表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

待ち伏せは似合わない

椿に言われたから?なわけない。



ただ、気が向いた。そんだけ。



俺は朝から竜ちゃんちの門の前で、門柱に持たれていた。



「はよっす!」



「わーびびったー。キヨっちが何でいるのー?」



「その言い方だとびびってないすよね?ロードワークすよ。」



近くに来たキヨから、シャレたローズの香りが漂う。



「朝帰りがロードワークねー?うらやましい限りだよ。」



「それより!一緒にガッコ行きましょ?」



「何そのゆーわくー。つか、腕に捕まるなって。ったくー。キヨっちは変な魅力があるから癖になりそー。」



キィー。



キヨとだへってたら、竜ちゃんちの門の前だとスッカリ忘れてた。門から出てきたのは、ムスッとした竜ちゃんだった。



「…通行の邪魔だ。どけ。」



「言い方ひどくない?ねーキヨっち。」



「はい!」



竜ちゃんは、眉を潜め下唇を噛んだ。そして、俺の肩にわざと体をぶつけてから、通学路に出た。歩くのが速い竜ちゃんが更に、速く歩いた。



「オレらも朝練間に合わないんで、行きましょ。」



「んー。先に行ってて?」



「かと思いました。部長なんで遅れないようにして下さいよ!」



キヨは近道の方向へ軽く走って行った。



「さーてと。行きますかー。」



軽く伸びをして、屈伸をした。そして、久しぶりに本気で走る。



約2分後、だいぶ先まで行ってた竜ちゃんがやっと視界に入った。


ラストスパートだ。信号待ちしてる竜ちゃんを追いかけた。



「竜ちゃん!」



ちょうど歩行者信号が青に変わる。もし、竜ちゃんがこのまま俺を避けたら?急に自信がなくなり俺は下を向いてスピードを落とした。



すると、白と黒のデザインのスニーカーが俺の足の先に見えた。顔を上げると竜ちゃんが罰の悪そうな顔をして立っていた。



「道路を走ると危ないだろうが。」



「挑発しといてよく言うよ。」



「凛が来たの二階の窓から見えてたんだ。どういう顔して会えば良いか分からなくて、後輩と楽しそうな凛を見て思わず意地悪した。」



また信号が赤になる。


「不器用すぎだよ。」


「お互いな。」



心地よい空間。椿を奪いたい俺と、まるで一心同体な竜と一緒にいたい俺が自分の中で闘っていた。でも、決めた。



信号が青に変わる。



「竜ちゃん。椿にちょっかい出してごめん。もう二度と手を出さない。」



「そんな約束していいのか?」



横断歩道を渡る俺たち。竜ちゃんの返事が『お前は手を出すだろ?』と聞こえてしまって、何も言い返せない。


「オレは、守れない約束はしない主義だ。それに、椿が凛に体を許すなら何も言わない。もしも、無理矢理襲ったりしたら…」



ちょうど横を電車が通り過ぎた。でもはっきり聞こえた。



『オマエヲコロス』



自分から手を出さないのは、竜の椿への愛。浮気さえ受け止める気だ。つまり、『お前にはオレを越えられない。』と言う絶対的な自信が伝わってくる。



「へー。今の言葉忘れないでよ。」



諦めるように必死に閉じ込めてた心が、恋敵に開放された。



「凛には素直でいて欲しいんだ。」



「普通好きでいる事許す?」



「生憎だがオレは変わり者だ。」



「まー同類だけどねー?」



こんなにわくわくした朝は、久しぶりだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ