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SEASONS  作者: COLOR
一学期
7/18

#七 抑えられない感情

「お待ちどうさま」

 一時間後、テーブルの上に昼食とは思えないほど様々な料理が並んだ。

「凄い量…」

 量もそうなのだが、一時間ほどでこれだけ作ったという事にも驚きだった。

「ちょっと…テンションが上がっちゃって…。あっ心配しないで、残ったのは妹が食べるから」

「妹さんは遅いの?」

「部活があるのよ、今日で試験終わったでしょ」

「え!じゃあ同じ学校?」

「そうよ。さぁ食べて」

「いただきます」

 まず、スパゲティサラダから口にした。

「うまいっ!」

 思わず声を挙げてしまうほど美味かった。

「本当に?」

「ウソ言ってどうするんだよ。マジで美味いよ」

 それを聞いた朝倉は嬉しそうに微笑んだ。

 初めてごちそうになった朝倉の手料理は想像をはるかに超える美味さだった。最初のデートの時に、料理が巧そうだとは思っていたが、大袈裟じゃなく、このまま店を開けるんじゃないか?という程の味だった。

 最初に食べたスパゲティサラダを始め、ご飯系にオムライス。サーモンのクリームソース。野菜たっぷりのコンソメスープにデザートに数種類の果物を使ったジュレとどれを食べても味は申し分なかった。


「ごちそうさま〜」

 テーブルに並んだ時には食べきれるかどうか不安な量だったが、気が付けばもうほとんど残っていなかった。

「ごめん。妹さんの分ほとんど残ってなくて…」

「良いのよ。カップ麺でも食べるから。それよりあんなにおいしそうに食べてくれて嬉しかったわ」

 朝倉も一緒に食べていたが、ほとんど俺が食べてしまった…。かなり食い意地の張った奴と思われたか、よほど腹が減っていたのかのどちらのとられたのか少し心配だ…。

「さてと」

 言って、朝倉は空いた食器を持って立ち上がった。

「あっ手伝うよ」

 俺も空いた食器に手を掛けたが、

「あっいいのよ。今日は私が勝手に誘ったんだから。ゆっくり座っていて」

 朝倉が俺の行為を静止した。

「じゃあ、せめて運ぶのくらいはい手伝わせてよ」

「ありがとう」

 食器を運び終え、俺は最初に座っていたソファーに腰掛けた。

 キッチンの方からジャバジャバと食器を洗う音が聞こえてきた。

 テレビをボーとっしながら見つめる。ふっと先刻の一年の事が頭に浮かんだ…。

(!)

 俺は最低な男だ!こんなにも俺のことを好きだと言ってくれている朝倉の前で他の女の事を考えている。

 頭では解かっているがそれでもあの一年のことを諦めきれない。この感情は明らかに朝倉への背徳だ。こんな気持のままで朝倉の前に居てはならないのは解かっている…。でも、そうするとそれもまた朝倉を傷つけ、悲しませる事になってしまうかもしれない。

 なんともやりきれない感情で叫び出してしまいそうになった。

「さて、どうします?」

「!」

 今にも張り裂けそうになった瞬間、背後から朝倉が話し掛ける。

 俺は振り返り、朝倉の前に立った。

「朝倉、聞いてくれ!」

 突然の俺の行動に朝倉は一瞬ビクついたが、即に平然とした。

「多分…朝倉にとっては聞きたくない事だと思う…でも、俺は正直に言わないといけないと思うから…」

「うん…話して…」

 不安そうに朝倉は言う。だが、覚悟はしている!そんな表情にも見える。

 俺は意を決して口を開いた。

「前にも言ったけど、俺は…一目惚れした子が好きなんだ…。五月にその子を見て、それから一度も会う事がなかったから朝倉のためにも、もう、その子の事は忘れようとしてたんだ…。でも今日、偶然下駄箱でその子に会ったんだ…。そしたら忘れようとしていたのに…していたのに…」

 その後の言葉が出てこなかった…。

「・・・・・・そんなに自分を責めないで。元は私が勝手にあなたに告白したのが悪いのよ」

「違う!」

 俺は朝倉の言葉を激しく否定した!

「朝倉は何も悪くない…人が人を好きになるのは当たり前の事だ。その事をどっちつかずの気持ちで受けてしまった俺が悪いんだ!君を傷つけまいと選んだ…今の状況が、余計に君を傷つけてしまっている。…本当に俺はバカな奴だ…」

 言いながら、俺は知らず知らずのうちに涙を流していた…。

 人前で涙を流したのはいつ以来だろう?

「最初に言ったでしょ。私一人があなたの恋人だと思うと…。あなたは…あなたの恋をしてください。あなたが他の人と付き合ってても私は構わないの。あなたに告白して、あなたに好きな人が居ると知った瞬間からそう決めています。だから…」

 そう言うと朝倉も大粒の涙を流した。その涙の真意は俺には解からない…。自分のためなのものなのか、それとも俺に向けられたものなか…。ただひとつ解っているのは、今朝倉が流している涙は俺が流させているものだと。

 それじゃ駄目なんだ。俺を好きでいる間朝倉は幸せになれない!

「こんな俺を好きな間、君は幸せにはなれないんだよ?」

「ううん、あなたと居る時間、私は幸せです。世界で一番幸せです!」

 より一層の涙を流しながら、彼女は力強く言った。

「嘘だ!二人ともが想い合っていてこそが幸せなんだ!今の俺では君を幸せには出来ない…」

「今、私は幸せです!」

 何故…何故こうまで俺なんかに…。

「…せめて、今の俺に出来ることで君が幸せになれそうなことを教えてくれないか?」

 本来は俺が見付けないといけない事を、俺は朝倉に問いかけてしまった。

「いいの?」

「あぁ」

 朝倉は突然、眼鏡を外した。

「!!ッ」

 次の瞬間、俺の唇と朝倉の唇が重なった!

 朝倉が勢い良く飛び掛ってきたので俺は思わず後ろのソファーに倒れ込んだ!そのショックで一旦朝倉の唇が離れたが、直ぐに重ね直しそのまま朝倉は俺の上に乗り掛かる格好になった!

 上から真っ赤に腫らした朝倉の瞳が俺を見つめる。突然のキスに動揺してしまい、動くことも言葉を発する事も出来ない俺に、朝倉はもう一度口づけをした!

 それは口づけを呼ぶには余りに荒々しい、ディープキス!

「ん!んー」

 俺は思わずもがいたが、朝倉は構わず俺の口内を貪る!

 本来なら官能的なディープキスだが、今はそんな状況が違う。あの朝倉が自分からこんなに情熱的な口づけを迫ってくるなんてクラスの男共は想像も出来ないだろう!

 朝倉を引き離そうと彼女の肩に手を掛けたが、その刹那、俺の腰に彼女の腕が巻き付いてきた!

 完全に朝倉の腕でロックされた状態になり彼女を引き離すことが出来なくなってしまった。

 だがその時、朝倉が息継ぎしたため唇が離れた!

 ここだ!と思い!

「ちょっ」

 何とか短い言葉を発することが出来たが、拒絶しようとする俺に朝倉が『黙れ!』と言わんばかりに三度目のキスで封じる!

 次第に朝倉の息も荒くなる…。

 次の瞬間、朝倉が俺の胸ぐらに自分の胸を押し付け上下に擦り始めた!

 清純なルックスからは想像できないこの行為は、まるで『私は人に思われている様な女じゃない!本当の私を見て!』と言っている様に見えた。

 不意に俺は朝倉の肩に掛けていた両手を彼女の脇腹に添えてしまった!

 するとキスを止めた朝倉は俺に跨ったまま、上体を起こした。

 初めて見る、下から素顔の朝倉…。

(やっぱり…あの子に似てる…)

 数時間前にあったばかりのあの一年がリフレインする…。初めてのデートの時、川原で初めて素顔を見た時も感じたが、今日、再会したことで一層そう思った。

 そんな上気する朝倉の表情で、徐々に俺の理性が薄れていくのを感じた。

 朝倉は上から俺を見下ろすと、ゆっくりと自分の制服のボタンに手を掛けた…。

「だ、駄目だ!」

 今、彼女が何をしようとしているのか悟った俺は、咄嗟に声を上げた!

「いいの…」

 朝倉は優しく、まるで子供をあやす様に言った。

「良くないよ…」

 俺が言うと。

「私とじゃ…嫌?」

 潤んだ瞳で問いかけてきた。そのあまりに美しい瞳に魅せられてしまい、思わず…。

「そんなわけないじゃないか」

 言ってしまった…。それを聞いた朝倉は安心した様な表情を浮かべた。

 そして意を決し制服のボタンを上から順に外し始めた…。一つ、二つとゆっくりと制服のボタンがはずされていく様を、俺はただ見守るしかなかった…。三つ目のボタンが外れた瞬間、胸元から白いレースが見えた。思わず顔を背けようとしたが、彼女の魅力によって体が動かなかった…。

 四つ目のボタンも外され、ついに完全に彼女の胸元を覆う純白の布が露になった!

 綺麗だ…全校男子にナンバー一と認められた美少女のセミヌードを、俺は今目の前にしている!そう考えると今まで冷静だったものが微かに反応する…。

(駄目だ!今、朝倉は俺の腰の上に居る!)

 俺の欲情の変化が伝わったのか?朝倉の表情が強張った。

 そして、瞳を閉じると最後のボタンを外すため、制服の裾をスカートの中から引き出した!

 その時、『ガチャッ』と玄関から音がした!!

「!!ッ」

「!」

 朝倉は驚きの表情で俺から離れた!

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