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私、異世界の王女でした  作者: 猫熊かおり
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第十七話 母親

「すると、あなたがさくらの異世界での母親だと…?」

「はい」

 結局私では、うまく両親に説明出来ず、三人に説明を任してしまった。

 パパとママは信じられないといった風だったけど、私がこんな嘘をつく子ではないということと、私の時のようにダッツブルグ魔術師団長による魔術で、異世界の存在を信じてくれた。

 だけど、私がお父様とお母様の子でもある、ということはどうも納得出来ないようだった。

 ママにしてみれば、自分のお腹の中から出てきた子供に、他の両親もいる、なんてちょっと理解の範疇をこえることだと思う。

「…ちょっと、信じられない…ですね。この娘は確かに私のお腹から産まれた子ですし、なんというか…」

「ええ。私共の世界でも類を見ない出来事ですから…、雪菜さんが戸惑われるお気持ちもわかりますわ」

「でも…」

 ママが躊躇ったように、言葉をとめる。

「ママ?」

「……だとしたら、奇跡も納得がいくかも、しれません」

「雪菜…」

 パパがママの肩を抱き寄せる。

「私、妊娠出来ないかもって、言われてたんです」

 え…。

「さくらにも話したことなかったわね…。ママね、結婚前お医者さんに自然妊娠の可能性はほぼ無いって言われてたの」

「うそ…」

 そんなの知らなかった。だって、私は存在するし、しかも私はパパとママが結婚して割とすぐに出来た子のはずだ。

「本当よ。だから、子供はほとんど諦めていたの。夏樹さんと一緒にいられるだけで幸せだったし、二人だけの生活で満足だって思ってた。でもある日、体調を崩して病院に行ったら、『妊娠してますよ』って言われて…。ほんとビックリしたのよ」

「…その子が…私…?」

「うん。もう、お医者さんもビックリして、これは奇跡だって、ずいぶん興奮されてたわ。妊娠中もさくらは何の問題もなく、お腹の中ですくすくと育ってくれて、出産もすごくスムーズだった。ママ、さくらを産んだ産婦人科の伝説の患者とまで言われてるのよ」 

 奇跡…。

「さくら様の魔力が雪菜様の身体を守られていたのでしょうな」

 ダッツブルグ魔術師団長が説明してくれた。

 魔力の波長がよく似たパパを(地球の人にも魔力はあるんだってっ。ビックリだ)私の魂が力の回復をはかるために宿り木として、そして再び誕生するために魔力でママを出産に導いた…とのことらしい……。

「さくらじゃなかったら、私たちは子供を授かることが出来なかったんですね…。ジュリアスさんたちの気持ちを思うと、申し訳ない思いもありますが、さくらがそちらの世界から、私たちの元へ来てくれたことを感謝します」

 ママ……。

「いま、あなた方がこちらへいらした、と言うことは…さくらを…連れて行くつもりだからですか」

 パパが厳しい顔をして、お母様に聞く。

「そんなっ、あなたっ」

 ママが悲痛な声でパパに縋る。

「……いいえ。そうではありません」

 お母様が、静に微笑んでパパとママに首をふった。

「連れて行かないと?」

 パパが怪訝そうな顔で、お母様を見る。

「もちろん、連れて行きたい、一緒に暮らしたいという思いはありますよ。…でも、それはさくらの幸せではなく、私たちの幸せですから…。さくらはあなた方の元で、幸せに暮らしてきた。それを私たちの我侭で引き離すことなど、出来ません」

 お母様が、先ほどまで私に見せてくれていた、明るい表情とは違い、切なそうな顔になる。

「17年間…、本当に長かったんです…。この娘を失った私たちは、ただこの娘が無事で、幸せに暮らしていることを、ただ祈るしか出来なかった。いつか絶対に会えると信じてここまでやってきました。そして、今日、ようやく娘に再会することが出来た。元気で、可愛くて、素直で……、一目でこの娘が幸せに暮らしてこれたんだって、この娘を愛してくれる人が、この娘の側にいるんだって、わかりました。それだけでっ……」

 タガリアで、みんなと話している時は、終始明るくて、悲しみの面影を感じさせなかったお母様。

 そのお母様が、今は肩を震わせて泣いていた。

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