第三話 見知らぬ部屋
「え…?」
いきなりのまぶしさに驚き、ぎゅっと閉じた目を開けてみると見知らぬ場所に立っていた。
何が、一体、どうして、ここどこ。あまりの困惑に疑問は浮かぶものの、何も考えられない。
私、今パパの書斎でにゃんスト戦士のマネっこして…光が…え、あの光何だったの?
呆然としながらも右手に持ったままだった変身コンパクトを見たが、やっぱり電池が切れていてこれが光ったとは考えにくい。
そもそも閃光弾が部屋に投げ込まれたんじゃないかってくらいの光だったのだ。普通じゃない。
どうすればいい?まず…まず、ここは家じゃないよね。
周囲を観察すると、女性というか女の子の部屋のようだった。
脚に繊細な細工が施された丸い純白のテーブルに椅子。随所に飾られた色とりどりの花。大小いろんなサイズのぬいぐるみ。窓にはレースをあしらった薄桃色のカーテン。そのどれもが女の子らしく高級感にあふれている。
かなり広い。
お金持ちのお嬢様の部屋?でもなんだか、床も壁も白地に金色の豪華な模様が入っていて、現代っぽくないというか、これってロココ調っていうのかな?教科書に載ってたベルサイユ宮殿とかの中世のお城に似てるような…。
部屋の中をじっくり観察すればするほど、自宅どころかご近所の家でもなさそうで焦ってくる。
落ち着け、落ち着こう私。まず、窓だ。窓の外を確認してどこにいるのか考えよう。
震える足を何とか動かして窓際に行く。窓は開いていた。風が左右にまとめたカーテンを揺らしている。
ゆっくりと窓の外を覗くと、まずはたくさんの背の高い木々が見えた。
森?大きい木。杉の木とか?こんなに木があるってことは、山の中なの?
下を見ると自分のいる階は、かなり高い位置にあるようだった。地面には芝生が生えていて、右を向くと大きな塔が建っている。
もっと窓から身体を乗り出して自分がいる建物全体を見ようとすると、下から声が聞こえた。
「※※※※※?!」
「※※※※!」
声が遠すぎて何を言っているのか聞き取れない。声の方向に顔を向けると、漫画でしか見たことの無いような騎士っぽい服の人が数人こちらを見ていた。
「日本人じゃない…?でも、ここどこか聞かなきゃ帰れないし…。…あの!!」
勇気を出して話しかけようとした瞬間、一人の騎士っぽい人が仲間の人に何かを言った後走り出した。
突然の行動に驚いている間に、その人は見えなくなっていた。
「あのー!!ここどこですかー!!」
取りあえず誰でもいいから、と藁をもすがる気持ちで下の人たちに声を掛けてみるが、こちらをちらりと見ただけで反応してくれない。
えぇー…、どうしよう。…はっ!私あの人たちにここへ連れて来られたとか?
「どうしよう!さっきの人私が逃げ出すと思って、走ってこっちに来る気なんじゃ?!」
声をかけるんじゃなかった!?とパニックに陥っていると、扉が視界に入った。
「取りあえずここから出よう!逃げなきゃっ!!」
慌てて扉に駆け寄ると、扉の外が騒がしいのに気づく。
やばい!もう来たの?!どうしよう、どうしよう、どうしよう!!
男の人の怒鳴り声と数人分の大きな足音が聞こえる。しかもすごい早さで近付いてくる。
扉から後ずさりながら、もうダメだ!と思った瞬間、扉が勢いよく開いた。