幸せと友達
「ふむ。まあこんなところか」
俺は上空に滞在するステルス迷彩を施した円盤から、親父を陥れた連中の末路を見て満足する。
相田翔は懲戒免職になったあと、どこの会社にも再就職できず、日雇い労働を転々としていた。
そして吉沢栄子は高校を退学になり、家にひきこもっている。アルバイトをしようとしても、どこからか痴漢冤罪の話が漏れて採用されず、友人たちから縁を切られたからであった。
そしてその父親の吉沢学は、40歳を超えて懲戒免職の憂き目にあい、彼がリストラした中年社員と同じ目にあっている。どこの会社の面接にいっても、その経歴が問題視されて就職できず、このままでは数ヶ月でローンが払えなくなって家を維持できなくなるだろう。
「よろしいのですか?あの程度のことで。神の父上に無礼を働いた者たちです。ご命令さえあれば永遠の苦痛をあたえることもできますが」
俺と一緒に映像をみていたダニエルが、ちょっと不満そうにつぶやく。
「いいんだよ。親父が陥れられたのはあくまで社会のシステムに則ってのことだ。それに対する復讐もその範囲内に収めるだろう。もっとも……俺を陥れたあの六人に対しては容赦しないけどな。それより、明はどうしてるんだ?」
俺がそう聞くと、ダニエルは微笑ましそうな顔をした。
「妹の側から離れようとしません。よほど可愛いようです」
「困ったもんだな。ちょっと様子を見てみるか」
俺はそういって、二人の下に向かった。
「はい。舞ちゃん。ご飯でちゅよー」
満面の笑みを浮かべた明が、三歳くらいの幼児の姿になった舞を抱っこしてミルクを飲ませようとしている。
「お姉ちゃん。自分で飲めるよ。私は16歳なんだけど」
それに対して舞は、赤ちゃん扱いされるのがちょっと不満そうで、手を振り回して抗議していた。
「よっ。元気でやっているか?」
俺が二人がいる部屋に入ると、舞に笑顔で迎えられた。
「うん、元気だよ!」
「どうやら順調に成長しているようだな。あと数週間で高校生ぐらいまで成長するだろうな」
俺は空間に浮かんだ舞の身体データを確認してつぶやいた。
「えー。ちょっと残念。この姿でもいいのに」
明は幼児姿の舞がよほど可愛いのか、抱っこして離そうとしない。
父親の正次と一緒に地球に帰ることを拒否して、あれからずっと俺の星にとどまっていた。
「だけど明。そろそろ地球に帰らないとだめだろう。一ヶ月もここにいて、学校はどうするんだ?」
俺がそう聞くと、明はちょっと笑った。
「学校……って。非常識が星のレベルまでいっちゃっているあなたがそんな心配するって、シュールにも程があるでしょう」
明はそうツッコミを入れてくる。
「そんなことはないさ。一応これでも元人間だからな。高校生に学校は大事って事ぐらいは知っているぞ」
俺がそういうと、舞は興味津々の目を向けてきた。
「良樹君って、元人間だったの?」
「ああ。だから父親も母親も妹もいる。地球での俺はごく普通の男子高校生だぜ。一千万と16歳だけど」
俺が事実を言うと、二人は驚いた顔をした。
「一千万歳って……」
「ねえねえ、どうして良樹君が星を創っちゃったのか聞きたい」
舞が聞いてくるので、俺は自分が魔王星になった経緯を説明してやった。
「ひどい!生贄にするなんて」
「一千万年も孤独に、闇の中にいたの……」
俺の話を聞いた二人は、同情の視線を向けてくる。
あれ?ちょっと嬉しいな。彼女たちには何の関わりもないのに、俺のために怒ったり同情してくれたりするなんてな。
「それで俺は魔王星になって、奴らへの復讐のために地球に帰ってきたんだよ」
俺がそういうと、二人は考え込んだ。
長い沈黙の後、明が口を開く。
「うーん。たしかにひどい話で、良樹君が怒るのは当然だけど、復讐のためだけにわざわざ星になって戻ってきたの?なんかしょぼいというか、大げさというか」
うるさいな。そりゃ今の俺にとっては確かに奴らなんて虫けらみたいなもんで、オーバーキルもいい所だろうけどさ。
「なんだ?復讐することに文句でもあるのか?」
「そんなわけないじゃん。そもそも私たちはその人たちに何の関係もないしね」
明は冷たく切ってすてる。別に復讐に反対しているわけじゃないらしい。
「えっと……私は良樹君が誰かにひどいことをするのはいやだけど、良樹君の気持ちもわかるし、助けてもらった私には何の口出しする権利もないよ」
舞もそんな感想をもらす。
「でもさ。私がいいたいのは、人をいけにえにして自分だけいい目を見たがる奴ってのは、結局はどこかでボロが出て、自滅しているような気がするのよね。あなたが手を下すまでもなく」
明はそういうが、そんなことわかるもんか。
「うん。私もこれだけ大掛かりなことをしたのに、戻ってきたのが復讐の為だけにってちょっともったいない気がする。良樹君が幸せになるためにその力を使ったほうがいいんじゃない?」
舞からもそんなことを言われてしまった。
幸せ?幸せってなんだろうか。たしかに復讐することはマイナスをゼロに戻す行為で、プラス=幸せになることは違う気がする。
惑星神となった俺でも、その答えは未だだせないでいた。
「良樹君が地球に帰ってきたかったのは、本当に復讐だけのため?本当の望みは、家族と一緒に幸せに暮らして、もう一度人生をやりなおすためだったんじゃないの?」
明に言われて、俺は頷く。たしかに復讐も大事だが、家族も大事だ。そして俺が異世界召喚なんてイレギュラーで中断された人間としての幸せな人生をやり直すことも大切だった。
そんな俺を見て、舞がくすっと笑う。
「なら、幸せになる一歩として、私たちと友達にならない?」
友達?こいつらは人間の分際で本物の神である俺と対等な関係になりたいなんてことを言っているのか?
それがなんで俺の幸せになるんだ?
そう思う反面、俺は奇妙な嬉しさを感じていた。
友達か……考えてみれば俺にはそんな存在はいなかった。大昔の人間時代は誰からも見下されバカにされていた。
そして神になった後はダニ人たちに傅かれ崇められている。対等な存在なと一人もいない。
「いいだろう。特別に友だちになってやる」
「変なの。そんなことで威張っているよ」
舞はキャッキャと屈託なく笑っている。
「仕方ないわね。舞を助けてくれた恩もあるし、私も友達になってあげるわよ」
明もそういって、笑顔を見せてくれた。
俺は地球に戻り、日常生活を送っているが、まだ弥勒高校には復帰していない。
というのも、俺の家庭環境が問題になっているからだ。
「なんとか、良樹君を復学させていただきたいんですが」
母さんは必死にそう学校側に頼み込んでいるが、彼らの回答は芳しくない。
「お気の毒ですが……駄々でさえ学費免除の特待生という生徒の模範となるべき存在が、数ヶ月も学校を休学されたのではねぇ。寄付金を払っていただいて、一般生徒での復学という形なら可能性はあるんですが」
そういって寄付金の額を提示する。
「そんな大金……私たちには……」
「まあ、すぐに結論を急がれなくても、三学期までに結論を出してください。もし寄付金を払っていただければ、退学しなくてもすみますよ」
ニヤけた顔の担任は、そういって俺たちを追い出した。
「母さん。別に無理に学校に戻らなくてもいいよ」
「だめよ。もし退学になって別の高校に行かないといけなくなったら……ああ、でもどうしよう」
そういって悩む母さんがかわいそうになる。俺はどうでもいいんだけどな。
そんな時、家にソウルバンクから一本の電話がかかった。
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