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(第26話)まごころ

天上界。

11月下旬ともなれば、

朝晩、かなり冷えてくる。

三途の川の水面みなもから霧が

ふんわり立っている。


天上界に来てから3ヶ月。

少しは、

この世界の景色に溶け込んできた。

まだ朝起きた時なんか、

自分がどこにいるのか、生きているのか

死んでいるのか、混乱することはありますが。


さて、亮ちゃんが奔走してくれたお陰で、

本田さん一家の、気仙沼行きが決まった。

きょうは、

7時から開店前のエンマ食堂を貸し切りに。

事前の打ち合わせを兼ね、本田さんご一家と

いつもの3人組とで懇親会?なんです。


席に着くと、まず亮ちゃんが、

「きょうは、堅苦しい挨拶は、やめにして

 気仙沼に行くことの話しなどをしながら

 楽しいひとときを過ごしましょう」

さすが国家公務員?そつのない挨拶。

 すでに、ビールやウーロン茶なども並び

 準備万端。

和やかに会が始まった。

マスターが、

「何でも頼んでください。出来る物は出来ますが、 出来ない物は出来ませんが」

無口のマスター、精一杯の 

お愛想トーク。

(亮ちゃん)

「マスター、とりあえず いつもの」


「あいよっ」とマスター。


出た〜〜〜〜お約束の

【タコちゃんウインにゃ〜】


6人の前には、タコちゃんが並んでいる。

怖そうな?閻魔大王さんが出してくれる、

可愛いタコちゃんウインにゃ〜。


あまりのギャップとウインにゃ〜の語感に

本田さん一家は、大笑い。


小百合さんが、ウインにゃ〜の誕生由来を

土佐弁で話すモンだから、

益々、場が盛り上がる。


本田さんが、

「天上界に来て、こんなに笑ったのは

 初めてです」

奥さんもウンウンと、うなずいている。

娘さんの真美さん

「楽しい」と小百合さんの方を向き、話している。


するとマスターが、「これ、サービス」と言って

6人の前、

細長い器に、はみ出す長さの

焼き立ての秋刀魚を出してくれた。


みんな、思わず 「お〜〜〜〜」

本田さん「このサンマ、もしかして」


(マスター)

「気仙沼と言えば、これしかないがな。

 けさ、水揚げしたばかりの秋刀魚や。

 漁期も終わりやから、まるまるの大ぶりやな」


奥さんと真美さんが、涙声でマスターに

お礼をしてる。


(小百合さん)

「たまるか〜〜〜

マスター、素敵、素敵、素敵」


すると、マスターが真美さんの前に、

もうひとつ細長い器の秋刀魚を置く。

真美さんが「これは?」という顔をすると、

マスターは

「おばあちゃんの」と言った。

陰膳であろう。


もう真美さんは、両手で顔を押さえ

泣いている。

本田さんも奥さんも泣いている。


マスターが

「陰膳と言うのは、

 故人に供えるという他に、

 本来は、別々に暮らす家族の無事を祈ると

 いう意味があるんですよ」


   みんな震えるぐらい感動してる。


(小百合さん)

「マスター、凄いっちゃ。

 もう少しアテが若ければ・・・・」


(私)

「若ければ? 若ければお嫁さんにしてもらう?」


(小百合さん)

「やだ〜も〜〜〜」と太めの身をよじる。


(マスター)

ささやき声で

「お〜〜、まるまるして脂の乗った、

      戻り鰹やな」


エンマ食堂の夜は、静かに更けていく。


          つづく


次回(第26回)閻魔の女房


       をお楽しみに





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