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(第22話)悲しい記憶!

この日、久しぶりに亮ちゃんと一杯。

場所は、閻魔さんのエンマ食堂。

飲み仲間?の小百合さんも一緒。


連日のホテル勤めも、少しは慣れたし

明日は休みって事で開放感満載。野村萬斎。

エンマ食堂の常連さんとも

だんだん顔馴染みになってきた。


他愛のない話しが一番、酒の肴になる。

常連さんの日常なんかも、おもしろく聞いている。

しかし、地上界の頃の話しをする人は無い。


まあ、みんな何らかの心残りや

後悔の方が多いのか、意識的に避けてるみたい。


私のホテルでの失敗談みたいなんは、

箸休め的に軽くウケる。


となりに座っている亮ちゃんに、

ホテルでの、本田さんエピソードを話しても

「ウン、ウン」ぐらいで反応が薄い。


爆笑話し、感動話しを聞かせようと

私が「本田さんて」と、言いかけると

閻魔?のマスターが「コップ空いてるよ」と

ビールを注いでくれる。

その表情は微笑んでいるが、視線は私を掴んでる。

私の言葉を遮ったように感じた。


気まずい沈黙が、テーブルの上に流れた。

その重い沈黙を破ってくれたのは、

小百合さんだった。

「マスター、タコさんウインにゃ〜」

それを聞いた常連さん

「俺もタコさんウインにゃ〜」


これは、土佐弁が残っている小百合さんが、

語尾に、・・・・にゃ〜 と 話すのを

おもしろがって常連さんが

ウインナーをウインにゃ〜と言ったのが

始まりらしい。

以来、タコさんウインにゃ〜は、

メニューのひとつになったとさ。


店内の空気は、ガラっと変わったが

相変わらず、亮ちゃんは静御前。

ビールを一口飲んだ亮ちゃん、

「もうそろそろ、先輩には話したほうが

 いいかな〜」と軽いため息をつく。

続けて

「実は本田さん、出身は気仙沼。

 地元のホテルで働いていた。

 2011年3月11日午後2時も。

 大きな揺れに見舞われた瞬間、

 家に一人でいる、ばあちゃん(母親)の事や

 保母さんをしている娘さんの事が心配で、

 足の震えが止まらなかったそうです。

 

自宅に電話しても、

娘さんの携帯にかけても繋がらない。

そのうち、

ホテルにゾクゾク避難する人たち。

本田さんは、地元のホテルマンとして

その対応に追われたみたい。

何日か経って

やっと家に帰れたら、家は跡形もなく消失。


保育所に行くと、娘さんは子供達を避難させたあと

「お願いです。

 ばあちゃんを助けに行かせてください」と言って

 家に向かったらしい。


そのあと、どこの避難所に訪ねても、

ばあちゃんも娘さんも、いない」


そこまで一気に話す。

私は言葉も出ない。


マスターが「はい、タコさんウインにゃ〜

みんなにも、 サービスにゃ〜」

私のカウンターにも、ウインにゃ〜が来た。


亮ちゃんは、楊枝でタコをプチっと突いて

口の中。

また小さなため息をつく。


「本田さん、娘さんが高校2年生の時、

 奥さんを、亡くされているんです。

 それから、おばあちゃんが母親代わり。

 娘さんは、短大を出て念願の保母さんに。


 震災の起きた三ヶ月後には、

 本田さんが勤めるホテルで、

 結婚式を挙げるはずでした。 

ジューンブライドです。

 以前、本田さんが

 6月に結婚する花嫁は幸せに

 なれるんだよと、笑っていた娘の顔が

 今でも忘れられないと話してくれました」


悲しすぎる。


タコさんウインにゃ〜に、当たっても

しょうがないが、

楊枝でタコさんをプチプチ突いてみた。


あの東日本大震災で、一瞬にして

家族も、家も、ささやかな希望すら

すべてを失ってしまった本田さん。


なんちゅ〜不幸。


いや、いや、いや、いや

待てよ。


本田さんも地上界で死を迎え、今は天上界にいる。

じゃ〜天上界で家族と再会してるはず?


なのに、エンマ食堂は

お通夜状態。


なんで、なんで、どういう事?


           つづく


次回(23話)遠い約束!

      をお楽しみに



  


 





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