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秘密

作者: ベル

数日前、祖母が亡くなった。


原因は不明。


祖母がいつまで経っても起きてこないので祖父が様子を見に行くと息をしていなかった。


亡くなった祖母は魂が抜けて抜け殻みたいだった。


今日は祖母の物を整理する。


押し入れの中から1冊のアルバムを見つける。


アルバムには古い写真が何枚も貼ってあった。


「このアルバム何?」


「母さんや俺の若い頃のアルバムだ」


祖父がそう答える。


アルバムを見ていると1枚の写真に目が止まる。


その写真には満月の明かりに照らされた若い頃の祖父と祖母が写っている。


「綺麗…」


思わず声が漏れる。


「その写真気に入ったか?」


「うん」


「ならその写真持って帰ってもいいぞ」


「いいの?」


「あぁ…」


祖父が写真を持って帰っても良いと言ってくれたので持って帰った。


私は家に帰って写真を飾る。


それから私は毎日写真に「おはよう」や「いってきます」、「ただいま」などと挨拶するようになった。


そんな生活を続けて数日が経ったある日、今日もいつものように祖母の写真に「おはよう」と挨拶をする。


「お…は…よ…う」


私が挨拶をした後にうっすらとそう聞こえる。


「えっ!?」


驚いた。


でもこの部屋には私しかいない。


私は空耳かと思いそのままにした。


仕事が終わり帰ってくる。


「ただいま」


写真に向かって挨拶をする。


「た…だ…いま」


!?


また聞こえた。


朝よりも少しだけはっきりと聞こえる。


「誰?」


返事は無い。


気味が悪い。


寝る前、祖母の写真におやすみと挨拶をする。


「おやすみ…なさい」


まただ。


今度はかなりはっきり聞こえた。


聞いた事のある声だ。


そこで気づく。


祖母の声だと。


「おばあちゃん?」


恐る恐る写真に向かって声をかけてみる。


「おやすみなさい」


私の呼びかけに反応するかのように写真から声がする。


私はどうしていいか分からなくてその日は寝た。


次の日、私は写真に話しかける事なく仕事に向かった。


「間違ってるぞ」


仕事中も祖母の写真の事が気になってミスをしてしまった。


仕事でミスをしたのが久しぶりすぎて私は落ち込みながら家へ帰った。


「はぁ…」


仕事でミスした事を誰かに聞いてもらいたくて祖母の写真に話しかける。


「今日ね…」


仕事でのミスを話した後、写真のおばあちゃんが私が話した事とまったく同じ事を話す。


「どういうこと?」


それからいろいろ話してみるが祖母は私と同じ事しか喋らない。


「私が話した事しか話せないって事…?」


不思議だ。


でも話したらなんかスッキリした。


それから私は今まで通り祖母の写真に挨拶をし、悩んだり落ち込んだときは祖母の写真に話す。


これが生活の一部になった。


祖母が悩みや落ち込みの答えをくれる訳じゃないけど話せばスッキリする。


だから今日も私は写真の中の祖母に話しかける。


これが私の秘密。


終わり



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