第二話 共同生活
数日間の看病を経て、漸くミハルが動けるようになった。
とはいっても、棒を使ってゆっくりとだが。
取り敢えず切れていた組織が繋がったようだがまだ脆い。
ここからどこまで回復するかは本人次第だろう。
ミハルとは一緒に生活してはいるもののついアルセナの面影を重ねてしまい、あまり顔をあわせられていない。
向こうも迷惑をかけて申し訳ないとばかりに特に話しかけてはこない。
というか無理して手伝おうとしてくる。
一度無理して転んだので部屋に入れて鍵を閉めておいた。
こんなことをしたくはないが、怪我が治らなくては意味がない。
ちなみにこの鍵というのは結界のことを指すので物理的にどうにかなるものではない。
もちろん常に閉じ込めるなんてしていない。
あくまで食事などの準備、片付けの時だけだ。
しばらくすると、ミハルも無理をするのは諦めたのか大人しくなった。
俺はこの生活に気まずさを感じつつも、同時に楽しさを覚えていた。
更に1週間ほど経ち、ミハルは自力で歩けるほどに回復した。
始めの状態を考えればなかなかな回復力だ。
最近は近場の茂みからいろいろと取ってきては料理を作ってくれる。
今までは井戸水にモンスターの干し肉だけの食事だったのに、近頃の食事はモンスターの肉を切ってから実と共に炒めて草を巻いたものや肉と野菜を煮込んだスープ、近くの森で取っておいた実で飲み物まで作ってくれた。
食に関しては感謝してもしきれない。
それほどまでに美味しかった。
今日も材料を取りに行くそうだ。
俺には全部同じに見えるがミハルにはそうではないらしい。
俺も特にすることもないので付いていく。
そもそも怪我人を一人で森に行かせるわけがないのだが。
森に着いた。
まだゆっくりとだが目を輝かせて採取を始める。
どうやら、ミハルがいたところにはあまり生えていなかったものが沢山あるらしい。
キノコ、果実、草など様々なものをどんどん持ってきた籠に入れていく。
籠に半分くらいの植物が入ったその時だった。
ズーン ズーン ズーン
「な、なんですか?」
「この地響き…ギガントゴブリンか?」
ギガントゴブリン。
どちらかと言うと巨人族に近い種族。
その生態は壊し、貪り、犯す。
まさに本能のみで動いているような生き物だ。
「ち、近づいてきてませんか?」
ミハルは速く動けない。
そして歩幅が大きく意外と速いギガントゴブリンからは逃げきれない。
とうとうお互いが見えるところまで来た。
戦うしかない。
剣を抜き、対峙する。
こいつの基本戦闘は力任せな攻撃。
当たるとダメージは大きいが動きは遅く、命中率は低い。
だが、ゴブリン系統のモンスターは命の危機に瀕すると仲間を呼ぶという習性がある。
だから一気に倒さなければならない。
後ろから「私を置いて逃げてください!」という声が聞こえる。
また、アルセナのような娘を死なせる?
絶対にありえない。
何より相手は厄介だが対処をしっかりとすればそこまで強敵でもない。
今度は絶対に守り抜いてみせる!
本日はここまでです。