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狐が異世界に召喚されました  作者:
プロローグ:狐の召還
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3

「じゃあ早速、旅に出るね」


場所を移し、応接間のような所で一通りの事情説明を受けた後、さくらはあっさりとそう告げた。

因みに身の潔白は、魔法と言うか妖術を使用した時点で晴れている。どうも獣人と言うのは魔法が一切使えない種族だそうで、この国と長年対立している国の住民の事だそうだ。

見事なまでの王道に、さくらは密かに感動していた。


それはさておき、召喚の事情もやはり王道で、この世界の住民では太刀打ちできない敵をなんとか出来る人材を求めてだったらしい。

それだけわかれば十分である。


「ちょ、ちょっと待ってください!」

「何?」

「貴女にしていただきたい事の説明や、こちらの世界の事についてなど、もう少し詳しく説明します!いきなり放り出すような真似は出来ません!」

「えー、さっきの説明だけで十分じゃん。

ちゃんと魔王っぽいの倒すから、待ってて」

「だから、魔王ってなんですか!?貴女全然理解してないじゃないですか!!」

「私は分かってるからいいんだって。細かいことは気にしないで」


さっきから、めんどくさそうに話を聞くさくらをなんとか宥めつつ説明していた少年が、ついに限界に達したようだ。まあ、話が少し進んだだけで、すぐに飛び出そうとするのを宥めながらの説明だったので大変だったのだろう。

あああ、どうしたら…!

と言って、頭を抱えた少年がなんかかわいそうになってきて、さくらは思わず頭を撫でてしまった。


「よしよし」

「って、誰のせいだと思ってるんですか!」

「いやー、ごめん。つまらない話は聞き流す事にしてるから、これ以上説明されても無理」


ついでに、興味のない人間の名前など覚える気もないので、始めにこの場にいる人間の自己紹介をされたが当然覚えていない。自分から要求しておいてなんだが、妖怪とはだいたいこんなものだ。


重要なのは、興味を引かれた楽しそうな事のみ。やりたくない事など一切せず、勝手気ままに生きるのが妖だ。

故に長い生をもて余す者が多く、今回召還なんてされたのはさくらにとってはかなりの幸運であった。


(お母さんの願い通りに人として生きてくのも、そろそろ飽きてきてたんだよね)


そんな事を考えながら、きちんと自分の特性を説明してあげれば少年ーこの国の王子だったかーは、ついに項垂れてしまった。

何を言っても、何度説明しても、さくらはもう要らないの一点張りだ。

このまま旅に出れば、問題しか起こらないのは目に見えている。ただでさえ彼女の姿は目立つのに、常識まで持っていないとなれば推して知るべし。

この先に起こるであろう問題に、頭が痛い所の話ではない。


「ああ、そっか」

「えっ…」


なんとか旅路の準備だけでさせてもらおうと考えていた目の前で、突如さくらの姿が変化した。

淡い茶髪に緑の瞳。耳と尻尾は消えている。

突然の変化に、これまで黙って王子とさくらの様子を伺っていた大人たちの表情も驚愕に染まる。


「これなら平気でしょ?」

「ええ、まあ、それならごく普通の人間にしか見えませんが…」

「じゃあもう問題はないね」


一刻も早く外に出て異世界を満喫したい!という様子を隠しもしないで扉に向かうさくらに、本当にもう何を言っても無駄だと悟った少年は諦めの表情を浮かべ、隣に控えていた騎士に合図を送ると続いて部屋を後にした。

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