表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界の王女でした  作者: 猫熊かおり
2/32

第二話 強い光

 

 6時間目の授業が終わると一気に廊下が騒がしくなる。部活に行く生徒や帰宅する生徒であふれてくる。

 授業で使った教科書もカバンにしまい終わると、律子が席にやってくる。

「さくら、一緒に帰ろう」

「うん」

 律子は入学当初から会長直々の指名で生徒会に入っているため、いつも一緒に帰っている訳ではない。だがさくらが帰宅部なので律子の予定が無いときは一緒に下校する。

 昇降口で靴を履き替えながら、今日の英語の授業について口にする。

「絵本ねぇ。あったかなぁ」

 律子は踵を入れるために、右足のつま先でトントンと地面を蹴りつつ首を傾げる。

 明日の授業で絵本を英訳してみようってことになったのだ。英語教師は何冊かは用意するが、全員分はないので、家に絵本がある人は持ってきてほしいと言っていた。

「うちはたぶん取ってあると思うよ」

「あぁ、さくらん家は子供の頃のおもちゃやら洋服やら、全部取ってありそうだよな。パパさんさくら溺愛だし」

「いや、さすがに全部ってわけじゃないと思うんだけど…」

 でもほんとパパなら全部取ってるかも…。

 自分を溺愛してくれる父親はありがたいが、年頃の娘としては少し複雑な部分もある。このままだと自分は一生彼氏できないかもしれないからだ。

 

 家の近所の曲がり角で律子とは別方向になる。

「明日りっちゃんの分も絵本持って行くよ」

「いいの?重いでしょ?」

「大丈夫だよ。絵本って薄いし」

「ごめん、じゃあお願いする。ありがと」

「うん。じゃあまた明日ね」 

 


「ただいまー」

 鍵を開けて家に入ると、母親は出かけているようだった。

 ジュースを取り出しながら、冷蔵庫に張られているカレンダーのハートマークに気づく。

 あぁ、今日パパとママ記念日デーとの日だ。

 両親はいまだにラブラブで、よく二人でデートに出かけている。今日は平日だが、父は初デート記念日を二人で祝うため休暇を取るといっていた。

 確か夕飯までには戻ると言ったけど、どうせならママとディナーでもしてきたらいいのに。パパって夕飯は家族揃って食べたい派なんだよね。

 どうしてものお仕事の時以外は家族揃って夕飯を食べる。だから必然的に生田家の門限は早い。

 夕飯が大体19時だからそれまでには帰宅していないといけない。高校生になったのだから、もうちょっとと思わなくもないが、今のところ困っていないので別段気にしていない。

 

 さあ、明日の絵本探さなきゃ。

 飲み終わったコップをシンクに置き、書斎に向かう。思い出の品々は父の書斎にまとめて閉まってあるのだ。

 ママがパパは定期的に思い出の品を見返していると言っていたから、きっとそんなに奥には閉まっていないだろう。


 絵本は書斎のクローゼットの中に箱に入れてまとめられていた。

「あったあった」

 十数冊ほどの中から二冊良さそうなものを選ぶ。

 箱の中には子供の頃のおもちゃも一緒に入っていた。カメラ型の音が出るおもちゃや魔女っ子ものの魔法のステッキもある。

 懐かしくて絵本を置いておもちゃを物色していると、今日学校でも話題になったにゃんスト戦士の変身ブローチが出てきた。

「あー!まだあったんだ」

 千花ちゃんが持っていたものとデザインは同じだが、やっぱりこちらは子供向けのおもちゃなので作りがとってもチープだ。

 でもこれもコンパクトになってて、中の模様に触ると音が鳴るんだったっけ。

 パカリと開いて中の模様に触ってみる。さすがに電池が切れていて音は出ない。

 誰も家にいないことは分かっているけど、気恥ずかしくてキョロキョロと周りを確認してから律子のように変身シーンをマネてみる。

「…鏡よ鏡よ鏡さん!」

 

 その瞬間、突然強い光に包まれた。


説明しよう!にゃんスト戦士とは、ご近所の猫の散歩道である『にゃんにゃんストリート』の平和を守るため、日夜悪と戦う美幼女戦士の物語である。

ちなみにヒロインは、三毛縞みやこ5歳。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ