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47話 我がまま娘

 

 辿り着いた答えを前に相方の目が点になっていたことを、ことりは生涯忘れないだろう。

 やりました! と少女は達成感に満ち溢れ、荒々しい鼻息を吹き出した。


「お前……他に言いようがあるだろ」

「でも事実です!」


 様々な魔法使いと出会った。

 誰よりも愉快痛快でいたい。誰よりも硬く強くありたい。誰よりも自由に生きていたい。少女が憧れた者達は、皆が己の想いに忠実だった。


「御館様は隙あらばえっちなコスプレさせようとするし、ルイさんは昨日もお家壊すし、フィーリアさんは棚のお菓子勝手に食べちゃうし、ドロウさんに至っては皆に嫌がらせしようとしているんですよ。いいお歳なんですから少しは自重して欲しいです!」

「何だかいきなりショボイ感じになったな……」

「でも、きっとその我がままが本物の魔法使いに必要なものなんです!」


 魔法は心を形にする力。信じる気持ちで常識を超え、渇望する心で奇跡を掴め。

 かつて師から与えられた教えの意味を今なら理解できる。


「普通の我がままな人より、もっともっと我がままで、その一方的な心の力で世界の常識すら変えちゃうような自分勝手な人たち……それが本物の魔法使い」


 彼らには目の前に何があろうと関係ない。進むべき道は己の我が儘に忠実であり続ける。

 だから目が離せない。だから憧れてしまう。その生き方と魂の輝きに。


「そして、その中で一番の我がままを言い続けた人がきっと――マジティアージュ」


 己の我がままを突き通し、イヴレコードで願いを叶える者。

 それが自分の目指すべき最高の魔法使いだというのなら――


「だったら私、自信あります!」


 始まりはそう――幼い少女のただの我がまま。


「魔法が好き。魔法で幸せそうにしている人達の笑顔が大好き。

 だからこの先も、魔法で笑った人達に何度も何度も出会いたい――

 魔法使いになって、マジティアージュになって、その望みを叶えたい。

 この夢の始まりも、そして今までも、私はずっと我がままを言い続けてきたんですから」


 少女の答えはスマートな解決策などでは決してない。

 誰にも遠慮せずに我が道を進むという、とても自分勝手な子供の屁理屈だ。


「無茶苦茶言うな。皆が皆、魔法で笑いたいわけじゃないだろ」

「それでも笑ってもらいます。私の都合で!」

「本当に勝手な話だな。押し付けがましいにもほどがある」

「勝手です。押し付けます。それでも、まるっと解決しちゃうのが魔法使いです!」


 霞がかっていた航路が晴れ渡り、少女の進むべき目的地が照らされる。

 迷いはない。恐れもない。だってこれは自身が欲した我がままなのだから。


「私はきっとマジティアージュになってみせます。

 最高の魔法使いになって、イヴレコードで皆を笑顔にするすごい魔法を教えて貰います。 

 そしていつかたくさんの人達に伝えるんです。

 魔法は皆を幸せにする為に生まれてきた……そんなお母さんの言葉を!」


 そうすれば自分の中で母もずっと笑顔でいてくれるから――

 母の笑顔があれば、自分はいつでも幸せな気持ちになれるから――

 だからきっとことりは我がままを言い続けることが出来る。


「その為の力が私には必要です。だからクウさん――私の我がままを叶える為に、私と結婚してください。あなたの中の魔法の力で私の願いを形にして下さい!」


 ことりはクウの胸に婚姻届を突き返した。

 今度は騙されてなどいない。自分の意志で彼の力を求めた。


「あれだけ必死こいて探した答えが、結局はただの自己中の開き直りか――」


 そしてクウは腹の底から嬉しそう笑った。


「確かにその通りだな。こりゃ、お前にしか見つけられねえ答えだ」


 どうしようもない、けれど納得するしかない少女の答えに少年は白旗を降り続けた。


「んで、答えが出たところで、これからどうする気だ? 我がまま娘」

「もちろん行きます!笑っていて欲しい人達がいる所に!!」


 見詰め合う互いの瞳が力をくれる。共に行こうと、自然と手を握る。

 偽者でも、模造でもない。本物の魔法使いの頂へ今、少女と少年は歩み始めた。


「行きましょう。リオマティアへ!」


 そして二人がテレビのルイたちへ視線を戻した直後――クウが呟いた。



「あ、ドロウ見つけた」






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