須藤の大活躍
須藤は特殊能力を二つ持った男だった。どんな能力かというと、行く先々で事件に巻き込まれそうになる能力と、天才的な洞察力でそれを回避する能力である。
この日も須藤は、お金持ちの屋敷に招かれて夕食をご馳走になり、一泊する予定だった。だがその屋敷に入った途端に、不穏な空気を察した。
これはこの屋敷の中にいる五、六人が殺されるな。そして犯人は、今ニコニコとおれに話しかけている耕一という男だろう。須藤はいつも通りの手段でいくことにした。
「耕一くん、ぼくはきみのことがとても気に入ったよ。よりいっそう親睦を深めたいので、ちょっと二人きりで話したいな」
「いいですよ。じゃ、あっちの部屋に行きましょう」
「耕一くん、きみは何を企んでいるのだい?いや、とぼけなくていい。調べはついているのだ」
「え、何のことですか?」
なおも耕一はとぼけようとしたが、須藤が見てきたように彼の考えていた殺人計画を話したので仰天して観念したようだ。
「はい、実は両親と兄とその婚約者。弟を殺す計画を立てておりました。その犯人を客として招かれた佐藤という男になすりつけるつもりでした。そうすれば遺産を独り占めにして、刑務所にも入らずにすむので」
「そうか、よく話してくれた。ありがとう。これからは心を入れ替えるのだよ」
毒気の抜かれた耕一は、ぎこちない笑みを浮かべながら夕食をみんなと一緒に食べた。よかった今回も貴重な人命を救うことができたなと、須藤は安堵のため息をもらした。
こんなことが、もうこれで十回目だ。しかし須藤は何だか物足りなさを感じ始めていた。
誰からも感謝をされず、金がもらえることもない。犯人となるはずだった人からは秘かに感謝されているのかもしれないが、そんなことが公にされるはずがない。
おれは損な役回りをしているだけじゃないのか。そう思った須藤は、やり方を変えることにした。
いつものように豪華ホテルに招待された須藤は、犯人とその殺人計画が分かったが知らないフリをした。五人殺された時点で、犯人はかわいい女の子を狙うことが分かっていたので、それを阻止することにした。
須藤の目論見は成功し、犯人を無事捕まえることができ、女の子からも惚れられた。
そればかりか女の子の両親からも感謝され、多額の謝礼金をもらった。警察からも一目置かれるようになった。そして捜査依頼を受けるようになり、事件を解決に導いて金一封をもらえるようになった。
もっと早くこうすればよかったなと、須藤は思った。