美人と言われた私の恋
美人と言われたわたしの恋
うぬぼれてるとか、自意識過剰とか言われるかもしれないけど、ごめん。わたし、すごい美人なの。
美人の定義はいろいろあるけど、ごめん。わたし、生まれてからこの年まで誰からもブスだとか言われたこと、ない。
それどころか、「美人だね」「綺麗だね」「可愛いね」って、そればかり言われてきた。
鏡が大好き。スタイルがよくて、美人な私。
かがみよ、かがみ。世界で一番美しいのは、誰?
そんなわたしは、ある男性から告白された。
背の高い、会社経営者の人。
地位も名誉も名声も手に入れて、あとはトロフィーワイフがいればいいって人。
彼にとって、私はうってつけの存在だった。
ほどなくして、私たちは結婚した。
ほどなくして、私たちに子供ができて、無事に生まれた。男の子だった。
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「あーーっ!こんなお話、世界中にごーろごろ、転がっているでしょうよ!」
リサはそう言って、打ち込んだ画面をにらみつける。
リサは恋愛小説家だった。
売れない、小説家。
リサはノートパソコンを閉じて、そばのソファに寝そべって背伸びをする。
あくびをひとつ。
「なあにが、美人の恋愛話、よ。そんなもん、書きたくねーっての!」
今度はソファから起き上がって、冷蔵庫から2Lコーラを出し、棚から取り上げたグラスに注いで、一口飲む。
「なあにが、美人よ。不美人の私にそんなもん、書けませんよーっだ!」
1DKの狭い部屋をうろつき、またソファに、今度は腰かける。
コーラの、しゅわしゅわした舌ざわりをたのしみながら飲む。
リサは編集者から恋愛小説の依頼を受けてしまい、しまったと思っている。
「どうせならミステリーとかにして欲しかった。どうしてこの私が恋愛小説なのよ」
リサは平凡が良く似合う言葉の女である。
勉強はそこそこできたので、そこそこの大学は卒業した。
そして、そこそこの文才があったので、そこそこの出版社の文学賞をとった。
今回は、その受賞作に次ぐ2作目の本の出筆になるのだが。
「恋愛なんかろくにしたことがない、私がいったいどんなラブシーンを書くのよ?雨の中結ばれる二人?崖っぷちに追われて結ばれる二人?楽園でキャッキャウフフ言ってる二人?そんなもの、誰が読むの?読まないわよ!」
リサは混乱していた。
小説家としてなんとか生計をたてるくらい活躍したいのに、早速2作目で詰んでいる。
「いけない。こんなところで立ち止まってちゃ。書くのよ。書くの。書いて書いて、書きまくるのよ」
リサはそうぶつぶつつぶやき、またノートパソコンをあけて、キーを打ち始めた。
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息子がすくすくと成長して、なんの不自由もない生活を送っていると思われるかもしれない。
そんなわたしは、浮気をしている。相手は息子の家庭教師。
息子に自由学習をさせている間が二人の時間。
彼は夫よりもハンサムで、ぼくとつ、としていて真面目なひとだった。
誘ったのは、私の方。その誘いにのってきたのは、彼。
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「なんのこっちゃ、よ!これがベストセラーにでもなると思っているの?ねえ?リサ!」
リサはまたノートパソコンを閉じる。ああああ、とうなって、そばに置いておいた気の抜けかけたコーラを口にした。
リサは思う。わたし、才能がないんじゃ・・・いや、ある!あるあるある!そう思いながらまたソファに寝っ転がってみたり、コーラをのんでみたり、部屋をうろついてみたり。
「書くの!書くのよ!リサ!書けばなんとかなる。小舟のオールをこぐの!小説の世界の大海原も、こいでいるうちに、どこかの大陸にはつくはず!ってか、その前に不審者扱いされて身柄を拘束されそう・・って、私何を言ってるのかしら?」
リサはうなる。書かねばならない。この手で世界を創造しなくてはならない。
そうして、夜はふけていくのだった。リサは仕事があるのでいいかげん、明日に備えて眠りにつかなくてはならない。処女作の印税だけでは食べていけないのが現実だ。
さて、リサの小説は完成するのか?
それはまたどこかでお知らせいたしましょう☆