冤罪の真実
「な、なんだお前は!」
相田翔が睨み付けてくる。それなりに迫力があるメンチだったが、神である良樹は苦笑を浮かべるだけだった。
「俺の名は田村良樹。こいつらダニ人の神だよ。相田翔、吉田英子で間違いないな」
そばに控えているダニ人の艦長に聞くと、彼はうやうやしく答えた。
『間違いありません。彼らの身体的特徴が100%一致しました」
「結構。なら始めようか」
良樹がそういうと、ベッドに横たわっている吉沢英子が泣き叫んだ。
「いや!なんで動けないの!?」
「そのベッドは重力調整式ベッドだ。お前たちのカラダに負担がかからないで、なおかつ起き上がれない絶妙の重力を与えている。どんなにあがいても無駄さ」
冷たく言い放つ良樹に、二人は底知れない恐怖を感じた。
「お、お前みたいな化け物が俺たちに何の用だ」
「「俺はお前たちにはめられたある中年親父の息子だよ。手をだした相手がわるかったな」
良樹の言葉を聴いているうちに、二人の顔色が悪くなってくる。
「だ、だれだ?あのハゲオヤジか?それともあのメガネか?」
「ほう。どうやらうちのオヤジだけじゃなくて、同じ手口で何人もの人に迷惑かけているようだな」
良樹は聞いているうちに呆れてしまった。
「わ、わるかった。だけど仕方ないんだ。実は……」
「あ、下手な言い訳しなくていいぞ。取り掛かれ」
ダニ人たちが動いて、二人の体にさまざまなコードを取り付ける。
「な、何をする気なの?まさか拷問?」
「拷問?そんなつまらんことはしないさ。だたお前たちを殺して、抜き出した魂のから知りたい情報を解析するだけだから」
淡々と言放たれた「殺す」という言葉に、二人は恐怖に震えた。
「や、やめろ!やめてくれ!」
「ごめんなさい!」
必死に命乞いをする二人だったが、良樹はムシケラの鳴き声をきいているかのように無視する。
「よし、やれ」
その言葉とともに、銀色のベッドに強い電流が流れる。翔と英子の心臓は一瞬で停止した。
死体となった二人の肉体から、弱弱しい光を放つ玉が出てくる。それらはあっという間に部屋の中にあった水晶玉に吸い込まれていった。
「よし。奴らの記憶データ、を徹底的に解析しろ」
その命令に従い、ダニ人たちが処置をする。程なくして彼らの記憶から事件の黒幕が浮かび上がった。
「お父さん。私はこの人とつきあっているの。お父さんの会社いれてくれない?」
ソウルバンク人事課長、吉田学は、娘の英子から彼氏の就職の斡旋を頼まれていた。
「チーッす。相田翔です。大富士大学の四年です。よろしくっす」
紹介された男はいかにも遊び人風のチャラチャラした青年で、娘の彼氏としてもソウルバンクの新卒正社員としてもふさわしくなかった。
(やれやれ。ただでさえうちはリストラを進めていて、私はその担当者として大変な仕事をしているのに。こんな奴をいれたりできるものか)
そう思った学は首を振る。
「無理をいうな」
「なんでよ!お父さん人事課長でしょ。私にできることは何でもするから!」
「たのんます!俺も協力しますから!」
一度は断るも、娘とその彼氏はしつこく食い下がってきた。
そのとき、不意に学の頭に今勧めているリストラを円滑にできるやり方が浮かぶ。
「なんでもする……か。なら、私の仕事を手伝ってもらおう」
そういって提示された条件を聞いて、二人は顔をしかめた。
「リストラのお手伝いって?」
「そうだ。わが社には役立たずの中年社員が多い。そいつらは仕事もしないで高給を取っているので辞めさせたいのだが、奴らは会社にしがみつこうとするし、退職金も積み増ししないといけない。そこでだ……」
彼が考えた作戦を説明する。ターゲットになった中年社員の通勤に英子が張り付き、痴漢されたと騒ぎ立てる。そして翔があらかじめ用意されていた盗撮写真を携帯に入れて、動かぬ証拠とする。
あとは会社にそのことを伝え、免職に持っていくという筋書きだった。
「痴漢の罪を理由にしたら、こちらも首を切りやすくなるし退職金も節約できる。これを何人かにしたら、私の権限で君を就職させてあげよう」
こうして、彼らのせいで何人かの中年社員が不名誉な濡れ衣を着せられて退職に追い込まれたのだった。




