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よろしくお願いします。

 あ~…城?

 城…だよなぁ~、なんか西洋の城なんてTVでしか見たこと無いけど。最近維持できないって、欧州の貴族とかが売り出してる。

 安いからって、うっかり買ってしまったら、やれ維持費払えだの、法律上、改装出来無いだの言ってくる、詐欺まがいのアレ。

 しっかし、なんで俺、ここにいるんだ?


 気が付いたら、俺はうす暗い石造りの建物の中にいた。

 しかも、なんか薄ら寒い。まぁ、直前まで部屋で求人のチラシ見てたし、Tシャツとジーンズだけしか着てないからな。

 天井にコウモリ張り付いてるし。

「どこから入ってきたのだ」

 なんだか、かん高い声で怒鳴られた。

「あ~?」

 振り向くと…そこに、変な生き物がいた。

 なんだこれ?幼女?

 なんかやたら露出度の高い(残念なことに胸はぺったんだ)紫の服を着て、同じ色の手袋はめて、小悪魔みたいな…あれ、角とか羽根とかしっぽとか…本物なのか?

 ふよふよと飛んできたので、思わずしっぽを掴んでみた。

「ぎゃ~。何をするのだ。はなせ~」

 あ…ジタバタしてる。なんだ?この生き物。

「ここ、どこ?」

 一応、訊いてみたのだが。

 小悪魔らしき生き物は、さっきまで掴まれてたしっぽを、自分で撫でてる。

()()は、どこだ?」

 少し大きな声で、俺は訊いた。

「大きな声を出さぬとも、聞こえてるのだ」

 と言って、居住まいを正し…目の前の小悪魔は、胸を張って言った。

「ここは、魔王城なのだ。我が城へよく来たな」

「我が城?」

「そのチラシを見てきたのだろう?」

 紫の瞳をキラキラさせて問いかけられた。

 チラシ?そういえば、手に持ったままだった。そこには、こう書いてある。

『自宅を警備するだけの、かんたんなお仕事です』

 それだけで、他は…連絡先ですら、書いてない。

 見てただけで、就職するとも、なんとも言ってないのだが……。

「そなたは、何という名だ?」

「人の名前を訊くときは、まず自分から名乗れって言われなかったか?」

「我は魔王だ」

 エッヘンって感じで、魔王は言う。

()()()()?」

 再度訊くと、なぜか魔王は俺から目を反らし、しっぽをふよふよ揺らし始める。

「……忘れた」

 俺は、思わずジト目になった。 普通、自分の名前、忘れるか?

「し…しかたないだろう?

 もう、何百年も誰も我が名を呼ぶものも、いなかったのだから」

 少し、しょげた感じがした。寂しかったのか?

「俺は、悠真(ゆうま)橋本(はしもと)悠真(ゆうま)てんだ」

「ユーマか。良い名じゃのう」

 なんか、可愛いな。キラキラした目で嬉しそうにされると……。

「…で?()()…どこ?」

 情に流される前に…と、本日、何度目かの同じ質問を繰り返した。

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