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ファーストコンタクト

昼休みになり、舞と明は昼食の誘いを断って俺たちと屋上にやってくる。

持ってきた弁当を広げながら、明はため息をついた。

「ここの学校ってなんなの?お父さんに紹介してほしいって人ばかり」

「なんかやたらと友達になってほしいって迫ってきて、つかれる。しかも自己紹介がどこどこの会社の息子だとか、俺の親父は何々の偉い人なんだとか、親の自慢ばかりでうんざり」

舞も嫌そうに顔をしかめている。

「俺は他の学校のことを知らないけど、上流階級のおぼっちゃんお嬢様なんてあんなもんだろ?」

俺がそういうと、猛反発を食らった。

「あんなのと一緒にしないでよ!」

「前の女子高だったときは、どこの家の子とかあんまり気にすることはなかったな。みんな普通に仲良くしていた。家とか会社とか気にすることなかったのに」

どうやら前の学校の生徒たちはもう少し上品だったらしい。まあここはある意味上流階級の子女の中でも吹き溜まりがあつまる学校だからなぁ。相手を利用できるかどうかでしかみないんだろう。

「カミよ……どうして舞さんと明さんは転校してきたばかりなのに、あんなに人気が出るのですか?」

「そりゃそうだろ。この容姿に日本最大のIT企業のお嬢様だ。なんとかしてつながりを持ちたいとおもっているんだろうよ」

俺が説明してやっても、ダニエルは不思議そうに首をかしげている。

「容姿?カミのほうが美しいと思いますが」

「お前たちダニ人の美的感覚は俺が基準になっているからな。普通の人間からみたら、俺は平凡な容姿をしているんだよ」

俺はちょっと苦笑して答えてやった。

「それに大企業のお嬢様だから人気がでるってどういうことでしょう?この地球の非効率的な経済活動とやらも学びましたが、要は企業とは金銭というものを集めることを目的とする組織ですよね。確かに生産活動を担っていますが、それが存在するから物資の公平な分配が阻害され貧富の差ができるという負の側面もあるとおもうのですが」

「人間の未熟な精神だと、『所有欲』という感情を刺激しないと生産活動ができないからな。理想をいえばすべての生産設備を共有化させる共産主義が効率的な生産物の分配に最適なんだろうが、現実には無理だ。だから金銭=多くの物と交換できるチケットを多く持つ企業の所有者が力と人望をもつようになるのさ」

俺が説明してやっても、ダニエルは首をかしげていた。

「つまり、人間とは所有物を多く持つ者に従うと?」

「それだけじゃないんだが、だいたいの人間はそうなるな」

それを聞くと、ダニエルはうれしそうな顔になった。

「なるほど。どうやればカミが人間たちから崇められるようになるかわかりました。さっそく仲間に命じて、この地球をカミのものにしましょう」

さっそくスマホに似せた精神感応通信機を取り出そうとする。

「ちょっと!良樹君何をしようとしていたのよ!」

それを聞いていた明が、慌ててダニエルから通信機を取り上げる。

「べ、別に俺は何も命令してないぞ。ダニエルが勝手に」

明に食ってかかられて、俺は困惑してしまった。

「明さん。なぜ邪魔するのですか?」

「だって今、世界征服しようとしたでしょう?」

「??カミが人間からちやほやされるあなたたちを羨ましそうにみていらっしゃいましたので……世界を所有すれはすべての人間から崇められるようになります。それの何がいけなかったのでしょうか?」

ダニエルの顔には悪気はなく、ただ困惑が浮かんでいた。「まったくもう……これだから目が離せないのよ!」

屋上に明の疲れたような叫び声が響き渡るのだった。


「とにかく、俺は世界征服なんてするつもりはないから」

俺がそういうと、ダニエルはしゅんとなった。

「じゃあ、何がしたいの?」

明に言われて俺は考え込む。地球に帰ってきて、俺は何がしたいんだろう?

家族の問題は解決したし、勇者たちへの復讐は終えた。舞や明といった美少女とも友達になったし、今更学園でいじめられることもないだろう。

「うーん。穏やかに暮らしたい……かな?」

「それがいいかも。お父さんに頼めば、たくさなんお金をくれるから、一生働かずに生活できるし。私と一緒にニートになろう!」

ニート気質を持つ舞がそんな事を言ってきた。

「もう!舞。だめよ!ちゃんと勉強して、人様の役に立つ人間にならないと!」

真面目な明はそういって妹をたしなめる。

「人様の役に立つ……か。それもいいかもな」

「カミよ。ご命令があれば我らダニ人はいつでも動けます。愚かな人間たちを救ってやりましょうか?」

ダニエルが言うとおり、ダニ人たちの力をもってすれば今地球上にある問題のほとんどを解決できるだろう。すべての貧しい人や病める人を救い、無尽蔵のエネルギーを供給することもできる。人間にとってユートピアを築くことも夢ではないだろう。

……人口増による地球の負担を考慮にいれなければ。

考え込む俺を見て、明が慌てだした。

「ちょっと待って。良樹君は何もしないでいいから!頼むから自重してよ!世界が変わっちゃうから」

まあ、世界征服なんていつでもできる。今は高校生活を楽しむとしようか。

俺はそう結論付けて、弁当を食べるのだった。


あきれるほど広い邸宅の最深部に、一人のやせ衰えた老人がいた。いらいらと不機嫌そうに部下からの報告を受けている。

「御前。日本で製造したロケットがまもなく打ち上げられます」

忠実そうにそばに控える執事がそう告げると、怒声が沸き起こった。

「なぜもっと早くできなかった。このままでは他国に遅れを取ってしまうではないか」

怒鳴りつけられた執事は申し訳なさそうに頭を下げる。

「申し訳ありません。力不足をお詫びいたします」

「役立たずが!」

執事を怒鳴りつけたあと、老人はため息をつく。

「くっ……この松平家康が生きている間に、再び大日本帝国の復活をなしとげねばならぬ。あの星を征服できれば、日本は再び世界を支配できるのだ」

「おっしゃるとおりでございます」

執事が慇懃に頭を下げると、モニターにロケットが発射される様子が映った。

『頼むぞ……ふふふ。これで再び日本は広い領土を手に入れて世界の覇者となるのだ。もう他国に気を使うこともなくなる」

皺だらけの醜い老人は、そういって高笑いした。

彼の名前は松平家康。日本の名家松平家の当主で、戦前からずっと日本を影で支配してきた男である。別名「影将軍」といわれて、彼に逆らったら日本では居場所がなくなるといわれているほど権勢を誇る男だった。

彼が支配する松平財閥は、戦前から一貫して武器製造を行っており、警察や自衛隊で使われる銃や兵器はすべて彼がかかわっている。ありあまる財力と人脈で、その気になったらクーデターすら起こせる力を持っていた。

そんな彼も、病と老いには勝てず、この20年間ずっと病床についている。

少し前まではおとなしく死を受け入れるつもりだったが、一ヶ月前に現れた魔王星を見た瞬間、野心がよみがえった。

「あの星を手に入れたら、日本は再びよみがえる……」

家康は今の四方を他国に囲まれて、寸土も領土を広げられない現状を悲観していた。このままでは間違いなく日本は他国に呑み込まれ、征服されてしまうと。

そんな妄執にとらわれた彼は、一発逆転として他国が手をつける前に魔王星を日本のものとするために使者を送り出したのだった。


日本の技術の粋を集めたロケットが、魔王星に到着する。

衛星軌道に乗ったロケットは、まず小型機を地表に向けて放ち、情報収集することにした。

「小型ドローン発射。大気圏突入後、複数の地点に落下し、採取した土壌や大気を持ち帰ります」

そうし手持ち帰った魔王星のデータは、驚くべきものだった。

「大気成分がほとんど地球と変わらず、危険な微生物も発見されません。魔王星は完全に人間に適した環境です」

それを見た乗組員の間から、歓声が沸きあがる。さらに惑星を1周して地表を調べた結果、とんでもないものが見つかった。

「人型大陸-仮にヒューマンと名づけましたが、その腰にあたる部分の山の麓に、金の鉱脈があります」

乗組員たちは興奮した様子でドローンが写した映像を見る。そこにはキラキラと輝く二つの巨大岩山があった。

「あれだけで、世界中の富を独占したも同然の金を手にいれられる」

「あはは……この星は俺たちのものだ!」

喜ぶ乗組員だったが、いきなりブーーという警報が響き渡った。

「な、なんだ?」

「未確認飛行物体確認。近づいてきます!」

その警告が入ると同時に、すべてのカメラに巨大な物体が映し出される。

それは銀色をした円盤の集団だった。


いきなり船内の電気が切れて、宇宙船の中は暗闇に包まれる。

乗組員たちが成すすべもなくうろたえている間に、モニターだけが点り、何かの姿を映し出す。

それを見た乗組員たちは一斉に目を見開いて凝視する。画面に映し出されたのは、昆虫のような複眼に触手を口から出した、世にも醜い生物だった。

「地をはうムシケラどもに警告する。すぐに地球に帰るがいい」

はっきりとした日本語でそう伝えてきたのは、その醜い生物だった。

「き、貴様は何ものだ!」

「我らはダニ人。偉大なる神から、そのお体の管理を任されておる存在だ。ムシケラどもよ。神のお体に手を触れることを許さぬ。おとなしく地球に帰るがいい」

堂々とした口調で命令してくる。

これが地球人類と他の知的生物とのファーストコンタクトになるの゛った。


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