人間嫌いの神と人間
気分転換に新作書いてみましたがやっぱり難しいですね。
例えばこんな話があるとする。
ある日世界は二つに分かれ、片方の世界を好きにしてもよいと言われる。さて、どうするか。
おそらく、多くの人は自分の都合のよい世界にするだろう。その世界の住人全員が幸せだと思う世界を作る人は少数だろう。そしてその少数の人の多くは「もてはやされたい」「ちやほやされたい」などと自分の勝手な願望を抱いているだろう。心の底から相手のことを考える人間などいないのだ。誰もが自分のことを真っ先に考える。
ある男は言った。「相手のことを考えろというが、危機的状況でも同じようなことが言えるのか。自分を犠牲にして他人を優先することができるだろうか。」と。それは否だ。自分を犠牲にする人はいない。それ事態はおかしくない。むしろ当然と言えるだろう。問題はなぜできないのに「自分は相手のことを一番考えることができる。」などと言うのかと言うことだ。
その男は更に言った。「相手のことを優先できない奴は最低だと言われるが、相手のことを優先させることができる等と軽々しく言っておいて実際はできないという方が無責任で最低ではなかろうか。」と。そして男は最後にこう言った。
『だから俺はこれからも自分のことしか考えない。』
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「ねぇセリュー、何で人間はこんなにめんどうでつまらないのかな。」
ー突然どうしたのだ。
「心では思ってないこと相手に言う。どうしてだろうね。本音をそのまま言えばいいのに。」
ーそれが人間というものなのだろう。人に見放されるのが嫌で嘘をついてまで強者についていく。賢い生き方だと思うが。
「それが面倒なんだよ。僕なら嘘をついてまで強者についていきたくないね。それなら自分が強者になるよ。」
ーそれはセノンだからこそできるのだ。人間はそこまで強くはないのだろう。
「ホントにつまらない生き方してるね。人間の中にも僕と同じようなこと考えている人はいないかなー。」
ー気になるなら下界を覗けばよかろう。セノンは神なのだから。
「いつも覗いているよ。今も見てるけどそんな人間は……あっ!」
ーどうしたのだ?
「いたよセリュー!僕と同じく人間に絶望して自分以外の人間からも嫌われてる人間!」
ー本当か。それは良かったな。
「なんだよセリュー。もうちょっと喜んだらどうなんだい。」
ー我は別に人間に絶望などしていない。それよりもどうするのだ?その人間。
「もちろん会いに行くよ。それで僕の世界に連れていく。」
ー連れていくのはまずいのでないか?最高神様が黙ってないぞ。
「せっかく見つけた同種なんだよ。最高神のことなんて今はどうでもいいよ。それじゃ行ってくるよ。」
ーあっ!おい!セノン!……はぁ最高神様にどう言おうか……
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俺は俺以外の人間が嫌いだ。言葉では無責任なことを軽々しくいっているくせに実際にその場面がきたら自分だけは守ろうとする。自分が怒られたらたら自分より下の人間に八つ当たりする。この世界はそんな人間ばかりだ。俺は何年もそういう人間に騙され絶望してきた。だから俺は人間が嫌いだ。
「分かるよその気持ち。」
「っ!」
自分の部屋でくつろいでいると突然目の前に十二才ぐらいの少年があらわれた。俺はすぐに人間ではないと考えた。なにせ、何もなかった空間から突然あらわれ、俺の心を読んだように言葉を発したのだから。
「ようやく見つけたよ。僕と同じ人間に絶望しているただ一人の人間、神木征也君。」
なぜこの少年は俺の名前を知っているのか。それよりも俺の他にも人間に絶望している奴がいたことに驚いた。この少年に少し興味が湧いた。
「お前何者なんだ。」
「僕はセノン。こことは違う世界の神様?」
神様という言葉に驚き、絶句した。もちろん信じられないがさっき急にあらわれたことも心が読めることも神様であるなら納得がいく。自称神様のセノンは俺の心でも見えているのか、何でもお見通しといった表情をしていた。
「君が信じる信じないはどうでもいいさ。それよりも聞きたいことがあるんだ。」
「俺に聞きたいこと?」
「そう。面倒なのは嫌いだから率直に聞くよ、君って僕と同じで人間嫌いでしょ。何で嫌いなんだい?」
何で嫌いなのか。もちろん俺が人間を嫌う理由はある。しかし、それをこの自称神様に言ってもいいのか。仮に神様だとすると俺の記憶を書き換え社会に貢献できる人間にすることだって可能だ。俺は今の俺がかなり気に入っている。自分が他人のために動く光景を想像すると鳥肌がたつ。どうするか悩んでいると、セノンはまたもや意味深な笑みを浮かべていた。
「安心しなよ。僕は記憶をいじろうなんて思ってないから。単純に今の君に興味があるだけだから。」
それを聞いて少し安心した。セノンが言ってることが真実だとは思わないが嘘だとも思えない。
「……俺は産まれてから十七年間何度も人間に裏切られた。親からも見放され、味方だと言ってくれた奴もすぐに裏切り俺に罪を擦り付けたりした。人間なんて表面上ではなんとでも言える。だけど自分に都合が悪いと分かるとすぐに切り捨てる。だから、俺は人間が信じられないし、嫌いだ。」
「いいねーその考え。嫌いじゃないよ。」
セノンの「嫌いじゃない」と言葉を聞きようやく分かる奴があらわれたと思った。だが、そんなことを言ってきた奴は今まで何人もいた。その事を考えるとやはりこいつも信じられない。
「でもその考えを持っているとさぞかし生きにくいだろうね。失敗したんじゃない?」
セノンは再び意味深な笑みを浮かべながら聞いてきた。失敗した、か。そんなのはいつも思っている。この世界は『いい奴』が常に上にいることを許されている。頭がいいやつ、運動神経がいいやつ、性格がいいやつ。そんなやつばかりが世間からはよく見られている。俺みたいな何にももっていない奴はすぐに見放されるだけだ。それがこの世界の真実。そんなことを知った奴はこの世界に産まれてよかったなどと思えるはずがない。
「そうだな。失敗したのかもな。できることなら一からやり直したいね。少しはマシな人生送れるかもな。」
「そう思うかい。それなら僕がやり直させてあげよう。この世界とは別の僕の世界で!」
「はい?」
突然暗いものが覆ったと思うと次の瞬間には見慣れた部屋から見覚えのない草原の真ん中に立っていた。ここはどこだと辺りを見渡すがただただ草原が続くだけだった。
「ようこそ僕の世界、アルヴァータへ!」
聞き覚えのない言葉が出て来て戸惑ったが、どうやらここは地球ではないらしい。しかし、地球でないとわかっても不安は消えない。むしろ、逆に不安になるだけだった。
「えーと神様。ここはどこなんだ?」
「セノンでいいよ。ここは多種族が互いに敬遠しながら存在している世界だよ。モンスターあり、魔法ありのファンタジーのような世界。」
「つまり俺はお前に転移させられたってことか。」
「そういうことだね。」
「何が目的なんだ?」
この手の小説は何度か読んだことがあったのでなんとか理解できた。この流れでいくと、この世界を救え、とか言われるが。
「君には僕を殺してもらおうかと思ってるんだ。」
「なに?」
かえってきた言葉は予想もできないものだった。確かに神を殺せなど言われるのはファンタジー小説にはありきたりなものだ。しかし、それはこの世界の住人に頼まれたり、世界の真実を知った主人公が考えるものであって、神様自身が、自分を殺してくれと頼むなんて聞いたことがない。
「だから僕を殺してほしいんだよ。」
「いや、それを神様が言うか?」
「もちろん今から殺せってことじゃないよ。最終的に殺してもらえればそれでいいの。」
どっちにしろよく分からなかった。神様が嫌ならやめればいい。それに殺すにしろ、俺ではなくここの住人にでも頼めばよかろう。なぜ、わざわざ俺を転移してまでそんなことを言うのか分からなかった。
「一体どういうことなんだ?何でそんな事俺に言うんだ?他の奴じゃ駄目なのか?そもそも何で神を殺す必要がある?」
「ごめん飛躍しすぎたね。最初から説明するね。」
「そうしてくれ。」
セノンの説明によると、セノンは五千年ぐらい前にアルヴァータを作りそして神になった。はじめの頃は人間というものが面白く、見ていて楽しかったらしい。しかし、千年ほどたつと人間は互いに争うようになった。グループを作り敵対し、殺しあった。そこでセノンは魔物を作り人間対人間ではなく、人間対魔物という状況を作り出した。だが、次第に魔物も意思を持つようになり種族ごとに分裂するようになった。魔族をはじめとするエルフ族や獣族等多くの種族に分かれた。今では人間以外にも魔物同士で争うときもあるらしい。そんな世界が三千年続き、セノンもそんな世界に飽きてきて、神をやめたいと思うようになった。だが、神になった以上簡単には止められないらしい。そこで俺に殺してくれと頼んだということだった。
「だけど、何で俺なんだ?俺以外にもふさわしいやつたくさんいるだろう。」
「神にふさわしいのは、知力や、武力、運など様々な要素を一定以上持っていて、何より人間に絶望している人なんだ。」
「確かに俺は人間に絶望しているが、知力も武力も運も人並みだぞ?」
「それだけあれば十分だよ。どう?僕を殺して神になってくれる?」
セノンのこと、この世界のことは大体分かった。神になれるというのも冗談ではないらしい。話を聞く限りもとの世界に戻って今まで通りの日常を送るより、アルヴァータで神を目指す方が面白そうだと思った。神になれるかはやってみないとわからないがとりあえず神を目指すことにした。
「いいぜ。俺がお前を殺して神になってやる。」
雑な文ですいません。