だって俺まだ子どもだし
子どもだから遊びたがるし、いたずらも失敗もする。
小さなケガは日常茶飯事。当たり前の話だ。
この村には何人か同じくらいの子どももいるんだが、言葉がある程度わかるようになった五歳くらいからは結構家の仕事を手伝わされる。あんまり子ども同士で遊ぶことはない。
だから基本暇になると一人で(兄弟がいれば兄弟で)遊ぶというか暇潰しをするんだ。今の俺みたいに。
俺は5歳の時に両親から魔法の初歩を習った。
清潔魔法はおぼつかなかったが水魔法は得意だった。
当然危ないから火魔法はまだ教えられていない。
でも、今のおれならな。多分大丈夫。うん多分。
まず清潔魔法を自分にきちんとかけてみる。… うん。昨夜と今朝、母さんにかけてもらったものより綺麗になった。
この魔法があるから洗濯や入浴の必要が無いのはありがたい。風呂に入りたくない、と言えば嘘になるが。
正直、本当に綺麗になるからなぁ。身体を拭く手間も省けるし。
水は…大丈夫そうだ。バスケットボールくらいの水玉が目の前に現れた。すぐに消せるし。
火を出してみる。うん。小さいけど青白い火になってるな。赤い火にするのも…出来た。消すのも簡単。よしよし。
あと、もらったのは…鑑定と生産、だったっけ。それから防御。
防御はバリアーのイメージで頼んだのだが。自分の身体の周りを包む感じで。どうかな?
…うん。よくわからん。魔力が身体を取り巻いているのはわかる。わかるが、それがどれくらいの強度でどれくらいの時間使えるかがさっぱりだ。
こういうことに鑑定を使えれば助かるけど。
「防御魔法 バリアー
あらゆる攻撃魔法を無効化。いかなる剣、槍、弓も弾き返す。ただし身体にあまり近く張ると衝撃は軽減されるとはいえ受ける場合がある。タイクの魔力量ならば一日中張っていてもかなりの広範囲でなければ差し支えない。」
頭の中に文章がいきなり浮かんだ。これが鑑定か。
少し離れた所に生えている薬草を見つめながら「鑑定」と呟く。するとやはり文章が頭に浮かんでくる。
「シャク草。薬草の一種。水で煮出してポーションとする。が、エキスを水に溶かす方が飲みやすく効果も高い。また、アキミ草、ミワ草のエキスを加えると中位ポーションになる。上位ポーションを作るにはシャク草を使わず、アキミ草、ミワ草のエキスとラフルの木の実と葉のエキスが必要(ラフルの木はこの国より北方にしかなく貴重)。」
アキミ草?ミワ草?なんだそれ?
そう思ったら周りの草がポゥッと光った。その光っている草を見て鑑定してみると、それがアキミ草とミワ草だった。
薬草(シャク草というらしい)と、アキミ草とミワ草を摘んで手に取る。で生産魔法を使おうとすると。
「カップ又は瓶に水を用意してください。最低でもシャク草を十本に対してアキミ草とミワ草が三本必要です」
と言われた。瓶なりカップなりを家に取りに行くのも面倒だ。明日にしよう。
そういえばエキスってどうやって作るんだろう?
「最低それぞれの草が三十本必要です。それぞれ…」
作り方がわかったのは鑑定なのか生産なのかわからん。でも魔法でなくても蒸留みたいな器具からでも作れるし、生産魔法を使う場合は適当な入れ物と必要な量の草を用意すればすぐにエキスが作れることがわかった。
鑑定と生産のカップリングは便利だ。
何か作れないかなぁ。作ってみたいなあ。
ワクワクしてきた。だって俺、まだ子どもだし。