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 ここは、俺たちで言うところの、異世界って奴だそうだ…。

「流行には疎いと思っていたんだがなぁ~」

 頭抱えながら、魔王の後を付いて歩いている。

「何か言ったか?ユーマ」

 俺の前を、ふよふよと浮きながら進んでいる。多分、地面に付いたら身長は、おれの胸当たりまでしか無いだろう。

「何でも、無いっス」

 なんでも、ここはダリス共和国という国で、この城は、昔、王国だった頃のお城だったんだそうだ。今は、街の中心地が変わり、ここは荒れ果てていつしか魔王(幼女)が住み着いてしまったと……。

 異世界って、王国ばかりだと思ったら、そういう風に移り変わっていく国もあるんだなぁって思う。まぁ、俺には異世界でも、ここの人たちにはこれが現実世界で、ちゃんと生活してるんだものな。

「ここだ。ここ」

 扉を開ける。

 部屋の中を見ると、ちゃんと絨毯が敷いてあって、暖炉もある。ベッドやテーブル、ソファーまで…。

「ここ。ユーマの部屋だ。気に入ったか?」

 俺んちよりよっぽど、豪華だ。

「クローゼットの中には服も入れておいたぞ」

 服……俺んちから、持ってきてる。

 いや…なんで、警備会社の制服みたいな物まで。着らんぞ、俺は。

「いいのか?俺、使用人だろ?」

「かまわぬ。我のせいで、ここに来てしまったのに、我を怖がらず、パニックにもならず……。ちゃんと話をしようとしてくれたのは、そなたが初めてなのだ」

 パニック…忘れてた。俺、異世界に来てたんだっけ。

「忘れてたわ。俺、帰れるのか?」

「……帰りたいのか?」

 しょぼんとして見える。本当にこいつ魔王なのか?

「確認…だ。帰れるのか?」

「無理だと思う。ユーマは、我に名前教えたから」

「は?」

「名前は契約。魔王ではなくても、魔物に名前知られたら、その者に縛られる。

 だから、ユーマは帰れない」

 魔王がニマッと笑った。

 なんですと?

 魔王の手から紫色の光が放たれる。攻撃かと思って身構えたのだが、全身を包んで…なにか、暖かさを感じたと思ったら、(まと)うような感じになって消えた。

「魔王?」

 何か釈然としないといった顔で、魔王が俺を見てる。

「いや…。そなたに護りを与えた。ここの警備をやってもらう以上、人間の脆い身体のままだと、困るだろうからな」

 なんか、態度が変だ。

「俺は…何をすれば良いんだ?」

「とりあえず…城内を巡回してくれてたら良い。自宅警備でやとったのだ」

 ちゃんと、こっちを見ずに言う。さっきまでは、あんなにキラキラとした目で嬉しそうにしゃべっていたのに。

「おい。魔王、大丈夫か?」

 思わず、腕を掴んだ。

「そなたは、よく魔王を掴むな…。

 夕飯になったら呼ぶから、今日はゆっくりしててくれなのだ」

 スルッと俺の手を外し、また、ふよふよと飛んで移動していくのだった。

 仕事は、明日からか…。

 しかし、何だったんだろうな。アレは…。


 まぁ、いいか。快適だし。

 俺は、ベッドの上で転がって、頭の上で腕を組む。

 どうせ、向こうの世界だって一人だった。

 家族はいたけれど、関係は希薄だったし、仕事もリストラで首になったばかりだったし…。

 はぁ、って溜息をついた。

 なんなんだろうな。俺の人生って。

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