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ごく簡単なプロローグ
かわいそうなことに、この日本人の少年が死んだのは彼が15歳になった日だった。
彼は母の実家に帰省した際、毒ヘビの牙を前に倒れ、そのまま息を引き取ったのである。これまたたわいそうなことに、彼はとても虚弱な少年だった。
それでも心は健全な、中学生の男子。
きっと、思い残したこともやり残したことも、いっぱいあったことだろう。未練はタラタラだったろう。
だから、世界の神は彼に手を差し伸べた。ただし今とは異なる世界で。輪廻転生の理にのっとった、新たな生の機会を授けたのだ。
この物語は、前世でか弱い存在だった者が来世で強大な存在として駆け巡るという、典型的異世界転生譚だ。ただひとつ違うのは、転生したのが勇者でも王子でもなく……いや、人ですらなく、大きな大きな爬虫類であったという事くらいか。
この竜が卵殻を割して「かの世界」に生を受けたのは、隔たる世界における少年の死から49日後のことだった。