(第27話)閻魔の女房
もうすぐ冬。
悲しもうが、喜ぼうが、無関心でいようが
季節は進む。
天上界で一人暮らしだから、家に帰ったら
さみしいのは、しゃ〜ない。
コンビニ弁当を手に夜道を歩くと
街灯に照らされた私の影が、私についてくる。
一緒に歩いてくれるのは、影だけか。
閻魔大王との初対面の時、
最後に聞かれた事を思い出す。
「天上界に来て、逢いたい人は
いますか?
例えば、ご両親、祖父母、恩人?」
私は即座に
「いません」と答えた。
私の場合、小さな時から、
お世辞にも、良い家族とは言えなかった。
6歳違いの兄、9歳違いの姉。
家族全員で、一緒にご飯を食べた記憶は
一度も無い。
いつもテレビを前に、一人で食べていた。
それ以上、くわしく話す気にもならない。
だから天上界で再会をしても、辛い記憶を
思い出すだけだから、逢いたくない。
両親、兄弟が、いるだけで幸せ者だよ。
なんて怒られそうだけど。
私の「いません」の返事にも
閻魔大王は、「そうですか」と言っただけ。
天上界に来ても、ホテルの寮で
やはり一人でコンビニ弁当をつついている。
歩きながら、鼻の奥がツンとした。
なぜか、足がエンマ食堂の方へ向いている。
暖簾をくぐり、中に入るが、
お客さんは、まだ誰もいない。
マスターが奥から、顔だけ出して
「いらっしゃい」
右の奥隅に、マスターの奥さんが座っている。
ペコっと挨拶すると、顔をちょっと上下に。
この空間に、閻魔大王さんと奥さんと私。
それを察してくれたのか、
「なんにする」と言ってくれた。
「エエ〜っと、恵比寿ビールで」
「あいよっ。
おつまみは、あ〜、
そのビニール袋の中ので、いいよ」
お見通しである。
恵比寿ビールと酢の物の小鉢を出してくれた。
手酌で、小鉢とコンビニ弁当で
チビチビやりだす。
「マスター、この間はありがとうございました。
気仙沼の秋刀魚、ほんまに美味しかったです」
マスターの目が泳いでいる。
水揚げしたばっかりのサンマみたいに。
閻魔の奥様が「サンマ・・・気仙沼・・・」
私は、ヤバイと直感。
その時、ガラガラっと3人の女性が入ってきた。
「いらっしゃい、久しぶりだね〜元気だった?」
いつも無口なマスターが、
秋刀魚の事をそらすように、饒舌になっている。
3人娘は、時の氏神って感じだな。
3人娘?は、閻魔の奥様の並びに座る。
「マスター、とりあえず恵比寿ビール3本。
それから私、お茶漬けのタラコ。
ミディアムレアで」
「私は、お茶漬けのシャケで」
「私は、お茶漬けの梅で」
何かこの光景、懐かしい。
デジャヴ感満載。野村萬斎アゲイン。
伝説のお茶漬けシスターズ???
不自然に、愛想がよいマスター。
奥の奥さんの顔が・・・・・・・
見たくない。見たくない。
つづく
次回(28話)天上界は、お正月!
をお楽しみに




