ゆーがっとめーる
私には特別な教室である図書室
そこでひっそりと進む恋の移ろい。
秋から冬になるさまを図書室から眺め、待っている。
ガラリと扉を引いた音で意識が落ち葉から、部屋の中へ舞い戻る。
私は知っていた。
あなたがこの時間に来ることを。
そして、待っていた。
返却BOXにそっと落ちないように本をやしい音にさせるあなたに耳だけ向ける。
あなたは私の作成したオススメのコーナーへいつものように足をステップさせる。
きっと手を伸ばしているのは、冬のオススメ『雪の断章』。
背中であなたを想像しながら返却BOXに落とされた晩秋のオススメだった『 』を取りに向かう。
数冊重なっていた本はを抱えるように持ち上げ、返却記録を付けるPCの脇に一旦置く。
タイミングを測ったようにあなたは図書貸出のためにカウンターの前へやってくる。
急いでいると悟られぬよう、つま先に力を込めて歩いて、対応する。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
端的に期限を業務的に告げ、ありがとうございます。と、礼をする。
何がありがとうなのか、と。色々詰まった一言を思い、また話せなかったな、と。
あなたが部屋から出ていくと、返却された特別な一冊に恐る恐る手を伸ばす。
いつものように奥付けに一枚の紙が折りたたまれているのを見つけ、短く詰まった息を吐く。
吐いたはずの息が、ひゅっと戻り呼吸を忘れ、体温が2度ほど上がった。
恋の小さな物語。