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7話 歪んだ過去のこと 終編

終わりです。

ちょっと無理やり詰めた感が溢れてるけど、

すみません。

これも大目に見て欲しいです。

何度か、『痛いの』が続いた。

殴る。

蹴る。

空き缶、

空き瓶、

投げる。

殴りつける。


恐怖ばかりがぎりぎりと心を締め付け、

悲鳴を上げる。

アザになり、アザになり。

紫、青、赤、青紫、赤紫、色々。

血の色。

内出血の色。

白い肌に、たくさんの存在感。

あおじろい。

気色悪い。

冷たい。


間が悪いなぁ、と確かに千尋は思ったのだ。

ちょうど夏。初夏の頃。

すると、見えてしまう。

傷。

アザ。

それらの、忌々しいのが。

半袖から覗いた腕には、無数の痕がある。

・・・足にも。


見られたとき、ひとりの男子が嘲笑うみたく、

「お前のソレって、なんかおっかねぇな?」

と吐き捨てて行った。

ソレとは、ドレ?

たくさんだから分かんないし、分かりたくもない。

けど分かってた。

ソレとは、全部を指してソレなんだと。

女子は嘲笑う気配も見せず、

「うわ、どうしたの。転んだの、まさか?」

ただ、心配してくれた。

お陰でわたしには『嘘』ができた。


「実はね、昨日転んでさ、ほんっと痛かったんだよ?」


笑いながら言うと、信じてくれる。

そんな自分を滑稽だと思った。

けどその反面、ほっとした。

どうにか笑って過ごせる場所ができた、と。



何処かのわたしはこう言う。

―逃げでしかないよ?


分かってる。


―分かってないからこうして知らせてあげてる。


あなたはじゃあ、分かるの?


―分かってるわ、受け入れて、此処に居るの。


わたしもソレ。


―あなたは違うよ。受け入れるのが、寂しいから。


なんで、あなたは、わたしなんでしょう?


―あなたの中のわたしと、あなたの中のあなたが同じだと、いけないんだよ。


意味が解らない。

ただ単に、言葉遊びに陥っていった。

もうひとりの自分は悲しい顔をして、すぅっと溶けていく。

なんでそんな顔するの。

逃げちゃいけない?

逃げさせてよ。

お願い・・・。


逃げる。

笑う。

普通に過ごす。

笑い。

隠し。


そうして、過ごしていく。

増えただの、増えてないだのは簡単に分かるものでも無いから誤魔化しが効く。

けれど。

キョウ、カミガタチガウネ。ドーシタノ?

ソレガネ、キイテヨ。

ソノストラップカワイイネ。

キノウサァ。

アシタサァ。

キョウサァ。

けれど、不意に味が無くなった。

毒みたいなものが回ってきたみたい。

突然白っぽくなった世界。

白む視界がわずらわしい。

なんで。

なんで?

何故?

どうして?

why?



逃げちゃ、

駄目だったって言うの?


泣いた。

いくら殴られても、泣けなかったのに。

白んだ世界を理解した途端に、喉の奥がびりびりと痛んだ。

目尻が熱くなり、白んだ視界がさらにぼんやりする。

ただ邪魔なほどあふれた涙が頬を濡らす。


どうすれば良い?

誰かに、解って欲しい。

全部理解して、抱きしめて欲しい。

誰かに、大丈夫って言って貰いたい。

寂しい。

哀しい。

しんどい。


「そう・・・。」

母さんが退院して、家に帰ってきたとき。

母さんは全て受け入れようとするような言い方して、立ちすくしていた。

あの人は家に居なかった。

荷物はそのまま。

ひとつだけ、手紙が置かれていた。

「ごめん。裏切られる前に、先に消えます。」

たったそれだけ、残して。

帰って来ない。


内心、とてもほっとした。


翌々日。

なんでもないような顔して、学校に行く。

味気の無さ。

色味の無さ。

面白みの無さ。

そんなもの抱えながら、また笑う。

もう、居ても居なくても変わらないみたいだった。


「ぁ、」

そんなとき。

不意にわたしに向けられた声が聞こえた。

遠くから、哀しそうな目だった。

わたしももしかして、そんな顔してる?

だから、気になったの?


けれどその後、なにも話すことはしなかった。

きっと、わたしにも彼にも、これで十分だった。

心がすぅっと軽くなった。


次の日にも、また目が合う。

彼は二度目だからか、とっても驚いた顔。

千尋も驚いた。

普通は一度目に驚くだろうに、けど。

彼の、彼女の変化に互いに驚いていたみたいな。

彼はにこっと笑った。

可愛くて、人懐っこいような笑顔で。

笑えるんじゃない。

千尋もつられて笑い返すと、それで通信は終わり。



そんなことから何ヶ月も経ってから話をするようになった。

ただの出会いだ。

なにも特別なことは無くて、普通の出会い。

だからこそ、大丈夫になれた。

ふたりだから支えあえるようになったんじゃないかと今、思える。

そして今なら、なんであの人が殴ったのか、泣いたのか、出て行ったのか、分かる。

きっと、寂しかったから。

置いてかれるのが怖かったから。

だからわたしがあの頃に戻れるのなら、ちゃんと受け止めてあげないといけないんだろう。

けれどそうするには、まだ勇気が足りない。

頭で分かっても、頭は解ってない。

きっと手は震えてしまうと思う。

だから、と付け加えて。

だから、青嗣くんに助けてもらおう。


そう、思える。

どうやら、闇は確実に小さくなっていた。









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