表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/23

俺がピッチャー!?

部活後の熱気が充満した野球部の部室。



ドン。



俺のロッカーまで揺れる。バカ話で盛り上がっていたヤツラ、無言で着替えるヤツも音がした方を見た。



「…何すんだよ。」



ロッカーに投げ飛ばされた咲っちが、ゆっくり起き上がり低く呟いた。



「お前が約束破ったからだ!5年前、お笑い芸人になるって秋良から言っただろ!」



咲枝に掴みかからんとする内田の前に近くにいた部長の西岡、副部長の藤崎が宥めるように立ちはだかった。



「おい。咲枝と内田はバッテリーだろ?ピッチャーを突き飛ばしてどうすんだ?」



「…っ!」



バタバタと内田は部室を出て行った。



「俺はよく分かんねーけど、内っちを一方的に攻めるのは良くないよねー。」



俺は、パタン。とロッカーのドアを閉めた。案の定、部長に睨まれた。口笛を吹きながら、呑気に部室を出ようとする俺の肩を掴んだのは…。



「ちょっと良いか?」


うちの野球部エースピッチャー咲枝秋良だった。


現在。校門を出て、咲枝と二人で歩いている。



「涼太の事かばってくれたの立川だけだったよな。」



「あー。本人の前ではかばってないけどねー。」



「夢は変わる。」



「…大丈夫か?」



隣を見たら。咲枝は真顔だった。まぁ、普段からポーカーフェイスだけど。



「こんなオレでも、一度はお笑い芸人に憧れたんだ。」



「咲っちー。…そんな真っ赤になんなくてもいーよ?」



「う。おかしけりゃ笑えよ。」



「夢を笑う程、まだ荒んでないから。で?言いたい事はソレとは違うでしょー?」



「オレとピッチャー代わってくれ。」



「…はいーーー!?」



声がこれほど裏返るとは思わなかった。これほど伸びるとは思わなかった。



「涼太とはバッテリー組めねぇよ。」



「我が侭王子なのは分かったから、落ち着けー!」



「あんなヤツ嫌いだ!オレの夢応援してくれると思ったのに!ついて来てくれると思ったのに!」



一人暮らしの試験に合格しそうだと浮かれていた俺に、また困難な波が押し寄せていた。


「なんでだよ!」



「いやー。咲枝が何でだよ。冷血キャラ戻って来ーい。」



人の目を気にしない俺が、周りを気にしたのはキセキ的なのかもしれない。



「乗り込むぞ!」



「…だからー。咲っち酔ってる?」



「うおー!」



俺の腕を掴み、引きずる様にして全力疾走した咲枝。住宅地で止まった。



ピンポーン、ピポンピポンピポン…



「咲っちー。やめようねー。」



ガチャ。



「…入れ。」


「ちょっ!俺帰りたいんだけど!」



「…立川も入れ。」



えー。モンチッチなキュートキャラはどこ?実は辛口キャラかよ。母親らしき声で『うるさくするんなら外に行きなよー。』と聞こえた。モンチッチ内田は、分かってると返事した。



黄色一色の部屋。



「…何で俺を挟むんだよ!」



まさか、サンドバックがわりー!?



「秋良が、落語家になりたいなら…ここでやってみろし!」



「みろしって、落語家って…。もー俺窓から帰るよー?」



「じゃあ、座布団持って来い!」



俺スルーされたし。窓を開けようとした瞬間、ヒュン。と何かがとんできた。しかも、思いきり窓ガラス割れた。その音に反応した下にいる内田の母ちゃんが、階段から近づいて来ます。



「やべ。母ちゃん来た。立川早く出ろ!」


二階から俺たち3人で、脱走した。



「アハハ!あん時の立川の真っ青な顔ヤバかったよな!」



「ぷっくく。この世の終わりみたいな!」



「はぁー!?お前らが硬式のボール投げたからだろー!?」



ったく。怒ったり笑ったり大変なヤツラ。俺は振り回されまくって疲れたー。



「ほいじゃーな!俺こっちだからー。」



「立川にはまだまだ付き合ってもらうぜ!」


「だな。ゲーセンとか行くか!」



両肩をガシッ、ガシッと二人に掴まれた。



俺の麗しの午後が!



なんだかんだで、たまには騒ぐのも楽しかった。



「立川が立ち直って良かった。」



「立川の場合、衝撃的な事がねぇと元気出ないからなー。」



二人が元気がない(?)俺を元気づけようとしてくれてたなんて知らずに、振り回されて損したと思った俺だった。



一人暮らしの事で頭がいっぱいでぼんやりしていて、周りに心配をかけてしまっていたようだった。



「そうか。なら良かった。」



報告を受けた微妙に悪役な部長だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ