呪われた俺
俺の名前はクロム。さて、さっそくで申し訳ないが、身の上の話をさせてほしい。
俺は嘆いていた。というより嘆いている。俺自身の運の悪さを現在進行形で嘆いている。
話は数日前までさかのぼる。
どのような人にも15歳になれば与えられる一つの力を、この国では「ユニークスキル」と呼んだ。
"基本的に"非常に強力なものからちょっと便利なものまで幅広いユニークスキルは、社会的地位などを決定付ける最も大きな要因と言える。
ただ最近ではスキル差別反対!という看板を抱えた群衆が町中を練り歩く姿もよく見られる。
そして先述の通り、ユニークスキルは基本的にメリットとなりうるものになるはずなのだが、稀に持ち主に対し不利益をもたらすと判別されたユニークスキルが存在し、それは「呪い」と呼称される。
ここまでの説明で勘のいい人ならわかったかもしれない。
俺は「呪い」を受けた。
魔道具と呼ばれる超常的な力を持った道具のうちの一つ、「分析パネル」を起動すると俺の忌々しいユニークスキルの名前と詳細情報が映し出される。
『塵も積もれば山となる:呪い保持者としか仲間になることができない』
仲間というのはパーティー、未開拓地に蔓延る化け物を討伐するお仕事に行くときのお仲間さんを指すわけだが。
命を預ける仲間たちな訳だが。
とまあ俺はこんな風な境遇に嘆いているわけだ。
いや、考え直そう。
そうだ、わざわざ化け物を倒しに行くような危険な仕事をしなくていいじゃないか。
例えば…木こりとか農家とか、そういった職業はどうだろう。平和に暮らせそうじゃないか。
…いや、確かあーいう職業はパーティー名義で仲間を雇って護衛に回す必要があるんだ。
自然の中でも化け物は沸いてくるらしいしな。
それじゃあ…工場とか、そういったものはどうだ?
……最近はそういうのに就くやつもみんな相応しいユニークスキルが必要だって聞いたぞ。
じゃあ残る選択肢はサービス業くらいか…?
いやぁ…でもなぁ……収入が少ないんだよなぁ……
大抵の場合化け物退治を兼業してるらしいし…
部屋の中を右往左往しながらうーんうーんと悩む。
なんにしろ戦うしかないな。
そう結論を出した俺はさっそく手続きをしにいくことにした。
命を賭ける仕事なだけあって手続きはとっっっても面倒だったが、それを済ませた後、俺は仲間を探すことにした。
化け物を倒す仕事 ――正式名称はないのでこんな回りくどい言い方になっているが、巷では「冒険者」と呼ばれている―― は、パーティーを組まないとできない制度になっている。死んだときに遺族に連絡がいくようにだそうだ。
俺には完全に必要のない制度だ。
理由は、簡単に言えば孤児だからだ。
幼いころ、冒険者をしていた親が大金を遺して死んでいった。
遺産の量により孤児院に入ることが制度的に許されなかった俺はそのお金で一人暮らしをしていたが、ちょうど最近貯金が尽きかけていたのだ。
さらにある程度遺産を使ってから知ったことだが、俺の親は大金と同時に借金も俺に授けたらしく、借金を早急に返済する必要があった。
そして俺は今から孤児院に行く。
泣きつきに行くわけではない、仲間を探しに行くのだ。
この国では15歳になったら基本働き始める。仕事が見つかった人は大抵の場合孤児院から追い出される。もちろん宿の当てなど関係ない。
冒険者という職業の都合上孤児は多いので、働けるやつらに居場所を提供する暇はないのだろう。
つまり今孤児院に行けば、ちょうど仕事先に迷っている人、つまり呪いの持ち主を見つけられるのではないかという算段だ。