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大魔王降臨

六人の姿が完全に消滅した後、王と王女はほっと息を吐く。

「……どうやら、うまくいったようじゃのう」

「ええ。強い力を持ち、魔王を倒した英雄などが居座られたら、邪魔ですからね」

二人は顔を見合わせて安堵する。

「これで、ワシ等がこの天界をずっと支配できるのぅ」

「ええ。千年は若いままで生きることができます。世界は私たちのものです」

うまく人間界の勇者たちを利用し、魔王という脅威を排除した二人は含み笑いをするのだった。

その時、二人の顔に影が落ちる。

「なんじゃ?急に暗くなったぞ?」

「まだ昼ですが……雨でしょうか?」

さっきまで雲ひとつない快晴だったのに、急に辺りが暗くなってくる。

不振に思って空を見上げた二人の顔が、驚愕に歪んだ。

「あ、あれはなんじゃ!」

王は空の一点を指差す。そこには巨大な黒い穴が開こうとしていた。

「あれは、『闇の世界』。ばかな!魔王は無力な荷物もちの少年に封印され、二度とこの世界に戻ってこれないはず。いったいなぜ!」

「い、いや、違うぞ。魔王などではない。この魔力……魔王などとは比較にならない、何が別のものじゃ!」

王の言葉におそれが混じる、全世界から恐れられた魔王の数万倍の魔力を持つ存在が、空にあいた巨大な穴から出てこようとしていた。

空にあいた穴は広がり続け、やがてすべての空を覆い尽くすほど広がっていき、青い空が漆黒に染まる。

そこから、光り輝く二体の光球を従えた、ピンク色の物体が現れた。

「あれは……」

その物体を見て、王女アリエスは驚愕する。それは人間の頭部のような物体だった。

無限の悲しみをたたえたその顔は、生贄にした荷物もちの少年の顔に良く似ていた。

「も、もしや、荷物もちを暗黒の世界に追放することで、魔王の力を取り込んで、パワーアップさせてしまったのかも?」

アリエスは恐怖の表情を浮かべて空を見上げる。

惑星ほどもあるその顔は、怒りの表情を浮かべている。何万本も生えている髪は、まるで触手のようにユラユラとゆれて、このシャングリラ世界を覆いつくそうとしていた。

「まさか……あいつが大魔王となってこの世界を滅ぼそうと……いけない!勇者たちを呼び戻さなければ!」

アリエスは三角形の魔方陣に向き直り、召喚の儀式をはじめようとする。

「女神イホワンデー様。勇者たちの再召喚を!、再びこの世界に呼び寄せたまえ……」

一心に祈るアリエスの耳に、ヒュルルーーーという風を切る音が聞こえる。

思わず見上げたアリエスの目に、触手となった髪の毛の一本がこちらに向かっているのが見えた。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

アリエスは叫び声をあげてしまう。その触手は正確に大神殿を貫き、完膚なきまでに破壊する。そしてそこに設置してある女神像を砕き、地面に深くめり込んだ。

あまりの事態に呆然としているアリエスの前で、魔方陣がふっと消える。

「まさか!女神の力が遮断された?大魔王にはそこまでの力があるというの?これじゃ、勇者たちを召喚できない!」

破壊された大神殿の前で、アリエスは虚しく立ち尽くすのだった。


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