表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間嫌いの神殺し  作者: 蒼三晃
2/4

初めての魔法

「いいぜ。俺がお前を殺して神になってやる。」


その言葉を聞くとセノンは驚いた顔になったがすぐに満足そうに笑った。


「アハハハハハハ!いいね!その言葉を待っていたんだよ!それでこそ僕が選んだ人間だよ!」


実をいうとセノンは断られるかと思っていた。何せ自分の都合のために無理矢理連れてきたのだ。一言二言文句を言われるのではないかと思っていた。しかし、返ってきたのは文句でも罵倒でもなく、宣戦布告じみたセリフだった。流石にこれは笑わずにはいられなかった。


「それじゃ君からの許可も貰ったしこの世界について、神殺しについて少し説明しようかな。」

「おう頼む。流石に何も知らないままじゃまずいからな。」

「最初に言ったようにここは剣あり、魔法ありのファンタジーの世界。人間以外の種族もいるし、戦争も起こっている。君には人類を救えとか、戦争を止めろなんて言わない。君はただ僕を殺してくればそれで終わり。ゲームクリア。」

「そこら辺は既に理解している。問題はどうやって神殺しを成し遂げるのか。それを教えてくれないか?」


征也はセノンに言われなくても人類を救う気も、戦争を止める気も元からなかった。もちろん、言われても断っていただろう。問題としては神殺しをどうやって成し遂げるのか。それだけだった。この場で殺してしまえば楽だがそれではつまらない。


「それは教えることができない。天界規約で決められているんだ。」

「おいおいノーヒントでやれってことかよ。それはちょっと厳しいぞ。」

「うん、僕もそう思う。だからヒントだけあげるよ。この世界の理を知ることが出来れば神に挑めるよ。」


セノンは当然のように言ったが征也は理解できなかった。それはヒントじゃねぇよと叫びたかったがぐっと抑えた。


「よくわからないんだか。」

「今は分からなくてもいいよ。そのうち分かるから。」

「と言ってもなぁ……」

「しょうがないなぁ、この世界は僕が作ったんだよ。僕と君は似ている。君が僕ならどうするか。それを考えたらすぐにとはいかないけど少しは分かると思うよ。」


考えたがやはり分からない。この世界の理とは何なのか。俺がセノンならどうするか。いくら考えても何も分からない。征也はこれ以上考えても無駄だと思い、考えるのをやめた。セノンが言うことが本当ならいつか分かるかもしれない。


「そろそろ僕は行くよ。天界議員どもに見つかると面倒だからね。」

「あぁ、ありがとな。セノン。」

「お礼を言うのは僕の方だよ。ありがとね僕のお願いを聞いてくれて。あっ最後に神殺しの魔法について教えとくね。君は今神殺しの魔法、神界魔法てのを使えるんだ。使ってみれば分かるよ。それと、ステータスは底上げしてあるから簡単には死なないはずだよ。」

「そうか。悪いな何から何まで。」

「いいよ。僕が半ば無理矢理連れてきたんだ。これぐらいはね。」


そういうとセノンの周りから白い光が出てきた。するとセノンの体が徐々に薄くなっていった。征也はセノンに向けて手を振り、セノンも手を振った。するともう消えそうというところでセノンが何かを思い出したような顔をした。


「いい忘れていたけど、その神界魔法だけじゃ僕は殺せないからね!この世界で君だけの魔法、独創魔法を手に入れる必要があるから!頑張ってねー!」


そういうとセノンは消えた。征也はセノンが消えた場所を暫くの間見つめていた。神界魔法やら独創魔法やらはよく分からなかったが、ただ分かることはこの世界はあのくそったれな世界よりも何十倍も面白く、征也が生きる価値を見いだせる場所だということ。征也は固く拳を握り、神になろうと改めて決意した。


「まぁ、なんにしろまずは情報が必要だな。人がいるところにいかないとな。」


周りを見渡してもだだっ広い草原しかないが、適当な方向に歩けばいつか人に会うだろうと思い、適当に歩きだした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


どれ程の距離を歩いたか分からないが、セノンに会ってからもう二時間は過ぎようとしていた。しかし、征也が今歩いている場所はやはり草原しかなかった。ステータスを底上げされているせいか、疲れる様子はまだないが、ここらで少し休もうと征也は腰をおろした。


「一体どれだけ歩けばいいんだ?もうそろそろ人か、モンスターが現れて欲しいんだが。」


二時間歩いても何もいない。その状況は流石に征也でも少し不安になった。人間でもモンスターでもいいから何か生きているものを見たかった。


「出来ればモンスターがいるといいんだが。神界魔法とやらも試してみたいしな。」


征也はセノンが言っていた神界魔法をまだ使っていなかった。周りは草原しかないのだから使おうと思えば使えるのだが、セノンが言っていたステータスがひっかかった。ステータスがあるなら、そのなかにMPのようなものがあると思ったのだ。いくらステータスが底上げされていても一度使ってMP切れで倒れるという可能性も捨てきれなかった。それに本当にモンスターを倒せるのかそれを試したかった。


暫くボーッとしていると近くから悲鳴が聞こえた。声からして女性のようだが、征也はまぁいいかとその悲鳴を放っておくことにした。極力人間とは関わりたくなかった。だが、聞こえたのは女性の声だけではなかった。モンスターの声らしきものも聞こえた。それが聞こえると征也はすぐさま立ち上がり悲鳴が聞こえた方角に走りだした。モンスターがいるなら自分の力を試すことが出来る。そう思うといてもたってもいられなかった。


聞こえた場所は征也がいた場所から三㎞ほど離れたところだった。何故こんな遠くからの声が聞こえたのか謎だったがステータスのお陰と割りきった。モンスターに襲われていたのは女性二人に男性三人の計五人だった。五人とも武装はしているが既にぼろぼろだった。


女性の方は黒髪の長髪、茶髪のショートだった。顔は決して悪くはないが良くもないと言えるだろう。男性の方は三人ともガッチリとした体格で髪も短く切り揃えていた。五人ともどこか胡散臭い雰囲気をまとっていた。


しかし、征也にとって人間はどうでもよかった。問題はその五人を襲っているモンスターだ。数は少ないようだった。見た目は熊のようだがその大きさは六メートルはあるだろう。


「くそっ!何でこんなところにレッドグリズリーがいるんだよ!」

「ごちゃごちゃ言ってる暇があったらさっさと倒しなさい!いざとなったら奴隷を囮にして逃げるのよ!」

「姉さんそれはダメでしょ!親分に殺されるよ!」

「だまらっしゃい!しっかり説明すれば親分も殺しはしないはずだよ!今は生き残ることだけを考えなさい!」


何ともありきたりなセリフだろう。征也はリアルでは中々聞けないセリフに少し感動していた。


(それにしても親分はないだろう)


言葉から察するに五人組はおそらく奴隷商人だろう。よくよく見ると五人組の後ろには檻のようなものがあり、そのなかには奴隷らしき人間が四人ほどいた。どういった人間かは分からないがおそらく大人だろう。普通の人間がその光景を見れば怒り狂うだろうが、征也にとってはやはりどうでもよかった。それよりもレッドクリズリーといったモンスターと戦いたかった。


征也は広角をあげ、やっと力を試せる喜びを抑えながらレッドクリズリーの前に立った。突然現れた少年に五人組は目を白黒させた。しかし、征也はそれに目もくれずレッドクリズリーに向けて魔法を放った。


「"火炎獄"」


征也が放った魔法が、レッドクリズリーに当たるとそこから爆発を起こし、辺り一面を火の海にした。先程までいた、レッドクリズリーも跡形もなく消え去っていた。


「「「「「「えっ……?」」」」」」


その威力に五人組はもちろん、魔法を放った張本人でもある征也も驚いた。


魔法は自分の魔力を使い魔法を放つ方法と、自然のエネルギーを集めそれを魔力とし、魔法を放つ方法がある。征也が放った魔法"火炎獄"は前者だ。自分の中に秘めている魔力が大きければ大きいほど使う魔法の威力は上がる。


しかし、これほどまでの威力の魔法はいくらステータスが上がってるにしても異常だった。普通の魔法師が征也の放った魔法を撃とうとしてもその半分にも満たない威力しかでないだろう。もちろん、撃った後は魔力切れで三日間は寝込むはずだ。しかし、征也には魔力切れの様子も大幅に削られた様子もない。


その場にいた全員が口をぽかんと開けて目の前の火の海を見ていた。


「まさか、こんなに威力があるとはな……」


紛れもなく本心だった。征也としては威力は高ければ高いほうがよかったがこれはあまりにも高すぎだろと神界魔法の強さにあきれた。しかし、これで自分の力の強さを知ることができた。それだけでも収穫はあったと割りきることにした。


「あの~助けてくれてありがとうございます。」


征也が自分の力に納得していると先程の五人組の一人の男が話しかけてきた。


「あ?……気にすんな。別にお前らを助けたわけじゃない。俺の都合上たまたま助かっただけだ。」

「助けたわけじゃないって……まぁいいっすけど。」


なにやら腑に落ちないようだか征也は無視することにした。出来れば人間と関わりたくないのは当然だが、これ以上話していると厄介事を押し付けれる気がした。


「ちょっといいかい、坊や。まずは助けてくれたこと感謝するよ。あのままだったら私たちは死んでいた。」

「だから、たまたまだって……」

「たまたまでも助かったのは事実だよ。ほんとにありがとう。」

「「「「ありがとう!」」」」


五人組は揃って征也に向けて頭を下げた。普段感謝されることなんてなかった征也は少し気恥ずかしかった。


「そこで坊や。ちょっと図々しいかもしれないけど私達のお願い聞いてくれるかい?」

「嫌だ」


即答だった。それもそうだろう。助けて貰った上にお願いまでするというのはいささか虫がよすぎるというものだ。その上征也はこいつらとすぐに離れたいと思っていた。


「ま、流石にそうだろうね。それならあんたの質問に何でも答える、というのはどうかい?」

「……何だと?」

「悪い話じゃないだろう?あんたが今一番欲しいのは情報だろ?私達が答えることができることなら全部教えてやろう。」


正直悪い取引ではないと思った。確かに一番欲しいのは情報だったので知りたいことを全部聞けるというのは願ったり叶ったりだった。しかし、不安もあり、そして何より足りなかった。


「……追加条件だ。あんたらのお願いを聞く代わりに俺の欲しい情報を嘘偽りなく話す。それに加えて………………あんたらが持っている有り金の半分を寄越しな。」

「「「「「はぁ!?」」」」」

「おいっガキ!ちょっと待てよ!それはやり過ぎだろ!」

「そうか?これぐらいは当然だと思うが?」

「どこが当然なんだ!それじゃ私達が、損するじゃないか!」

「あのなぁ、俺は成り行きとはいえ、あんたらの命を助けたんだぞ?本当ならもう少し要求できるところを有り金半分で済ますことができるんだ。むしろ俺のほうが損しているぞ。」


流石にそう言われたら何も言い返すことができない。そもそも自分達は命を助けられ、その上図々しくもお願いをしようとしている。征也の要求は正当なものだと言えるだろう。


「どうする?この取引乗るか?やめるか?」

「……わかったよ。その取引に乗ってやろうじゃないか……」


征也は取引成立だなとニヤリと笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ