番外編:魔王軍緊急会議と、残り三人の四天王
魔王城の謁見の間。そこには、暗殺者デスガルドが「真っ白に浄化されてボランティア活動に転向した」という衝撃的な報告を受け、残された三人の精鋭が集結していた。
「……聞いたか。あの聖女、自分からあの『得体の知れない防具』を脱ぎ捨てたらしいぞ」
身長3メートルを超える巨漢。筋肉こそが魔法だと信じる武闘派の剛拳のボルガが、岩のような拳を鳴らす。
「今や魔力もゼロ、守備力もゼロ。騎士団長が公務で不在の今こそ、あの女を葬り、我が主の美白(浄化)の呪いを解く好機だ!」
「ふふ、魔力ゼロなら私の『魅了』から逃れる術はないわ」
あらゆる精神操作と幻術を操る美女。妖艶のルナマリアが、毒々しい扇で口元を隠す。
「彼女の中に眠る醜い欲望を引きずり出し、廃人にしてあげましょう」
「……計測開始。聖女マユ。魔力値:0.00。防御係数:測定不能。……物理的な排除は容易と判断する。直ちに出撃し、因果の歪みを修正する」
全身を魔導回路で固めた、感情を持たない冷徹なサイボーグ剣士。機械仕掛けのゼノンの瞳が赤く点滅し、三人は王都へと飛び立った。
第一次接触:聖女の「完全無防備」
アルベルトの屋敷の庭園。三人は、陽だまりの中で「あざらし」のように長椅子に転がる真由を包囲した。
今の真由は、最高級のシルクドレスに身を包んでいるが、その着こなしは驚くほどだらしなく、片手にはアルベルト邸の侍女が再現した「ポテチ」が握られている。
「死ね、聖女マユ! 覚悟――」
ボルガが巨大な拳を振り上げた、その瞬間だった。
「ふわぁぁ……。あ、お客さん? ごめんね、今ちょうど『お昼寝の二回戦』に入るところだから。……あ、そこの大きい人、ちょうどいい影。そのまま止まってて」
「…………は?」
真由は、死を運ぶはずの四天王たちを、まるで「通りすがりの親戚」を見るような目で見上げた。
通常、これほどの魔族に囲まれれば、恐怖や闘争心という感情の魔力が漏れ出るもの。しかし、真由からは一切の魔力が漏れてこない。 代わりに漂ってきたのは、あまりにも純粋で、抗いようのない「安らぎの浄化波動」だった。
第二次接触:浄化される殺意
「舐めるな! 我が精神操作の魔力で――」
ルナマリアが幻術を放とうとした瞬間、真由が大きな溜息をついた。
「お姉さん。……知ってる? 頑張るのって、すごく疲れるんだよ。……世界征服とか、復讐とか。……それより、このクッションに身を任せて、ただ流れる雲を見る方が、ずっと有意義だと思わない?」
真由が指し示したのは、セドリックが「スウェットの柔らかさ」を追求するあまり、魔力的な安らぎの極致に達してしまった『禁断のダメになるクッション』だった。
一分後。ルナマリアはクッションに顔を埋め、「……復讐とか、もうどうでもいいわ。……私、このまま綿になりたい……」と涙を流していた。
第三次接触:新体制の誕生
一時間後。
アルベルトが「マユ殿! 魔族の反応を感知して急ぎ戻りま――」と、聖剣を引き抜いて庭園に踏み込んだ時。
そこには、
• 日除け(物理)として直立不動で立ち、「……これくらいの角度でいいか?」と真由を気遣うボルガ。
• 真由の隣でクッションと一体化し、完全に戦意を喪失したルナマリア。
• 指先から微弱な冷気を出し、真由の飲み物を「最高に喉越しが良い温度」に保つゼノン。
そして、その中心で「平和だねぇ」と幸せそうに笑って目を閉じる聖女の姿があった。
「……マユ殿。貴女はやはり、最強の盾を脱いでもなお、その『無』の心だけで世界を平定してしまうのだな……っ!」
アルベルトは、四天王の心を完全に「お洗濯(浄化)」してしまった真由の器の大きさに改めて惚れ直し、自分もその輪に加わるべく、甲冑を脱ぎ捨ててクッションへとダイブするのであった。




