生まれたばかりの赤ん坊が竜だった
とある国で、王子様が生まれた。
そのため、その国は盛大にお祝いムードになった。
いつの時代でも新しい命の誕生はめでたい事。それに伴って誰もが知る人物の子供の誕生。
国民は沸きに沸きたった。
しかし、王子様は人ではなかった。
なぜか竜に変身できる力を持っていた。
しかし、国民はおおらかだった。
無事に生まれてきただけでももうけものさ。
健康に生きているだけでももうけものさ。
竜になれる赤ん坊の存在を、そのまままるっと受け入れだした。
そんな国の中で育った王子様は、すくすくと成長。
大きな竜の体を活かして、国民の力仕事を手伝ったり。
街道にたびたび出没する、やっかいなならず者を追い払ったりした。
やがて竜は、運命の相手を見つけて結婚。
二人の間に子供が生まれた。
しかしその子供は竜ではなかった。
竜の恩恵になれた国民達は多少がっかりしつつも、
無事に生まれてきてくれた健康な赤ん坊の存在を、おおらかに受け入れたとさ。
だって、
無事に生まれてきただけでももうけものさ。
健康に生きているだけでももうけものさ。