落葉の祝福と、僕のはじまり
この世界には、“祝福”と呼ばれる力がある。誰もが五歳の誕生日に、教会で神から一つだけ授かる。
それは──剣を取れば炎を纏い、言葉を唱えれば雷を呼び、指先ひとつで風を操る……そんな奇跡の力。祝福の内容は千差万別。
戦闘に特化したものから、生産、回復、支援、果ては予知や召喚まで多種多様。だけど、この世界で生きるうえで、
その“祝福”が人生を決める──と言っても、言い過ぎじゃない。強力な祝福を持つ者は、高ランク冒険者、魔法騎士団、王国直属の魔物討伐隊などの誰もが憧れる職に就ける。
一度“当たり”を引けば、あとは努力すらいらない、なんて言われるほどのイージーモードが待っている。逆に──もし、“ハズレ”を引いたら?「なんだ、そりゃ」
「クソザコ」
「お情けギルド枠だな」そんなふうに笑われて、どこへ行ってもまともに扱われない。
なまじ祝福が“あるだけに”、逆に“できない奴”としてのレッテルは、より重たくなる。──そして僕は、その“ハズレ枠”だった。 授かった祝福の名前は、《落葉の舞。……うん、名前だけ聞けばちょっと優雅だし、どこかカッコよくも聞こえる。
けれど、実際の効果はというと──「その辺の葉っぱを、ちょっとだけ舞わせる」。以上。……ほんとに、それだけ。 祝福を授かったその日。
教会でシスターが説明文を読み上げたあと、僕は思わず目を疑った。
「……え?」ってなったのは、たぶん僕だけじゃない。
シスターのほうも、読み上げるときに明らかに一瞬固まってた。その場にいた子どもたちも、保護者たちも、最初はみんな黙ってた。
けれど、数秒後に誰かがくすくすと笑い出したら──もう止まらなかった。「なにそれ、雑草系?」
「魔法とかじゃないの?」
「祝福って、“奇跡の力”じゃなかったっけ?」ざわめきと、哀れみのこもった視線が僕に降り注いでくる。あのとき、泣きそうだった僕をそっと抱きしめてくれたのは母さんだけだった。
あの優しさに、どれだけ救われたことか─今でも忘れられない
それでも、僕は信じてた。「いつか、きっと役に立つときが来る」って。小さいころに読んだ英雄譚の中には、“一見ハズレでも、覚醒したら最強だった”って展開もあったし。それに、僕には──ミリアとの大事な約束があった。