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準備不足の耐寒マラソン

作者: 森好子
掲載日:2026/06/27

私の卒業した高校は、統廃合され現在は存在しません

高校時代、毎年2月になると「耐寒マラソン」という行事があった。

1・2年生合同、男女別のコースをおよそ10km走る。10位までが表彰される、冬の恒例行事だ。


長距離を走ると横っ腹が痛くなるという話をよく聞くが、私の場合は少し違った。

痛むのは決まって両足首の内側。じわじわと、確実に、足の感覚を奪っていく。


1年生のとき、序盤は余裕があった。

しかし残り2kmほどで、いつもの痛みが顔を出す。

残り500mでは、もはや足が自分のものではないようだった。

それでも歩かずにゴールした。途中で二人に抜かれたが、完走できれば十分だと思った。

結果は11位。あと一人抜かれなければ入賞だった。


そして迎えた2年目。

「今年こそ入賞する」と意気込んだものの、特別な練習はしなかった。

気合いで乗り切れると信じていた。

痛みに負けなければ、きっと報われる。

そんな根拠のない自信だけを握りしめてスタートした。


しかし現実は去年と同じ。残り2kmで痛みが始まる。

私はなぜか、星飛雄馬の大リーグボール養成ギプスを思い浮かべていた。

「痛みに耐えれば強くなれる」

幼い頃に刷り込まれたその物語を、都合よく信じていたのだ。


だが、あと100mというところで転倒し、右足を捻ってしまった。

保健委員に両脇を抱えられ、コースを離れる。

入賞どころか、完走すらできなかった。


幸い大事には至らなかったが、そこでようやく気づいた。

「苦痛に耐えれば必ず報われる」のは、意味のある苦痛に耐えたときだけだ。

気合いだけでは、何ひとつ解決しない。


入賞したいなら、練習すればよかった。

毎回足が痛むなら、その原因を探し、靴を見直せばよかった。

ゴールまでの道筋を、気合いではなく“仕組み”で整えるべきだった。


「仕事は準備が9割」

今の自分を支えているのは、あの冬の耐寒マラソンで学んだ、そんな当たり前の教訓なのかもしれない。

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