リナの子守
妹のリナが二歳を過ぎて随分しっかりしてきたから、外遊びの時は俺がリナの子守をするようになった。
まだ体力もないから遠出が出来ないし、これというおもちゃも無いし、何をしてもすぐ飽きる。抱っこや手を繋ぐのも嫌がるし。
とにかく初めのうちはリナの後を俺がついて行き、危ない場所に行かないよう注意するだけで精一杯だった。自分のペースではないからかやたら疲れた。
それでも晴れているならいい。雨の日なんかどうしよう。
仕方ない。おもちゃがなければ作れば良い。
赤ん坊の服は赤ん坊の成長が早いからすぐに着られなくなる。赤ん坊は使い方が荒いから(というか考え無しだから)破れたり、汚れが落ちない物もある。それでも布はそこそこ貴重品だ。布としては使えなくても焚きつけや雑巾にする為に全部とってある。
母さんから古いベビー服を二着と端切れを少し、あと穴が開いた毛布の切れ端をもらう。裁縫道具も借りた。
それですごく手抜きだけど人形を作った。毛布の色がキャメル色だっけ?少し薄い茶色だったから切り込みを入れて髪の毛にして、小さく丸く切り抜いて目にした。赤い糸で口らしく縫って。顔と胴体、手足を縫い付けて端切れで作った服らしき物を縫い付けて終わり。胴体とかの中身は服や毛布の切れ端を詰めて膨らみを持たせてある。
どう?リナに見せて、クルミの殻や木の葉を食器に見立てたおままごとをして見せた。
…うん。俺から人形を引ったくって夢中になって遊び始めた。
清潔魔法をかければ綺麗になるけど壊したら直せないから大事にするんだぞ、と言い含める。外に持ち出せるようにリナ用にナップサックも作ってやった。
これなら背負って歩けるから転びにくいし、人形も失くさない。ドアと屋根のアップリケで家のように見えるようにして
「この袋は人形のお家だよ。使わない時や寝る時にはここに人形を入れてやろうね。」
と言って渡したら思いきり頷いて
「うん。これ、カナのお家ね。」
だって。もう人形に名前までつけたか。
リナが母さんに人形とナップサックを見せる。母さんは驚いたように人形とナップサックを見た。
「タイク、面白い物を作ったわね。あなたは物作りの才能があるわ。」
と言って俺を抱きしめた。ふーん。こういう物が無かったか、知られていない世界なのか。
「母さん、もらった布と毛布、まだ少し残っているんだ。小さな馬を人形に合わせて作っても良いかな?」
俺がそう言うと母さんは笑顔でもう一度俺を抱きしめた。良い、ってことだよな。
平べったい、マスコットのような、いい加減な馬を作ってリナに渡した。人形の飼っている馬だと言って。
リナはすごく喜んでくれた。
ナップサックの背中側に馬がすっぽり入るポケットをつけてやった。馬小屋だよ、と。
馬のマスコットと人形だけだけど。初めてのリナの、リナだけのおもちゃとおもちゃ入れだ。
リナは大事にしてくれたし、使った後は必ず俺か母さんが清潔魔法をかける。
そしてこれで遊んでいる時はあまり手がかからないし(勿論付き合わされるが)、リナ一人でも長いこと遊んでくれるようになった。