地球への帰還
魔王星
各国代表が醜く争う姿を、超小型虫型スパイロボットで監視していたダニエルは、玉座に座る良樹にむけて首をかしげた。
「神よ。なぜあの者たちは争っているのですか?神の肉体であるセカンドアースは神のもの。寸土といえどもあのような虫けらどもの物であるはずがないのに」
「それが人間ってものさ。自分のものじゃないとわかっていても。目の前に財宝があればほしがるのさ」
良樹の顔は、限りなく冷たかった。
「あの者たちへはどうなされますか?」
「ほっとこう。どうせ愚かな人間どもの現在の科学力じゃ、数人の使者をセカンドアースに送りつけるだけで精一杯で移民なんてできるわけがない。やつらには勝手に騒がせておくさ。それより」
良樹は憎悪にゆがんだ顔で、ちっぽけな島国-日本を見下ろす。
「俺をうらぎり、限りなく永遠に近い地獄に叩き落してくれたやつらに復讐しないとな。すぐに殺すなんて、気がすまない。永遠の苦痛を与えてやる」
玉座で良樹は暗く笑ってつぶやいた。
「では、神よ。われ等にお任せください。一時間ですべて捕らえてつれてきます」
金髪の美女となったダニエルが跪くが、良樹は首を振った。
「いや、それじゃつまらん。奴らには直接俺が復讐してやる」
そういいながら玉座から立ち上がろうとするので、ダニエルを始めとするダニ人たちは慌てて止めた。
「何も神みずからがあのようなムシケラどもを相手になされなくとも」
「そうですよ。我々にお任せください」
口々にそういって自分たちに任せるように訴えかけるが、良樹は首を振った。
「復讐は自分の手で行うから面白いんだよ。止めても俺は行くからな」
そんな良樹に、ダニエルはついに折れる。
「神の御意のままに。ですが、私だけはお連れください」
ダニエルが指をはじくと、来ている服が変化していく。
さっきまでは姫のようなドレスを着ていたのに、メイド服に変化した。
「……なんだそれ?」
「私は神の僕でございます。神の知識から、主人に仕えるのにふさわしい服だと知りました」
金髪メイドになったダニエルは、スカートを開いてお辞儀した。
「それでは、神様。地球にまいりましょう」
良樹用の円盤型宇宙船が用意される。
この日、一人の少年が地球に一千万年ぶりに帰還するのだった。
日本 東京郊外
郊外にある都営住宅の一室に「田村」と書かれた紙が表札として貼られている。
「な……懐かしい。俺はついにここに帰ってきたんだ」
なぜかそのドアの前で、小柄でひ弱そうな少年が咽び泣きしていた。
「神よ。この建物は倉庫ですか?」
その少年のそばには、絶世の美少女がメイド服を着て控えている。
「倉庫じゃねえよ。俺の家だよ」
「神の家……なのですか?」
ダニエルは薄汚れた団地を見て、ショックを受けている。
「いけません。我らにお命じください。セカンドアースから神殿を転移させて……」
「いいから、よけいなことをするな。それから、俺を神呼ばわりするのはやめろ。頭がヘンになったと思われるから」
「なぜですか?神はまぎれもなく神様ですが」
ダニエルはちょっと不満そうな顔をしている。
「俺は今後100年くらいはただの人間としての人生を楽しみたいんだよ。一千万年前にできなかった人間としての人生を味わってみたいんだ。神に戻るのはそれからの話だ」
そういう良樹に、ダニエルもしぶしぶ納得する。
「わかりました。では、なんとおよびすればいいでしょうか?」
『その格好だと、やっぱりアレだな」
良樹は鼻の下を伸ばして、古びた団地には似つかわしくない金髪メイドを見つめる。
「俺のことはご主人様と呼べ」
「かしこまりました。私のご主人様」
ダニエルはにっこりと笑って頭を下げるのだった。
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