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第4話 クリスマスイブ

「ごめん!」

「・・・もういいわよ」

「今度、埋め合わせするから」

「うん。お仕事頑張ってね」


私はそう言って携帯を切り、ため息をついた。


毎年年末は忙しくてバタバタしているのに加え、

転勤前で色々忙しいんだろう。


仕方ない。



クリスマスイブ。

祐樹とデートの約束をしていたけど、どうしても仕事を抜けられないということで、

お流れになってしまった。


私は携帯をバッグにしまうと、お店の中に戻った。

祐樹を待ってる間に少し飲んだカクテルの支払いをしないといけない。


どうせなら、バーに入る前に電話くれればよかったのに。

独身最後のクリスマスで、楽しみにしてたし。

私はなんとか仕事を切り上げて、約束の時間にちゃんと来たのよ!


・・・とまあ、愚痴はあるけど仕事なら仕方ない。

私も社会人として、そこは納得することにした。



結婚したら専業主婦になるから、こうやって毎日祐樹の帰りを1人で待つのかな?

ご飯作って待ってたのに、「外で飲んできた」とか言われて喧嘩するのかな?

で、私が拗ねてベッドで寝てると、祐樹が「ごめんね」と言ってベッドにもぐりこんでくるんだ。


そんなことを妄想してニヤニヤしながら私はバーを出た、

が・・・


街にはジングルベルが鳴り響き、道行くカップルはみんな幸せそうだ。

結婚を控え、私はその中でも一際幸せなはずだったのに、

なんで1人で歩いているんだか。


さっき「納得した」とか言いつつ、全然そんなことのない私。

なんて子供なんだろう。


でもやっぱりこの華やいだ雰囲気から1人取り残されるのは寂しい。


生徒達ですら、今頃恋人と楽しんでいることだろう。



・・・そうだ。

昨日、ようやく全員の進路面談が終わった。

はっきりしない本城君を除き、全員が堀西短大・大学のどの学部に進むのか決まった。


本城君みたいに「どこでもいい」って言う生徒が大半かな、と思ってたけどそんなことはなく、

正直助かった。

みんな家を継ぐことを考え、その為に必要な技術を身につけれる学部をちゃんと選んでいる。

そりゃ生まれた時から跡取り扱いされてれば、当然かもしれないけど。


どうしようかな。

祐樹、今度埋め合わせするって言ってた。

だったら、今のうちに書ける推薦状は書いておこうかしら?

どうせ帰っても暇だしね。



よし。


私は高校へ向かう電車の切符を買った。






最寄駅のK駅から堀西高校までは、歩いて20分ほど。

私はいつもはバスを使うけど、もう9時を回っていて、バスがない。


と、言うことに気づいたのは、K駅に着いてからだった。


・・・ほんと、ついてない。


でもここまで来たんだ。歩こう。



9時なんて早い時間にバスがなくなるのには理由がある。

利用者がいないから。

至ってシンプルな理由だ。



このあたり一帯は、堀西の保有地。

一般住民はいない。


だだっ広い土地の中に、初等部・中等部・高等部・短大・大学の校舎が点在しており、

それぞれに体育館や運動場、図書室、学食なんかを持っている。

入所は自由だけど、ホテル並みの学生寮もある。


後、教師の寄宿舎もあり、遠方に実家がある教師はそこに住んでいる。

そんな教師は当然徒歩通勤だし、それ以外の教師は車通勤だ。

電車で来るのなんて私くらい。


ちなみに生徒は電車なんぞ使わない。

送迎用の自家用車があって当然だ。


だから、普段でもバスはガラガラ。

私以外には、堀西に用事のある業者や、学食で働いている人が利用するぐらい。

終バスが8時台と言うのも頷ける。



あー、もう!寒い!


私は足を速めた。


なんでクリスマスイブにこんな思いしないといけないのよ!

本当は今頃バーで祐樹とまったり飲んでるはずだったのに!


ヤケクソになりながら、ほとんど走るように校門をくぐる。


校門から高等部の校舎までが、また結構あるのよね!


昼間なら綺麗な木々に囲まれたメインの通りだけど、

こう真っ暗だとなんか怖い。

お化けでも出そう。


校舎と運動場以外は林みたいなもんだもんね。

セキュリティはバッチリだけど、お化けにはそんなもん通用しないだろう。



・・・あれ?


私は足を止めた。


今、何か聞こえたような・・・

女の人の叫び声みたいな・・・


一気に血の気が引いた。


どうしよう!

まさか、本当にお化けが!?


そんなバカな、という結論に至るまでに1分ほどかかった。

そしてここは堀西の敷地内。

この時間だし、部外者はいないだろう。


ってことは、生徒か教師の声である可能性が高い。


私は迷った。

警備室に行って、警備員に任せた方がいいだろうか?

でも、ここから警備室はかなり遠い。

もしその間に何かあったら・・・


私は少し悩んだけど、鞄を胸の前で抱きしめると、

思い切って声のした方へ歩き出した。






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