意地悪は好きな証拠?
無責任だけど頼りになる先輩な立川凛を書こうと思います。謎なところが良いってのも有りますが、変わり者の彼の特徴を著せたら本望です。
いつからこの世にいるんだろ。
《凛は発想力に長けている。》
人と違う発想が欲しかった親父は、俺にひたすら絵を書かせた。小学生になったら、親父の出した課題に沿って作文を書いた。
俺のナミハズルタ発想が、親父の会社に貢献してるって薄々気付いていた。お袋は、俺を仕事に関わらせる事をやめさせ様としていた。子供を使うなんてヒトデナシだと猛反対。
鈴姉は、俺と正反対で、コツコツと英才教育を受けてた。努力しないで気に入られる俺が気にくわなくて、冷たくされたりもした。
俺がぐれなかったのは、お袋がくれた『魔法の帽子』があったから。
《この帽子を被れば、凛は自由に遊べるの。お外ではこれを被って、思いっきり遊びなさい。》
普通のキャップ帽だった。ブランドを好むお袋がくれた『魔法の帽子』は、ノンブランドの無難なキャップ帽。そのおかげで、外が好きになったんだ。
家の中庭の花畑。俺は寝転がり、空を見上げながら風を感じた。泣き出しそうな重苦しい空。俺の家族の様だ。
「凛!またこんなところにいたのね。汚いからお風呂に入りなさい。」
「鈴姉、まだ時間じゃないだろ?消えろ。」
「っ!お父様が書斎に来るようにおっしゃってたわ。」
「そこの花踏むなよ。」
姉はわざと踏んで戻って行った。嫌われてる相手に愛想を振り撒く必要ない。踏まれた花が自分の気持ちと重なる。親父の書斎に向かった。
ノック3回で、親父の声がした。ゆっくり開き戸を開いた。
「まぁ、ソファに座りなさい。」
無言で座ると、机の上には、清閑高校のパンフレットが広げてあった。
「そこの来年から高校に行くんだ。いいな?」
「親父…。まさか、また誰かのコネか?」
拳がふるえる。親父を部屋に入り初めて見上げると、苦々しく笑っていた。
「お前の作文を出したら、あちら側から是非凛が欲しいとの事だ。大学も決めてある。」
「俺の意志は?」
「何を言っている!お前は、すでに私のパートナだ。分かったか?」
「親父!もう俺は」
「聞き入れない。私が正しいのだ。早く部屋に戻って経営学を学べ。」
親父のメガネのレンズが太陽の光で俺に向かって反射して、まるで刃物で切られたような錯覚を覚えた。光までもが親父はもう家族じゃなく、仕事のパートナーだと言っていた。
俺んちに隣接する東道場。今日は休みなのか、従兄弟の竜ちゃんが一人で自主連をしていた。
「覗いてないで、入れよ。」
「さっすが竜ちゃん。んじゃ、おっじゃまーむし。」
「こら、靴を脱げ。」
「はいはーい。」
俺スリッパだけどね。ペッと脱ぎ捨てた。
「揃えろ。」
ササッとウサギちゃんスリッパを揃えた。それからしばらく、竜ちゃんのサンドバックへの打ち込みを見ていた。
「今日はここまでだ。」
「ほい水。」
「おう。」
俺たち以外誰もいない空間は、不思議な感じがした。竜ちゃんが汗を拭いながら、俺を見た。
「今日は鈴さんか?それとも親父さん?」
「親父だよ。高校勝手に決めやがった。」
「オレもだ。」
当然の様に、竜ちゃんが言う。
「ただし、オレの実力で入る事にした。」
「だよなー。俺も言う自信があれば…。」
「甘い。人のせいにする前に自分を見ろ。」
ドキっとした。確かに何処かで、親父の考える将来通りに行けば楽だと思ってる。親父に主張出来ないんじゃなくて、しないだけ。
「そろそろ、お茶の時間だ。凛も茶菓子食べるか?」
「んー。竜ちゃんがお茶たててねー?」
「語尾を伸ばすな。たまにはいいけどな。」
竜ちゃんちの茶菓子は、美味い。花の形とかキレイだし。
「げ。」
竜ちゃんと廊下を歩いていると、ちびっこが現れた。たまに、面倒見が良い竜ちゃんに会いに、近所のガキが遊びに来ている。
「あー!りんだ!」
「りんだ!」
「こらー。しがみつくなってー。竜ちゃん助けてー。」
竜ちゃんは、腕にしがみつかせて持ち上げてる。小1くらいだからな。
「やばー。俺今日用事あったわ。」
俺はダッシュで逃げた。よくあんな集団相手にできるよなー。
ドン!
「きゃ!」
「ごめん。」
サラリとした焦げ茶の髪が揺れて上品な顔立ちが目に飛び込んだ。生まれて初めてこんな美人に会った。俺がぼーっとしてると、立ち上がってあやまってきた。
「椿!大丈夫か?」
竜ちゃんが子分をつれて走って来た。
「えへ。私は大丈夫だよ。それよりこの人が大丈夫かな?」
「俺ー?無傷だし。」
竜ちゃんにめっさ睨まれてんだけど!まさか。
「竜ちゃんの彼女?」
「こっほん、彼女の朱楽 椿だ。コイツは、従兄弟の凛。」
「よろしくね!」
握手しながら、胸の高なりを誤魔化すのに必死になったのは生まれて初めてだった。
「よくこんなブスと付き合えるなー。」
「ブスだってー!」
「ブースー!」
しまった。ガキに連鎖反応した。
「すまん椿。凛は照れ隠しで言ったんだ。」
「あはは!いいよ。竜が私の事好きって言ってくれるなら。ねー?」
女の子の頭を撫でながら、朱楽は笑っていた。
恋?
まさか。
でも、その場にこれ以上いたく無かった。




