桜の木の下 中編
華がいなくなってから2週間がたった。クラスメイトは特に騒ぎ立てることもなくいつも通りの日常を過ごしている。しかし、俺だけはこの空気の中で違和感しか感じなかった。ビラが配られ始めてからの華の失踪、桜の木の都市伝説 華は桜の木に何かしら関わっている。だが肝心の本人がいない以上問題が進むことはない。とりあえず先生が何か知ってるかもしれない そう思った俺は職員室へと向かった。
「すみませーん」
「お?越谷どうした?落とし物でもしたか?」
挨拶に答えてくれたこの人物は高橋先生、俺のクラス担任で社会の教師をしている。
「最近になって春野が休んだんで何かあったのかって気になったんですよ」
俺がそういうと先生は
「おい何言ってるんだ?春野なんて名前のやつうちのクラスにはいないだろ」
先生の発した言葉に思わず声を上げてしまった。
「は?え?春野ですよ?真ん中あたりの席の春野 華って子ですよ」
「やっぱりうちのクラスで春野はいないぞ 原島がいて次は葉山だろ」
「え?どういうことだ?確かに春野はいたよな」
「何言ってるんだ越谷、怖いこと言わないでくれよ」
「いやあいつは絶対にいた 仮にいなかったら話しかけてくれたあいつは何なんだ」
「いや待てよ哲学の森山先生なら学校に長くいるしなんか知ってるんじゃないのか?」
哲学の先生で森山先生というおじいちゃん先生がいる。確かにその人なら何か知ってそうだ。
「森山先生!!」
「えーと君は?」
「1年2組の越谷 冬樹です 先生は昔のアルバムとか持ってたりしていますか?」
「昔のアルバム?何やら人でも探しているようだね。それも忙しそうに」
「春野 華って子を探しているんです。最近学校に来なくなったんです」
「越谷君 今君は春野 華と口にしたのかい?」
「えぇそうです」
「彼女はね2年前に行方不明になってるんだよ いまだに見つかってない」
「行方…不明・・・?」
「そう春が訪れる前に突然姿を消して警察も捜査をしたけど見つかっていない」
「じゃぁ俺はいったい何と話して何と帰り道を歩いていたんだよ!!」
「この世の中には不思議なことがあるものだ。もしかしたら何かを伝えたくて残っているとかね」
「何かを伝える?」
「ただし、知ろうとするのなら覚悟はしときなさい」
「はい… ありがとうございました。」
俺はそっと職員室を出た。