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05話 手ごたえの無い魔法の特訓

短めです。世界の説明 + 日常の一幕です


 月は常に地球へ同じ面を向けて公転をしており、その面をニアサイドと呼んでいる。

 ルーカディアの主要な都市があるのは、主にその二アサイドだ。

 地球への表裏が同じであるため、ニアサイドの空には常に青い星が浮かんでいる。

 

 そんなニアサイドで最も栄えた都市の名はセントラル。


 ニアサイドの中央に位置することから別名『月面の中心点』と呼ばれ、地球と月を結ぶルーカディア最大の宇宙港セントラルポート(中央の入り江)があるのが特徴だ。

 その港を中心に観光地やレジャー施設で賑わっているのがセントラルの都心部であり、ことりのいるお屋敷は都心部から離れた郊外の住宅街に位置している。

 ここは居住地域の端にある閑散とした立地であるため、多少五月蠅くしても苦情はこない。


 だからことりも魔法の練習を広い庭で思いっきりできるのだ。



「ぴくりとも動かんのう……」


「ぴくりとも動きませんね……」


 そして全く発動しない魔法具と今日も師弟はにらめっこである。


「いや当然の結果だろ」


 庭先で呆然とすることりに向けて、クウがお屋敷の窓からつっこみを入れる。

 ちゃっかり会話に参加するのに、家から全く出る気が無いのはさすがである。


「なんじゃ、クウ坊。タダ飯食らいのくせに」


「そうですよ、クウさん。ネット廃人のくせに」


「師弟揃って人をディスるな」


 怒りの矛先をクウに向けても、結果は変わらない。

 愛犬ラインハルトが、軒先で大きな欠伸をする音だけが三人の間で虚しく響いた。


「そもそもお前には集中力が足りてねーんだよ。さっきから物音がすればあっちにふらふら、蝶が飛んでればこっちにふらふら、周りに流され過ぎだろ」


「そう思うならチャチャを入れないで下さいよ」


「馬鹿野郎。それだと俺が構ってもらえなくて寂しいだろうが」


「うわぁ。この人、めんどくさいなぁ」


 ことりの指摘に、「その通りじゃ」とテンも同意して頷いた。

 しかし鬱陶しがる師弟を無視して、クウは一方的な講釈を続ける。


「魔法には集中力は必須だぞ。うちのギルドが誇る、メイン盾のタタロスさんを見てみろ。

 周囲を忘れるほどの集中力を発揮することで、味方置き去りの前進なんて日常茶飯事。

 それが敵味方問わずヘイトを集める重度のコミュ障と掛け合わさることで、ネットでもリアルでも友達がいない魔法を使えるんだぜ。凄えだろ」


「それただの駄目な人ですよね!?」


 そして言われるままに窓に駆け寄り、ことりはネトゲのプレイ動画を眺めていた。

 流されてばかりで集中が全く出来ていないのは誰の目から見ても明らかである。


 その時、ことりは背後で凄まじいプレシャーを感じた。


「全く……お主はいいかげんにぜんか!」


 間違いなくテンが怒っている。当然だ、今は修行中だったのだ。

 御館様に怒られる。と、ことりは思わず身構えるが――


「そのイベントはギルドの皆と一緒に行く約束じゃろ。抜け駆けは卑怯じゃぞ」


「……紹介するぜ、このジジイがうちのギルマスのドーターラブさんだ」


 メイド姿の少女はおもいっきりズッコケた。


 なんだかんだで毎晩一緒に遊ぶほど仲が良い男達は、ゲームのことで喧嘩を始めた。

 どちらかというと二人は友人よりも親子に見えるなぁと、ことりは思った。


「私の集中力が無いのはきっと師匠譲りだったんですね」


 完全に自分の修行が忘れられている事実に気付き、ははは、と乾いた笑いを漏らした。

 慰めるように擦り寄る大型犬ラインハルトの真っ白でふわふわな毛並みを暇つぶしに整えながら、ことりは男達の醜い言い争いを虚ろな瞳で眺め続けた。





次こそ魔法のルール説明に入ります

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