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なんだよ…、テメェよ…

最終回です!3話一気に書いて投稿しました!

読んでくれてありがとう♪

 俺はトイレに行きたくなってきた。ここでトイレに行ったら今までのすべてがオジャンになってしまう。


 「テメェ、コラ、帰る。バイバイで、ララバイ」と俺は出口に向かった。


 「やった! 初めてのタイマン、俺の勝ちだな」と高3の不良は泣きながら言っていた。


 俺はその言葉にカチンときて立ち止まった。


 「テメェよー、今、なんつった?」と俺は高3の不良の元に戻ってメンチを切りまくった。


 「俺の勝ちだっつたんだよおう」と高3の不良は目を擦りながら泣き声で言った。


 「テメェ、ちょっとトイレに来いよ」と俺は高3の不良の腕を引っ張りながら言った。高3の不良は抵抗し出した。

 さっきは、あれほど『テメェ、トイレに来いよ』と激しいまでの情熱で俺に言っていたのに。何がどうしたんだ? 高3の不良?


 「嫌なら俺はトイレに行くからな。テメェ、コラ。この野郎」と俺は競歩並みのスピードでトイレに向かった。


 トイレは汚れていた。壁には卑猥な落書きが書き込まれていた。トイレットペーパーが補充されていなくて芯のみが散乱していた。 幸いポケットティッシュを5つ持参していた。この時期は花粉症が大変で常に携帯をしていた。


 俺は洋式の便所に入ってズボンを下ろそうとしたらチャックが壊れて下げれない事に気付いた。これは困ったことになった。頭の中で4月なのに除夜の鐘が鳴り響く。

 俺は鞄から、不良の武器で必需品なヌンチャクと警棒を取り出して、チャックの不具合をこの道具を使って直せるものかどうかを考えてみた。

 確実に直せない。こうなったらズボンを力いっぱい下げるしかない。俺は半分腰を浮かせて勢いよくズボン下げた。



 ビリリリッ ビリッ



 やってしまった…。おまけに力を入れて踏ん張ったので、ウンティ君がベッタリパンツに漏れた。学生服は半端なく高い。お母さんにマジで怒られる。


 ウンティ君が生温かい。俺はパンツを脱いでポケットティッシュでウンティ君を取り除き、洗面所に置いてあるローズマリーの石鹸で洗った。

 パンツを乾燥機に掛けると、なんとか全てが上手くいきそうに思えてきた。

 俺は冷や汗を流して落書きを見つめた。


「困ったら電話してちょ。あたいが飛んでいってね、助けてあげるからね! 何でも頼んでよ! 番号はね×××―××××―××××でーす・歩美(あゆみ)」というイタズラ書きに目が止まった。


 藁をも掴むなんたらかんたらとはこの事だ。

 本来なら「小利を見れば則ち大事に成らず」の心境でいる俺だが、この時ばかりはパニクっていた。

 掛けるしかない!



 プルルル


 プルルル


 プルルル


 「はい」と電話の主の声が電波のせいか小さくて雑音混じりで聞こえてきた。


 「歩美さん?」と俺は明るい声を出して怪しまれないように言った。


 「そうですが、どちら様ですか?」


 「助けに来てくれる?」


 「はっ?」


 「今、読んだんですよ」


 「何を?」


 「助けに行く、っていう落書きなんですけどね」


 「知らないですよ。誰なんです? 切りますよ〜」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って。トイレから、こんにちは!!」


 「はっ?」


「切らないでね。今、トイレで用を足そうとしたらチャックが壊れて下げれなくなったんですよ」


 「はあ」


 「無理にズボンを下げたらですね、思いっきり破れてしまいまして、大きく裂けてしまったんです」


 「はあ」


 「で、で、ですね、代わりにズボンを持ってきてくれないかと思いまして、落書きに掛けた訳なんです」


 「誰が書いたか知りませんが、私の電話番号が落書きされているのは凄く不快です。今すぐに消してくれませんか?」


 「判りました。なんとか消してみます」



 「……。何処のトイレなんですか?」


 「街にあるゲームセンター『ジミー』の1階のトイレにいます」


 「そうですが、判りました。代わりの者に持って行かせますので、しばらく待っていてください。ジャージの下でも構いませんか? 大丈夫ですか?」


「ありがとうございます! 助かります!」

 「15分くらい待っていてください。着いたら、こちらから貴方に電話を掛けますので、名前と電話番号を教えてもらえますか?」


 「悠平です。×××―××××ー××××です」



 「では、折り返し掛けますので、待っていてくださいね」


 「どうもありがとうございます」


 電話切ってホッとした俺はフルチンだったことに気付いた。鏡の中の俺が他人に見えた。


 乾いたパンツを履いて脱いだズボンを確認するために洋式の個室に向かった。 無惨に破けたズボンはセミの脱け殻みたいに頼りなかった。


 俺はパンツを穿いた姿でトイレの中を歩いた。


 歩美さんは素晴らしい方だ。見ず知らずの不良に優しい応対をしてくれたのだから、約束通りに落書きを消してあげよう。俺はローズマリーの石鹸を左手に持ち、水道のじゃ口を回して、右手で水を掬うと壁に向かって掛け出した。

ローズマリーの石鹸を壁に強く擦り付けた。




 15分後。




 壁の落書きが気持ちよく綺麗に取れた。


 電話が鳴った。


 「悠平さんですか?」


 「はい」


 「今、弟と待ち合わせをしてジミーに来ましたよ。落書きの確認をするためにです」



 「綺麗にしました」



 「私は男子トイレには入る事が出来ません。私は弟のジャージを持参しましたので、今から弟本人に持たせます。スマホで壁の写真を撮らせますので宜しくお願い致します」と歩美さんはお姉さんらしく決断力のある声で俺に言った。



 「はい、分かりました。どうもありがとうございました」と俺は感謝の気持ちを込めて丁寧にお礼を言った。


 俺はトイレの窓を少し開けて、ウンティ君の臭いを取ることにした。


 扉の開く音がしたので振り向くと、さっきの高3の不良が紙袋を下げて入ってきた。

 俺は慌てて顔を横に背けた。

 高3の不良は俺に気付くことなく、壁に向かいスマホを連写機能の設定にしてから写真を撮りまくった。


 高3の不良は無言で紙袋を洗面所の横にある台の上に置いた。


 「失礼しまーす」と高3の不良は言ってトイレを出ていった。


 電話が鳴った。


 「弟が行きましたか?」


 「はい」



 「愛想の無い弟でしたでしょう?」



 「はあ」


 「シャイな子なんです。不良に憧れて格好を付けていますけど、気が弱くて」


 「はあ」


 「まだ、高校1年生になったばかりで、友達でもいたら良いのですが、シャイな性格が災いして中々見つけられないんですよ」


 「そうなんですか…、弟さんにありがとうございますとお伝え下さい」



 「分かりました。伝えます。落書きを消してくれてどうもありがとうございました」


「いえいえ、こちらこそ」




おわり


ありがとうございました♪また、何処かで…。

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