2
本日は早くも合格発表の日でる。津田舞美は自分の受験番号を見つけた。
「舞美、合格してるじゃない。良かったわね」
「あっ、由美姉ちゃん。どうしたの?
「テニス部、舞美も入らない?」
「いちおー、考えとく」
「入る気ないんだ。まあ、いいか。その代わり友だちに宣伝しといてよ」
舞美はこれからの高校生活に水際陽のことを思い出しながら期待に胸をふくらませる。その隣で舞美の同級生が由美を見つけて、
「由美先輩、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「あら、淳君。男前になって。背が伸びたのね。中学に続いてテニス部に入らない? かわいい後輩がここに入学してくれてうれしいわ」
「はい、そのつもりです。ところで宮城先輩は?」
「宮城先輩だなんて、まだ名前呼べてないの? かわいいねえ」
淳の頬は上気して紅くなる。
「晴香は淳君のこと待ってたわよ。早く4月来ないかなーって、たしか今はテニスコートにいたかな。
淳君、見に行きたい?」
「はい、でも宜しいのでしょうか?」
「気にしない、気にしない。じゃあ、行こうか?」
新しい制服に腕を通して今日は気分新たに入学式!
何かいいことありそう。私、津田舞美は主人公であるにもかかわらず目立っていない。今の今まで、これは作者が由美姉ちゃんを気に入っているからだと私はにらんでいたが、どうも違うらしい。
私があこがれている陽さんをどうするのであろう。私はそれが一番気がかりである。同級生の小寺淳は読んできたの通り、宮城晴香先輩と恋愛関係を結んでいる。うらやましい限りである。さてさて私も恋の花を陽さんと咲かせてみたいものである。初恋は実らないというジンクスがあるがその点は大丈夫。
初恋はすでに美しく散ってしまっている。この話はできるかできないかは分からないけど、この時から私の性格が一部変わってしまったことは確かだ。と、そんなことを考えているうちに高校についた。
「舞美ちゃん、入学おめでとう」と、あの憧れの人が胸に花を付けてくれる。受付のようだ。
「陽さん、ありがとうございます! これからよろしくお願いします」
「じゃあ、クラブの宣伝でもしておきましょうか、手芸部に入らない?」
「えっ、手芸部? パントマイム部でなくて?」
「うん、手芸部」と驚く舞美に陽は答える。
そういえば、去年の文化祭の時、劇でたしか、由美姫の春の宴に着ていく若草色の服をパントマイムだけどリアルに縫っているように見えた。それもすごく器用だったような。
うーん、いいことあったと思ってたら、今度は難しいことが、私、裁縫ってまったく駄目なのよね。
陽さんは絶対に運動部か演劇部だと思ってたから同じ部に入ろうって思ってたのに。
「舞美ちゃん、どうしたの? ぼーっとして」
「いえ、桜がきれいだなって思って」とごまかす。
「俺もね、去年の入学式の時 桜がきれいだなって、思って眺めてた気がする。
やっぱろ入学式の時には桜って必要不可欠だよね!」
「はい。私の中学校は梅の木はあるのに 桜の木がなかったんですよ。だから、本当にうれしいです!」
陽さんとおしゃべりできてうれしい。
新しい教室に、新しいクラスメート、新しい制服、何もかも新しいものづくしでなんだかうれしい。前の席の子が話しかけてきた。
「わたし田中真琴、あなたは?」
「津田舞美です。よろしく」
真琴との話ははずんだ。一緒にクラブ見学に行くことになった。体育館ではバスケ部が練習をしていた。剣道場からは気合の入った声が聞こえる。グランドはサッカー部とラグビー部がいた。校舎に入り、美術室の前を通ると美術部と漫画研究部の宣伝をしていた。
被服室には、陽さんがいた。
「舞美ちゃん、来てくれたんだ。ぜひ見学して行ってよ」
「知ってる人?」と真琴が聞く。
「うん、去年お姉ちゃんのクラスメート。文化祭の時お世話になって」
「ここの文化祭に来てたんだ。私も去年来たよ。たしか、『秋でも桜姫』っていう劇がすごく面白かった。もしかしてこの人は黒曜石?」
「当たり! 来てくれてたんだ。水際陽です。手芸部をよろしくお願いします」
そこには、去年の文化祭で見た若草色のドレスも飾られていた。それからビーズで作った腕輪や指輪などがあり、壁掛け、人形、クッション、それから女の子の憧れウエディングドレスまであった。