十三歳 家族会議
俺は十三歳になった。村長の所での学びも終わった。
ちなみに十歳の時に能力を測る水晶盤に触ったんだが、俺の能力は結構ヤバイ筈なのでごまかしたんだ。うん、結界で。
つまり自分に結界を張って能力を自分の望むようにしか外に出さなかったんだよ。それで皆に見えた俺の能力は
魔力 そこそこ
魔法適正 低いけど全部
スキル 工夫と薬調合 だった。
俺のスキルに工夫があったことでこれまでやらかしたことの説明がついた。まぁ良いごまかし方が出来たよ。
そして魔法適正を何故全部にしたかというと。
結界と生活魔法が攻撃にも使えたことと、ごく弱いが癒し魔法が使えたことから、そうしたんだ。
火や氷を高速で矢(と言うかダーツ?)のように放てば立派な攻撃魔法だろう?水だって相当な圧力をかけて放てば石だって切れる。
そして結界で相手を囲み、結界を小さく縮めたらどうなると思う?又はその結界内の酸素を抜いたら?
結局、魔法ってイメージなんだよ。傷を塞ぐのも血管の破れを直して筋肉や皮膚を繋いでいくよう念じれば出来るし。清潔魔法でウイルスや菌を除去すれば感染症予防にもなるし治療にもなる。
まあそれはともかく。
十歳の時に公開したスキルのせいで俺の家は結構豊かになったんだ。村もだけど。
椎茸の栽培方法を父さんと母さんに教えて、干し椎茸を作ったんだよ。で、干し椎茸を粉にして売ったら好評でさ。
スープのだしになるし、お茶として飲んでも良いし。
粉にしたことで何だかわからなくなるのも都合が良い。
うちの秘伝の栽培法ということにしようかとも思ったんだが村で共有にした方が良いってことになって。
三年経った今では村の特産品だ。ギルドから栽培方法を寄越せと言って来てるらしい。その辺は父さんと村長にまかせてるからよくわからないけれど。
で、スキルにあった薬調合はというと。ガラス瓶と薬草を用意すればポーションが出来上がるので皆にびっくりされた。
出来たポーションはもちろん普通の薬草をただ煮ただけの物より質も味も良い物だった。
あ、他の草を加えて作るのは人前ではまだしてない。
それで村長は気を良くして「タイクが望むなら村に留まってはどうか」と言いだして。うちで家族会議が始まった。
「タイク、どうする?」
「え?俺、薬のこと何も知らないから誰かに教わらないと。」
「そりゃそうだ。」
「うん。この前ポーションを作ってギルドに売ったお金があるし、人形を作った時に皆からもらったお金もあるから。とりあえずカシャの港で薬のことを教えてくれる人を探すよ。もしいなかったら…もう少し大きな町に行ってみる。」
「わかった。」
「タイク、身体には気をつけるのよ。」
「…タイク兄さん、行っちゃうんだ?」
「うん。ポーションしか作れないじゃ困るからね。」
「タイク、薬師はどこでも大事にされる。この村でもな。一人前の薬師になったらいつでも帰って来いよ。」
「ありがとう。兄さん。」
というわけで俺は村を出る。実はポーションに関しては結構以前からちょくちょくギルドに売っている為に資金は不自由していない。だからもう少し離れた大きな港町、リハまで行こうと思ってる。リハの町には薬師や魔法師を目指す庶民の為の学校があるんだよ。ギルドの職員に教わったんだ。学費や寮費も庶民向けだから安いんだって。