190cmくらいあるのではないだろうか。
私を見つめる灰色の瞳は潤んでいて、何だかとても喜んでいるように見える。
「なんと、本当に王女が…」
「王妃様に連絡はいっているのですか?!」
男性が大きくて見えないが、扉の方からも様々な声が聞こえる。みんな一様に興奮しているようだ。
「陛下、姫様は困惑されているご様子。一度お手を離して差し上げた方がよろしいかと」
諫める声がした右側を向くと、足元まである青地の衣装に身を包んだ眼鏡の美麗なおじ様がいた。
銀色の髪の毛に深緑色の瞳ということは、この人も日本人じゃないだろう。
あれ?日本人じゃないのに日本語?
ん?と首を傾げていると今度は左側から声がした。
「陛下、聞こえとりますか、陛下!手を離しておやりなされ!」
「あ…、あぁ。すまん」
左側にいるのは足元まである緑地の衣装に身を包んだ、白髪でヒゲの長いおじいさんだった。
男性はおじいさんに肩を触られて我に返ったのか、私はようやく抱擁から開放された。
腕を離しはしても、男性の目は私をじっと見つめている。
「あ、あのぉ…」
そうろりと男性に話しかけてみると、私を見つめたままの目を大きく開いて、リディと呟いた。
「いえ、あの私、さくらです。生田さくら。リディって人ではなくて…あ、もしかして間違えられて連れてこられたんでしょうか。それなら人違いです。家に帰してもらえるとありがたいんですけど…」
別人って分かったら家に帰してもらえるかも!そんな私の期待はすぐさま否定された。
「いや、きみはリディだ。リディシア…やっと戻ってきてくれた…」
感極まったようにもう一度抱き締められる。
「きゃっ」
どうやって来たかも分からない身知らぬ場所で、初対面の大人に別人と勘違いされ、完全にパニックに陥った私は涙が出てきた。
「っちがうっ!違いますぅ…っく…別人なんですっ……やだぁ、帰りたいぃ。離してぇ!」
泣きながら抵抗する。
パパとママのいる家に帰りたい!!
「陛下!王女は混乱されておる!気持ちは分かるが、先に説明してやらんと!」
「っ!すまん!リディシア。落ち着いておくれ。説明するから」
「違うっ!さくらですっ」
別人の名前で呼ばないでほしい。身体を離され落ち着いてくれと宥められても、怖くて落ち着けない。
おじさんもおじいさんもさっきから私のこと王女って、みんな私のこと別人と勘違いしてるの?
このまま家に帰して貰えないかもしれないという恐怖で、この人たちの説明が耳に入ってこない。
その時、また開いたままの扉の向こうから足音が聞こえてきた。
「ダッツブルク様!彼女は?!」
泣きながら扉の方を見ると、先ほど窓から見た騎士っぽい人が部屋に入ってくる。
「間違いない」
ダッツブルグと呼ばれたおじいさんが答えると、彼は私の近くまで来て立ち止まった。目が合う。
彼が黒髪と黒い瞳だったからなのか、騎士っぽい制服がお巡りさんを思い出させたのか、理由は分からないが私はふらりと彼に近寄り、その胸に縋った。
やっぱり文章書くのって難しい…。