変わらずずっと
卒業式を終えた教室は、別れを惜しむ声や、涙を流すクラスメイトで騒がしかった。そんなクラスメイトの様子をぼんやり横目で見ながら、私はさっさと帰る準備を始める。忘れ物があってはめんどくさい。机やロッカーを念入りに確認しなくては。
カバンを背負って、未だ騒がしい教室を後にする。靴箱にいつも通り上履きを入れそうになって、「ああ、これも持ち帰らなければ」とハッとする。また荷物が増えたことに少しだけうんざりするが、置いていくわけにもいかないから仕方ない。
校門を出て、いつもの道をいつもより重い荷物を持って進んでいく。たまに道で会った友人と帰ることもあったが、今日は同じ学年の子はみられない。まだみんな教室にいるのだろうか。ふと教室の様子が思い出される。
どうして彼ら、彼女らはあんなにもすぐ別れを受け入れられるのだろう。
卒業式と名のついた、なんでもない今日という日をきっかけとして、明日から違う日々が始まるなんてどうして簡単に信じられるのだろう。
私だって頭では今日が最後の日であることを分かっている。だからこそこうして重い荷物を苦労して持ち帰っているのだから。
でも、心が追いついていないのだ。今の私は、明日も変わらない日々が続くとどこかで信じているような気がしてならない。だからこそ、みんなと一緒になって泣くことも、惜しむこともできない。悲しむべき場面でいつも通りに振る舞う私をかつて友人は薄情だと言った。でも、私は本当に薄情なのだろうか。
あの角を曲がればもうすぐ我が家だ。お母さんがきっと今頃、私の卒業祝いとして豪華な夕食を準備しているころだろう。いつも通りでいいのに。私はただ、なんでもない今日を生きているだけなのに。
置いていかれたような気持ちになって、少しだけ寂しくなった。