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詩集⑥

願い

作者: 桜ノ夜月

ここ最近は、嫌になるくらいに息苦しかった。



外が、人が、ネットが、言葉が、心をじくじくと締め付けるような気がした。



それでも、嫌になるくらいに、愛さずには居られなかった。



言葉を綴らずには居られなかったし、誰かと話したいことは、後から後から沢山溢れてきた。


暖かくなりだした季節を感じることも楽しかったし、沢山つまらないことで喧嘩をした。少しだけ、そんな日常が楽しかった。



だけど、比例するように、同じくらい苦しかった。



馬鹿にされることがあった。酷いことも、平気で言われた。だけど、助けてくれる人なんて居なかった。



「振り返った先に、本当は誰も居ないんじゃないか」なんて考え出したら、どうしようもなく、苦しかった。



だから、最近は、上手な「さよなら」の伝え方ばかり探してしまう。



「何も言わずに、サプライズのように居なくなってしまおうか」とか、「いっそのこと大々的に居なくなってしまおうか」とか。



つまらないことばかり、ぐるぐると考えながら眠りにつく。



あの頃はきっと、醒めることのない、優しい夢を見ていた。



姉上が居て、にぃ様が居て、その他にもずっともっと、沢山の優しい人が、此処で言葉を綴って、息をして居て。


泣きたくなるくらい、毎日が楽しくて、幸せで堪らなかった。


言葉を綴って、息をして、「誰かの言葉」に、「感想(ことば)」を返した。そんな日々が、どうしようもなく、楽しかった。


だけど、いつの間にか、皆居なくなってしまって。


その時になって初めて、繋がりが酷く細くて、脆いものだと知った。居なくなる人を繋ぎ止めて居られるほど、私は強く無かった。


それから沢山、宛の無い言葉を綴った。誰にも見せられないような、酷く醜くて、弱い言葉も沢山綴った。


「悲しい気持ちになった」と伝えられた時、自分に言葉を綴る価値なんて無いのかもしれないと思った。だけど、誰かにそれを慰めて欲しいとは思わなかった。


大好きな彼女が、今でもあの優しい言葉を綴ってくれているのかは解らない。


本当は、もう誰も、()(たし)の言葉になんて、耳を傾けてはくれていないかもしれない。


それでも綴った言葉は、きっと自分のために綴った言葉だ。泣き虫で、弱くて、狡くて、汚い、そんな自分のために綴った言葉。


「言葉を道具にするなんて可哀想だ」と言われた。そうかもしれないと思った。


それでも、誰かに知っていて欲しかった。


私は、大好きだった。此処も、言葉も、此処で言葉を綴る人も。


それぞれが全く違った価値観で、様々な物語を綴って、沢山の言葉を綴った。沢山の色に溢れて、沢山の言葉に溢れるこの場所が、どうしようもなく愛しかった。


いつか居なくなってしまってしまう日に、誰かがほんの一瞬でも、私の言葉を愛してくれたら、なんて夢を見ていた。


言葉を綴り始めた理由が、どんな理由だったのか、今ではもう思い出せない。


初めて綴った言葉の事も、今では曖昧で思い出せない。


だけど、「何かを伝えたかった」と言うことだけは、ずっとずっと、変わっていないのだ。


私は「()説家()になろう」が、どうしようもなく好きだった。


ここで言葉を綴ることが、ここで綴られる沢山の言葉が、愛しかった。


だけど、振り返った先に誰も居ないんじゃないか、とか。本当は自分の言葉なんて、とか、そんなことばかり考える度に、言葉が、此処が、少しだけ怖かった。



愛しいのに、暖かい場所なのに、同じくらいに怖かった。



嗚呼、どうか。綴ってきた言葉達が、物語が、誰かの心の奥で、そっと小さく息づいていますように。


いつか振り返った先に、未だ見ぬ「誰か」が立っていてくれますように。


自分の言葉を、愛せますように。


上手な「さよなら」が、いつか、「ありがとう」に変わりますように。


そんなことを思いながら、私は今日も、小さく丸まって、暗闇の中で寝息をたてる。



暗闇を漂うこの言葉が、いつか誰かに届きますようにと願いながら。



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― 新着の感想 ―
[一言] 思えば随分と人が減ってしまったような。自分と交流のあった方の多くはもうほとんどなろうでは活動してませんし、そう感じるのも無理はないのでしょうけど。 かくいう自分も昔は毎日のように読み漁っては…
[一言] お久しぶりです。 他の誰かはどうだが知りませんが、私は今もここで細々とだけど活動続けていますよ。 だからこうして振り返ったあなたの言葉に返しています。 私はあなたから戴いたレビューが嬉しくて…
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