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拙い作品をご覧いただき、ありがとうございます!
「そこのジュウジンを捕らえろー!」
「一体何処から入ってきたんだ」
(何処からもなにも、あんたらが私を連れてきたんでしょーが。)
心の中で突っ込むも、周りの人々の慌てようを、さくらは静かに見つめていた。
そしてじりじりと自分を取り囲んで来るものたちを観察する。
向かってこないのは賢明だ。
周りが叫んでいる、ジュウジンとかいうのはなんなのか知らないが、自分が人ではないのは確かなのだから。
その気になれば、この場にいる全員を一瞬で焼き尽くす事だって可能だ。
それでも敵意を見せられて反撃をしないのは、普段から父に人を侮るなと言われているせいでも、母に人を傷つけてはいけないと言われているせいでもない。
(これってやっぱり、あれだよね!?)
離れた場所で、10歳ほどの身なりのいい少年が必死に大人たちに訴えている断片を聞いて、確信する。
彼女は耳も非常に良いのだ。
そう、それはつまり
「異世界召喚、されちゃった」
そうこっそり呟いて、嬉しさのあまり周りににっこり微笑んでみせた。