鈴お嬢様と執事はじめ
ドアを開けば、二つの階段の先に見事なスリガラスから差し込む光が屈折して色とりどりに輝く。
まるで教会。
パイプオルガンが聞こえてきそう。
その代わりに、女神様のように美しく笑う少女が僕の目の前にかけおりて来た。
「わたしのたんじょ~びプレゼントのどれいだよね?」
5歳のオレの一目ぼれは、この一言から幕を開けた。
腕をひかれ、連れて来られた場所はお嬢様の部屋。
「わたし、あととりになりたいの。お父様とお母様、息子がほしいらしいから、協力して?」
「僕は、お嬢様の味方です。あと、僕はどれいではなく執事です。」
「執事ならいっぱいいるよ?」
「お嬢様せんようです。」
「ふーん?へ~んなの。じゃあ、ずっといっしょにいてくれる?」
僕は初めて女の子と指切りげんまんした。
凛坊っちゃんの家から10分かけて立川家に戻った。お嬢様をベッドにおろして、しばらく整った顔立ちを眺めた。
シャツのボタンを一つ一つ外して、タイトスカートのファスナーをおろした。ストッキングも脚から解放させてあげる。オレはまるで、ロボットのように冷静に脱がせる。部屋着に着替えさせた。
「はじめ。私の裸見ても興奮しないでしょ?」
「今は、執事ですから。なんとも思いません。」
「出てって!違うわね。出ていきなさい栗林。」
「かしこまりました。」
クッションを投げられ、部屋を出た。
感情なんて、我慢して来たんだ。抱きつきたい衝動なんて何度もあった。押し倒したいなんて、今でも思ってる。さっきの鈴の肌の感触も、この手に残ってるし、頭にはいつも鈴の裸が焼き付いてておかしくなりそうだ。
そんな事、言ったら幻滅されてしまう。
毎晩頭の中で貴方をめちゃくちゃに抱いています。大切な貴方だから、まだ体を繋げたくない。なんてただのキレイゴト。ただ、嫌われたくない。臆病すぎるオレの心が、彼女を求める心を押し潰す。
コンコンコン。
「はじめ入っていい?」
「どうしました?」
ガチャっと開けると、お嬢様が抱きついてきた。
「誤解してるよ。」
「今は、私仕事中ですから。」
引き離そうとしたけどできない。
「はぁ。オレどんだけ我慢してきたと思ってんの?」
「ほんとは我慢なんてできてなかった癖に。」
「コレは生理現象だからしょうがねぇだろ?」
負けず嫌いな鈴が、わざとらしく足を動かしオレのソコに柔らかい太ももをすり付けた。
「朝から、挑発ですかお嬢様?」
「栗林が判断しなさい。」
オレは、悪戯に微笑む鈴の唇を味わった。
「今日のスケジュールはキャンセルしますか?」
カチャカチャ…。
「だーめ。」
不適な笑顔の彼女は、オレより余裕があるみたいで何に対してか分からないけど妬けた。
それからは…。
純朴なオレの口からは話せない。…なんてな。
鈴お嬢様がご丁寧に、オレのチャックとベルトを閉めてくれた。
「今夜が初夜かもね?」
「そうですか?チャンスはいつでもありますから。」
お嬢様の足元にひざまずき、右手のこうにキスをした。
「クスクス。栗林が執事で良かったわ。」
お嬢様もしゃがんで、オレに目線を合わせる。
「ねぇ。あなたとなら結婚も悪くないわね。」
「ほ…マジ!?」
そして半年後、鈴とオレは結婚する事になった。