世界に終わりを告げる少女
「ねぇ、世界を終わらせれるとしたら、どうする?」
少女が僕に問いかける。突然の出来事に、やや苦笑いをしながら答える―――というより、問い返す。
「どうしたの、急に」
「いや、ある日突然世界を自分の好きなタイミングで終わらせれる様になっちゃったらさ。君なら、どうする?」
どうすると言われても、そんな全人類の命がかかわってくる様な事を言われても困る。
「んー……とりあえずは保留かな」
「保留?」
「そう。まだやりたい事とか見たい物とか、たくさんある。言ってみれば未練しかないしね。仮に終わらせるとしても、やりたい事やってからだね」
ふーん、と少女は興味無さ気に呟いてから、考え込むように腕を組んで口をへの字に曲げた。
「でもさ、放っておいても、世界って終わっちゃうんだよ」
少女は、獲り憑かれた様に喋りだす。
「そりゃ、私たちが生きている間はまだ大丈夫かもしれない。けどもう世界は順調に壊れてるんだよ。現在進行形でね。最近の判りやすい例で言うと、やっぱり温暖化かな。あと砂漠化とか。偉そうに言っといて実はあんまり知らないんだけど、調べれば多分もっと色々あると思うよ。
でね、その色々な問題にはほぼ全てに同じ共通点があるんだよ。なんだと思う?
「そう、原因。共通点は『原因が人間』って事なんだよ。人は『人類の進歩のためには致し方なし』って無視してきたけど、それで自分達が住み難くなったら必死で止めようとするの。酷い話だと思わない?」
そこまで一息で喋ってようやく、少女は落ち着いた。
反論なんて大したモノじゃないとしても、合いの手くらいは打たないと獲って喰われてしまいそうな勢いだ。
「でもそれって、間違いに気付いたって見方も出来るだろ? ちゃんと自分達で尻拭いをしてる訳だし」
「……どうだね」
でもね、と少女は言う。
「人がいる限り、同じような間違いはきっと起こるんだよ」
「だったらその度にやり直せば―――」
「無理だよ」
それは。とても、とても冷たい目と、静かな声。
「間違える度に世界の寿命は磨り減っていくの。有限である以上、いつかはそれがゼロになってしまう。そうなったらおしまい。もうやり直せない。
だったら、まだやり直しの効く段階で、一度終わらせた方が良いと思わない?」
諭す様な声。
きっと、この少女は世界を終わらせる事ができて、今まさに終わらせようとしているんだ。なんとなくそう思った。
「……それでも、僕なら、やりたい事をやってから終わらせるかな」
「ふーん……じゃあ、私もそうする」
そう言って、少女は自分の唇と僕の唇を重ね合わせる。
永遠にも似た一瞬が過ぎて、唇が離れる。
少女は名残惜しそうに自分の唇に指を当て、終わりを。
「それじゃ、バイバイ。2順目でも会えると良いね」
まるでテレビの電源が切れた様な。ブラック・アウト。ゲーム・オーバー。
世界が、終わった。
―――コンテニュー? [YES] [NO]
一応、「短編」という事で投稿していますが、実はあと2つほど続いたりします。
詳しいあとがきの様な物は、その2つが書き終わってから、また。
09/09/06 アキヒト